( 149269 ) 2024/03/15 00:23:57 0 00 あえて非正規雇用を選ぶ若者が増加しているという(イメージ)
総務省「労働力調査 2023年(令和5年)平均結果」によると、若年層25~34才で「自分の都合のよい時間に働きたいから」を理由に非正規になったのは73万人。10年前の2013年(59万人)から14万人増えた。一方で、「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由の非正規は、2013年の84万人から2023年の39万人に減少。10年間でほぼ半減した。
つまり仕方なく非正規雇用を選ぶのではなく、あえて非正規を選ぶ若い世代が増加しているというデータだ。こうした“若者の正社員離れ”の傾向に、希望しても正社員の座を手に入れられなかった氷河期世代は何を思うのか──。
「売り手市場なのに、なんてもったいないことを……」とため息をつくのは、IT企業勤務の男性・Aさん(45歳)。苦労して30代半ばにようやく正社員になったという氷河期世代の一人だ。
「僕たちの世代は、ベビーブームのピークは過ぎているといえど、まだまだ若者が多いのに、正社員求人が少ないのが特徴でした。そこそこの大学を出ても非正規を選択せざるを得ない人たちが本当に多かった。僕も途中で、『どうせ就活してもムダだ』と投げやりになって、フリーターになりましたが、それで頑張れるのはギリギリ20代までという印象です。
同世代がキャリアを積んでいく一方で、フリーターだと何の保証もないうえに、正社員との収入格差はどんどん広がっていきます。しかも30代になると、周囲から『で、何ができるの?』といった目で見られます。転職するにもいろんな経験を積まないとなかなか難しい」
Aさんは、自身が20代だった頃とは経済状況や価値観が変化していることは理解しているものの、「それでも、とりあえず正社員になっておいた方がいい」と声をあげる。理由は、自身がフリーター生活で体を壊したことがあるためだ。
「たしかに、正社員だと転勤になるかもしれないし、残業を強いられたりすることもある。自分の都合で生活できないことがイヤだと思うかもしれません。でも、それは一旦正社員になってから考えたらいいことです。正社員なら病気やケガをしても休職できますが、非正規はそうはいかない。あっという間に自分の生活がままならなくなります」(Aさん)
金融機関に勤める女性・Bさん(50歳)は、あえて“非正規”を選ぶ若者の存在を肌で感じているという。
「大学生の息子がいるのですが、話を聞いていると『残業したくない』『縛られるのがイヤ』などという理由から、先輩たちにも派遣を選ぶ人がいるそうです。氷河期世代にあたる私は採用の枠さえない時代で、特に女性は本当に仕事がありませんでした」
Bさんはなんとか金融機関の一般職として採用されたが、「どの企業でもいいから、総合職で働きたかったのが本音です」と振り返る。
「一般職というのはつまり事務職で、金融機関では女性が多く採用されていました。他の企業では、一般職という職種そのものを廃止し、代わりにそうした事務仕事は派遣社員に任せるといった方向にシフトしていったと思います。
私は大学受験も頑張って英語系の学科に行っていたので、英語を使ってバリバリ働く自分を想像していたんです。でも、どこも採用枠が全然なくて……」(Bさん)
Bさんは、派遣社員として社会人をスタートした同級生について言及する。
「私は女子大で、同級生では就職では総合職で決まった人もいれば、一般職も派遣もいました。否応なく派遣社員になった人は、その後のリーマンショック時に“派遣切り”に遭いました。そういう状況を目の当たりにしてきたので、選べるなら正社員に越したことはないと思ってしまいます」(Bさん)
メーカー勤務の50代男性・Cさんは、「バブル期にフリーターがもてはやされたが、今とは勝手が違う」という。
「バブル時代あたりで、新しい働き方としてフリーターが脚光を浴びていたことがあったように思います。当時の日本は終身雇用が当たり前で雇用に柔軟性がなく、企業戦士として会社に尽くす前提だったようなイメージ。自分の意思を持っているようにみえるフリーターという働き方は、オシャレな印象さえありました。
でも、一度フリーターになるとなかなか抜け出せません。私生活重視の気持ちはよくわかりますが、正社員として重宝されるのは、若ければ若いに越したことないんです。長い目で見て考えてほしいなと思います。でも裏を返すと、今の若者が非正規という働き方を選ぶのは、“長い目”で人生を考えられないということの裏返しなのかな、という気持ちもある。そういった社会を僕も含めて、上の世代が作ってきてしまったんだなと……」
就職活動が厳しかった氷河期世代。令和の若者たちの非正規選択には、思うところがたくさんあるようだ。(了)
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