( 149077 )  2024/03/14 14:22:00  
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渡瀬裕哉氏は、日本経済の成長には減税が必要であり、増税を続ける岸田政権を阻止すべきだと主張している。

現在の日本は国民負担率が過去最高の48.4%に達し、増税と規制強化による負のスパイラルが経済の復活を阻んでいる。

日本政府は増税や規制強化を続けてきたことで、世界トップ企業が没落し、地方創生などの政策も失敗していると指摘している。

特に能登半島地震の復興においても、復興減税が必要であり、地域活性化や少子化対策には減税政策が有効だと述べている。

(要約)

( 149079 )  2024/03/14 14:22:00  
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GoranQ 

 

3月4日、日経平均株価の終値が初めて4万円の大台を突破した。日本経済をさらに力強く成長させるには、なにが必要なのか。早稲田大学公共政策研究所の渡瀬裕哉さんは「長い不況から抜け出た今こそ、『減税』による経済成長で正常な軌道の国に戻るチャンスだ。岸田政権は新たな『増税』を狙っているが、断固として阻止すべきだ」という――。 

 

【写真】記者会見で、自身が「増税メガネ」と呼ばれていることについて答える岸田文雄首相 

 

■「国民負担率」は48.4%に達している 

 

 日本経済は長いデフレ不況のトンネルを抜けつつある。3月4日、日経平均株価は4万円の初の大台に乗せ、新NISAで国内外の株式投資に参加した人々の懐も暖まっていることだろう。このまま労働者賃金の上昇まで辿り着ければ、日本経済が完全復活する日も遠くないだろう。 

 

 ただし、明るい日本の未来を閉ざす暗雲が広がっていることも事実だ。それは増税と規制強化による負のスパイラルの再来である。 

 

 財務省が令和6年2月9日に公表した国民負担率(令和4年度・実績値)は48.4%であった。これは国民の稼ぎの半分が税金及び社会保障費を負担するために奪われていることを意味する。その上、この数字には数兆円規模の再エネ賦課金などは含まれてすらいない。 

 

 この国民負担率は、昭和45年(高度経済成長期後期)は僅か24.3%でしかなく、昭和54年度に初めて30%を超えた程度であった。まさに過去の日本は若者が働けば働くほど未来を描けた時代と言えよう。その後、日本政府はバラマキと増税という極めて短絡的な政策の組み合わせを強力に推進し、いまや日本政府の活動は五公五民の酷政と称しても過不足ない数字にまで肥大化した。膨れ上がった税負担及び社会保険料負担は主に現役世代の重荷となり、可処分所得が低下した若者の節約志向が強まるとともに、未婚率の上昇に伴う少子化による人口減少にも繋がっている。 

 

■なぜ世界トップだった日本企業は没落してしまったのか 

 

 また、失われた30年の間には世界トップのグローバル企業の顔ぶれもスッカリと変わってしまった。平成元年の世界の時価総額ランキングで上位にあった数多くの日本企業のうち、令和時代にもその威勢を誇る存在はトヨタのみだ。これは政府が闇雲に規制を増加させて、新規のスタートアップを抑制してきたことも影響している。 

 

 総務省行政評価局「許認可等の統一的把握」(平成30年)によると、平成14年に1万621個であった許認可数は、平成29年には1万5475個にまで増加していた。この増加した規制には強度の規制も多数増加しており、日本の起業家による新産業勃興の芽を摘んできたと言えよう(平成31年以降は総務省が規制数を数える取り組みすら停止している、最悪だ)。 

 

 

■「増税」と「規制強化」が経済復活の機会を潰してきた 

 

 岸田首相は令和3年の所信表明演説で「新自由主義」から「新しい資本主義」への転換を謳ったが、岸田首相からして根本的な認識に誤りがあるのは明らかだ。日本には減税や規制廃止による小さな政府を求める新自由主義など存在したことはない。政府と利権者が規制を食い物にする縁故主義が蔓延しているだけだ。その象徴が岸田首相をはじめとする世襲議員の存在だ。彼らは過去からの利権と因習を温存する存在であり、可視化された縁故主義による腐敗そのものなのだから。 

 

 安倍政権以後に実施されてきた日銀による異次元の金融緩和政策は、既に10年継続してきた。日本銀行が規格外の金融政策を継続せざるを得なかった理由は、本来は何度もあった日本経済の立ち直りのチャンスを、時の政権が増税と規制強化で潰してきたからだ。安倍政権は中央省庁と利権勢力(社会保障関連も含む)による増税圧力に屈し、公明党・旧民主党との三党合意に基づいて消費税大増税を2回も実施してしまった。そして、その度に経済回復に水が差されてきた。 

 

■岸田政権の「新たな増税」を許してはいけない 

 

 また、成長戦略の切り札であった国家戦略特区による規制改革はモリカケ問題によって機能不全に陥り、腐敗の温床でしかない官民ファンドに主役の座を取って代わられてしまった(その結果はクールジャパン機構など散々な結果となっている)。そのため、本来は短期間で終了するはずであった日銀の異次元緩和をダラダラと継続することになり、生産性が低い多くのゾンビ企業が延命されて、企業と労働者の生産性(ひいては賃金)を改善する機会を逸してきた。 

 

 岸田政権は小規模かつ単発の所得税減税でお茶を濁そうとしている。そして、防衛増税や子育て増税(子ども・子育て支援金)などの新たな増税を狙っているが、この流れを許してはいけない。さらには、金融資産課税論の議論もくすぶり続けており、新NISAで国民の財産が美味しく育ったところで摘み取られる可能性もある。断固として増税を阻止し続けることが大事だ。 

 

 今、我々が取るべき政策は「減税」である。現状から更に「減税」を矢継ぎ早に実行し、日本の景気復活の足腰を確かなものにする必要がある。そのため、今我々が抱えている様々な社会的課題に「減税」が有用な選択肢となるかを示していく。 

 

 

■復興政策は「何」を間違い続けているのか 

 

 増税VS減税を問う上で非常に象徴的な事例として震災復興を考えてみよう。令和6年年明けに我が国を襲った能登半島地震の復興は今国会でのテーマとなっている。しかし、断言しても良いが、岸田政権の政策ではインフラを直す「復旧」は進んでも、「復興」は実現することはない。 

 

 東日本大震災以後、平成23年度~令和4年度まで、復興予算は約40兆円が投入されてきた。その財源の約4割は復興特別所得税と住民税1000円の上乗せ分とし徴収されてきた。しかし、被災三県(岩手県・宮城県・福島県)が復旧したとしても、依然として「復興」したとは言い難い。むしろ、その後も緩やかな衰退が継続している。これは「増税⇒補助金」という流れでは地域復興はあり得ない証明されたとも言えよう(ちなみに、復興増税は霞が関庁舎改修費や海外芸術家派遣費など、シロアリ官僚によって流用され、納税者の思いを踏みにじる悲惨な使われ方をした例も少なくない)。 

 

■能登半島地震で実行すべき政策は「復興減税」 

 

 逆に、国民が支払った復興所得税を被災三県の減税政策に使用した場合どうなっただろうか。なんと被災三県の道府県民税及び事業税を現在に至るまで全額無税にすることも簡単にできた(令和3年度決算カードによると、同被災三県の道府県民税及び事業税合計額は約3600億円に過ぎない)。これは黒字企業と富裕層にとっては極めて魅力的な地理的条件となる。この減税政策に加えて、同地域に対する新たな設備投資の減価償却を即時100%償却で前倒しする政策を実施すれば、日本中または世界中から投資が集中し、いまや一大経済拠点と化していた可能性がある。 

 

 ちなみに、この即時償却制度は投資誘発に極めて有用であることは証明済だ。美しい山林を破壊し尽し、電気料金に巨額の負担を強いる太陽光発電が日本中に拡がった理由は、固定価格買取制度が魅力的であっただけでなく、即時100%償却の投資案件であったことも重要だった。同政策が復興ではなく再エネ投資利権に使用されたことは痛恨の極みであり、日本の黒歴史である。 

 

 したがって、今回の能登半島地震に関しても、インフラ復旧は別として、実際に実行すべき政策は復興減税である。同地域に集中する航空・防衛クラスター産業や観光関連産業などを中心に即時100%減価償却が認められれば、大規模な設備投資が実行されることは必然であろう。さらに、地方自治体が法人住民減税を実行すれば、企業によって多くの雇用がもたらされて若者も能登半島に戻ってくるだろう。徒に補助金をバラまくのではなく、あくまでも民間主導の復興政策を実施することで、東日本大震災の復興増税の失敗を繰り返す愚を犯すことはなくなる。 

 

 

■「東京一極集中」が進む本当の理由を知りたいか 

 

 東京一極集中や少子化対策も社会的課題として取り上げられて久しい。そして、東京都の合計特殊出生率が低いことの問題はかねてから指摘されている。実際、東京での子育ては非常に条件が厳しい。東京では家賃と比べた住環境などの生活関連費用が高コストであり、税負担・社会保障負担で苦しむ若者の結婚・出産が減少することは必然的なことだ。 

 

 そのため、東京一極集中を是正することは国家的な課題となっている。しかし、地方創生をはじめとした補助金バラマキ政策はほぼ効果が無く、若者が好条件の雇用を求めて東京に出ていく傾向は止まっていない。つまり、政策は失敗している。 

 

 ただでさえ、若者は都市に出る夢を見るものだ。東京都と比べて、地域の住環境が良く、潜在的には子育てに適した土地でも、地元社会のヒエラルキー構造が固定化し、地域のドンが補助金を差配する風通しの悪い地域に残りたくない気持ちも分かる。 

 

■地域活性化や少子化対策には「減税」政策こそが必要 

 

 日本の地域活性化や少子化対策に有効な政策は社会保険料を含めた「減税」である。特に良好な住環境を低価格で提供できる地方自治体が優良企業や現役世代向けの「地方税」を減税する試みは効果的であろう。従業員を雇用することができる黒字企業や現役の労働者世代を自らの自治体に呼び込むのだ。 

 

 子育て補助金のバラマキでは、一時的に子育て世帯を呼び込めるが、稼げる企業を呼び込めるわけではない。ベッドタウン化後にかつてのニュータウンのような場所になるのが関の山だ。それでは少子化も地域の衰退も止まらない。あくまで未婚かつ現役世代の所得状況及び住環境を改善することを中心に据えた「減税」政策こそが必要だ。 

 

 現在、日本の地方自治体は総務省が決めた標準税率に盲目的に従っており、東京都と同じ地方税率を設定している。さらに、地域によっては超過税率を余計に徴収し、東京都よりも高い税率を課している地方自治体すらある。そんな状況では、東京に企業も人間も出ていくのは当たり前だ。この状況を変える地方税減税が地方活性化と少子化対策に有効である。 

 

 まして、岸田政権が実行しようとしている現役世代に対する実質的な増税(子ども・子育て支援金)によるバラマキ強化なども問題解決には論外だ。浜田聡参議院議員が提出した質問主意書に対して、岸田政権は「子ども家庭庁の政策と合計特殊出生率の因果関係は示せない」という趣旨の答弁を閣議決定している。一体何のための政策なのか。 

 

 

 
 

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