( 147691 )  2024/03/10 14:03:42  
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日本は株価と為替が30数年ぶりの水準になっているが、金利だけが低い状況が続いている。

日本銀行の植田和男総裁の発言から「金利のある世界」の到来がささやかれており、住宅ローンや株価の動向が注目されている。

2026年の日本経済の査測によると、政策金利や長期金利が上昇し、変動金利型住宅ローンが年4.0%になる見通しとなっている。

専門家はマイナス金利の解除に関する意見などを述べ、経済成長が前提となる状況下で金融資産の運用や消費にバランスを求める必要があると指摘している。

(要約)

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株価も為替もともに30数年ぶりの水準となった日本ですが、金利だけが低い状態が続いています。そのような中、日本銀行の植田和男総裁の発言などから、近年は誰も意識することのなかった「金利のある世界」の到来がささやかれています。実際に訪れた場合、気になるのは住宅ローンの行方や株価の動向です。「金利のある世界」への備え方を専門家2人に聞きました。 

 

【画像】2026年度の日本の姿は…ドル円が35円程度の円高に?日経平均株価の上昇率は年間プラス4.3%?想定を見る 

 

■マイナス金利の解除は「無風でいけそう」「混乱生む可能性も」 

 

日銀の植田総裁は2月22日、日本経済が「インフレの状態にある」と踏み込んだ発言をし、マイナス金利の政策修正に向けた地ならしではないかとの臆測が広がりました。 

 

大和証券でチーフエコノミストを務める末廣徹さんは発言を受けて「マイナス金利の解除はあるのでは」と話します。 

 

一方で、「マイナス金利を解除して株価の上昇をとめたとなると、日銀が批判されるので、あまり『利上げ』や『引き下げ』という空気は出したくないはずです。けれど、マイナス金利は異例の政策で副作用も多いのでやめたい、というようにバランスが難しい。ただ、発言後もマーケットはそこまで動かなかったので、無風でいけそうな感じもします」と説明します。 

 

みずほリサーチ&テクノロジーズで主席エコノミストを務める宮嵜浩さんも「解除しようとすると、マーケットの大きな混乱を生んでしまう可能性もあります。けれど、マーケットを落ち着かせる上手なコミュニケーションを日銀はとっている印象があります」と話します。 

 

■2026年に「普通預金は0.4%、10年定期預金は2.5%」の試算 

 

そのみずほリサーチ&テクノロジーズがシミュレーションした2026年の日本経済の姿があります。 

 

政策金利は23年度のマイナス0.05%から26年度はプラス2.8%に、長期金利は0.7%から3.5%に、ドル円レートは35円程度の円高になると想定しています。 

 

あくまで、持続的・安定的な2%の物価上昇が達成され、景気や株価が力強く拡大・上昇し、労働生産性も上昇し、金融正常化の過程で段階的な利上げが行われたという前提があります。 

 

 

住宅金融支援機構の2023年の調査では利用者の7割以上が「変動金利型」を利用しており、その金利が年4.0%になるという試算には関心が集まりそうです。 

 

この試算に関連して、大和証券の末廣さんは「日銀が利上げしても、その幅で住宅ローンの金利が上がっていくわけではないことは覚えておくべきです」と補足します。 

 

■前提にはあくまで日本の経済成長 賃金の上がった世界線 

 

では、どのような世界線で住宅ローンの変動金利が年4.0%になるのでしょうか。 

 

自身も変動金利で住宅ローンを組んでいるという宮嵜さんは「2026年の試算ですから、徐々に国民の金利に対する目線が上がります。物価も、消費者物価指数の2%上昇が当たり前の状況になってきて、景気も回復しているので、賃金も上がっているという世界です」と強調します。 

 

あくまで経済成長が大前提にあるといいます。 

 

続けて「そういった中での年4.0%は、今よりも抵抗感はなくなってきていると思います」と宮嵜さんは話します。他方、低金利で高くなっていた物件価格は調整される可能性があります。 

 

住宅ローンの変動金利が年4.0%になる一方で、普通預金は年0.4%です。物価上昇率は年2.0%の想定なので、インフレにそもそも負けてしまう計算になります。 

 

前述の末廣さんは「住宅ローンを組んでいるかにもよりますが、年4.0%払いながら、預金の年0.4%が足りないと思ったら、株などのリスク資産を買う人が増えやすいと思います」とします。 

 

■若い時から少しずつ、幅広くコツコツと 消費も自己投資も 

 

もう一つ気になるテーマといえば株価の行く末です。 

 

先ほどのみずほリサーチ&テクノロジーズの想定では、2026年に日経平均株価の上昇率は年間プラス4.3%になるとしています。 

 

宮嵜さんは「株を持っている人ほど、期待収益率は高くなる可能性があるという想定です」とし、さらには、これまで考えることが少なかった「複利効果」のメリットを享受する人も増えてきそうだといいます。複利効果とは、収益を再投資することで、利益が利益を生んでいくことを指します。 

 

この状況下で、宮嵜さんは「若い時から少しずつでもいいので、株も預金も幅広くコツコツと運用していくと、大きく資産を膨らますことができる世界になってくると思います」。 

 

一方の末廣さんは「金利があるからといって貯蓄ばかりするのでなく、ちゃんと消費もしてバランス良くやっていくしかないと思います。『貯蓄から投資へ』は、新NISAも含めて進んだと思いますが、逆に、投資ばかりで消費しなくなると、経済が回らなくなる可能性もあるので、最近は『貯蓄から投資も消費も』と言っています」と危機感を込めて話します。 

 

さらに末廣さんは言葉を続けます。「最近は、ちょっと心配だからと投資する人もいるのではと思いますが、それだと本末転倒です。株価が上がっているから買っているだけだと、不安が残る。消費もしたり、労働所得を増やすために自己投資もしたりすることが必要です。金融資産だけで考えてしまうと、日本経済が明るくならないのではと思います」 

 

記事構成:1級ファイナンシャル・プランニング技能士 影山遼 

 

(TBS NEWS DIGオリジナルコンテンツ「経済の話で困った時に見るやつ」より) 

 

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