( 149464 ) 2024/03/15 14:35:09 0 00 満額回答が続出(C)共同通信社
「賃上げの力強い動きがあり、手応えを感じている」――。岸田首相は13日、参院予算委員会の集中審議で胸を張った。同日は今年の春闘の集中回答日。労働組合の要求に対して経営側の協調姿勢が目立ち、満額回答や要求を上回る回答が相次いだ。
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自動車や電機、鉄鋼などの産業別労組が加盟する金属労協の集計(13日時点)によると、基本給を底上げするベースアップ(ベア)は平均1万4780円。前年の平均8131円を大幅に上回った。
大企業の景気の良い話ばかりが聞こえてくるが、問題は岸田が繰り返している「賃上げと経済成長の好循環」が実現するのかどうかだ。経済評論家の斎藤満氏がこう解説する。
「経済成長に必要な要素は『労働投入量』『資本投入量』『生産性』の3つです。『労働投入量』を増やす、すなわち雇用や労働時間を増やすことで成長につながる。また、企業が設備投資などに資本投下して供給力を高めたり、AIなどの新技術などを導入して生産性を高めたりすることも成長に寄与します。一方、賃上げは一定の果実を再配分する、いわば労使の『分捕り合戦』に過ぎません。『賃上げと成長の好循環』を好意的に解釈すれば、賃上げによって労働者の意欲が高まり、生産性が上がるとも捉えられますが、経済理論に照らせば、賃上げと成長は無関係です」
企業は生産性を上げない限り価格転嫁に。ひいては次なる物価高に…(C)共同通信社
そもそも「好循環が起きる!」との前提すら怪しいのに、賃上げは「好循環」どころか「悪循環」を招きかねないという。
「賃上げは企業にとってコスト増です。生産性の向上もなしに賃上げをすれば、待ち受けるのは収益悪化や価格転嫁。インフレ率を上回る賃上げで実質賃金がプラスに転じると言われますが、企業は生産性を上げない限り、コスト増分は価格転嫁せざるを得ない。次なる物価高につながる恐れがあり、賃上げ分が相殺されかねない。こうした賃金・物価の『悪循環』が起きると、物価高をカバーできる人と、できない人の格差が開いていく。『賃上げで成長できる』は大きな誤解なのです」(斎藤満氏)
欧米の中央銀行は賃金・物価の「悪循環」に陥らないよう、金融引き締めで需要抑制を図ってきた。日銀は今月か来月の金融政策決定会合でマイナス金利の解除に踏み切るとの観測が強まってはいるが、ここまで真逆の政策を打ち出してきた日本では、賃上げを素直に喜べない状況にある。
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