( 147403 ) 2024/03/09 14:36:28 0 00 オムロン本社(C)日刊ゲンダイ
【経済ニュースの核心】
体温計・血圧計などで知られる京都の名門企業、オムロンが苦境に陥っている。
インキ最大手DICの決算が真っ赤っ赤に…ドイツ企業からの買収は失敗だった?
オムロンは2024年3月期の業績見通しを下方修正し、純利益予想を前年度比98%減の15億円に引き下げた。昨年4月の年度初めには純利益745億円を見込んでいただけにその落差の大きさに驚かされる。しかも下方修正は昨年10月に続き2回目で、オムロンの株価は一時ストップ安に沈んだ。オムロンに何が起こっているのか。
昨年6月に辻永順太氏が社長に就任するのと同時に、創業家の立石文雄会長が名誉顧問に退いた。
「会社設立以来、初めて創業家出身の取締役がいなくなり、求心力に不安が感じられる」(メガバンク幹部)と心配する声も聞かれる。
オムロンは1933年5月、大阪市都島区東野田で立石一真氏が「立石電機製作所」を創業したのが始まりで、1948年5月に「立石電機」となった。「立石一真氏は京都財界の重鎮で、独自のサイニック(経営)理論を提唱するなど、戦後に起こった京セラの稲盛和夫氏や日本電産の永守重信氏が最も尊敬する企業家だった」(メガバンク幹部)とされる。
その立石家からオムロンを託された辻永氏は、1966年生まれで、京都産業大学理学部を1989年に卒業し、オムロンに入社。インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー商品事業本部長やインダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長を経て、2023年4月に社長兼CEOに就任した。
辻永社長は今回の大幅な業績低下について、「価格変動の高いデジタル、環境モビリティー業界に加え、中国市場の投資需要に依存している」ことが主因であると指摘した。
実は、オムロンの収益構造は、いまや工場のラインで使われるロボットやセンサーなどの制御機器事業が全体の8割超を占める。体温計や血圧計などヘルスケア関連の収益は2割にも満たない。かつ、「オムロンの制御機器は、同業のキーエンスなどに比べ大口顧客の依存度が高く、かつ中国の需要に左右されやすい」(市場関係者)という。とくに今年度は中国の景気減速から、大口顧客による設備投資の延期や縮小が相次いだことが響いた。
オムロンが2月26日に発表した構造改革方針では、事業ポートフォリオの再構築を図るとともに、国内外で計2000人規模の人員削減を行い、固定費約300億円を圧縮するとした。
辻永氏は、中核の制御機器畑出身だけに、どこまで身を切る改革ができるか。創業家から託されたバトンは重い。
(小林佳樹/金融ジャーナリスト)
|
![]() |