( 149902 )  2024/03/17 00:02:13  
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日本の人口減少が進む中、仙台市の人口動向が取り上げられている。

人口の流出や出生数の減少により、人口が減少する可能性が指摘されている。

仙台市は東京圏への人材供給地であり、人口を維持していくためには若者の地元回帰や環境整備が必要だとされている。

(要約)

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〔PHOTO〕iStock 

 

 人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 

 

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 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか? 人口減少が10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか? についての明らかにした書だ。 

 

 ※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。 

 

 東京圏への人材供給地である仙台市。だが、仙台市に人材を供給する東北各県の人口が激減すれば、100万人はとても維持できない。 

 

 「杜の都」と呼ばれる仙台市は、新聞記者としての振り出しが山形支局だった私にとっては、たびたび足を延ばした想い出の街でもある。 

 

 人口は108万5235人で、いわずと知れた東北地方唯一の「100万都市」だ。山形県(108万1285人)をわずかながら上回っている(2019年4月1日現在)。 

 

 仙台市は1999年5月に100万都市となって以来、緩やかに人口増加を続けてきた。「2017年仙台市の人口動向」(仙台市)によれば、2017年末の登録人口(日本人住民と外国人住民の合計)は106万545人で、前年比2028人ほど増加している。 

 

 人口流入も続いている。総務省の「住民基本台帳人口移動報告(2018年結果)」によれば、転入超過数は1979人である。日本人に限れば2349人の転入超過となった。転入超過数が大きいのは15~19歳の1284人、20~24歳の816人で、進学や就職で仙台に引っ越してくる人が多い。 

 

 だが、「2017年仙台市の人口動向」(仙台市)は、人口増加の流れに転機を迎えたことも記している。出生数は前年比283人減の8729人、死亡数は197人増の8825人となっており、96人の自然減となったのだ。 

 

 仙台市が自然減となったのは、昭和以降、戦後の混乱期を除いて初めて。ただ、社会増が2124人となったため、自然減分が穴埋めされ、トータルでは人口増加状態を維持している。2018年も、出生数が死亡数を506人下回った。ここで注目すべきは、2年連続での自然減となったことだけではなく、減少幅が一挙に5.3倍となった点だ。 

 

 

 仙台市では出生数が2014年から減少を続けている一方、死亡数は2013年から増加が続いており、自然減の流れは一時的なものとは考えにくい。 

 

 自然減と並んで仙台市の人口を減らす要因となっているのが、東京圏への人口流出である。仙台市もまた東京圏への人材供給地なのである。創生本部の人口移動分析概要(2017年)によれば、東京圏への転出超過は3502人で全国1位となっている。 

 

 東京圏への転出超過を年齢別に確認すると、仙台市の場合は15~24歳がトップである。東北新幹線などアクセスが便利なこともあって、進学を機に仙台市を離れる若者は少なくない。 

 

 2017年の転出入の状況については、前出の「2017年仙台市の人口動向」も分析している。扱っているデータが異なるため、創生本部の数値とは若干の差が生じているが、傾向は変わらないので紹介しよう。 

 

 東京圏への人口流出は、東日本大震災の翌年である2012年こそ564人と大きく縮んだが、近年は転出者が1万4000人弱、転入者は1万1000人に届かない状況が続いており、転出超過の幅が拡大傾向にある。こうした傾向が続いたならば、社会増による「穴埋め効果」を打ち消すこととなる。 

 

写真:現代ビジネス 

 

 仙台市の人口規模を維持・拡大させる大きな原動力となってきたのは、他の市区町村からの人口流入ということになるが、どこから仙台市に集まってきているのであろうか?  

 創生本部の人口移動分析概要(2017年)によれば、宮城県内の市町村からは1371人、宮城県を除く東北5県からは合わせて4125人の転入超過となっている。 

 

 東北5県のうち、最も多くの人数を仙台市に送り出しているのは、青森県だ。仙台市から見れば、876人の転入超過である。 

 

 青森県以下は山形県の848人、岩手県845人、福島県834人、秋田県722人の順だ。東北5県が仙台市の人口規模維持・拡大に大きく“貢献”している。 

 

 ただ、この構図が長く続くとは限らない。「日本の地域別将来推計人口」(社人研)によれば、2015年から2045年の30年間で秋田県41.2%減、青森県37.0%減、山形県31.6%減など、東北各県の総人口は激減していくためだ。 

 

 東京圏への流出が拡大する一方で、宮城県内の市町村を含む東北各県の人口がこのまま減少を続け、仙台市へ移り住む人の絶対数も減ってしまったならば、仙台市は早晩、「100万都市」を返上せざるを得なくなるだろう。 

 

 そうでなくても自然減の傾向が強まってきている。しかも、山形新幹線、秋田新幹線、北海道新幹線などにより、東北各県の東京圏への時間的、精神的な距離は大きく縮んだ。これは、東北各地の若者たちの目を直接、東京圏へと向けることになった。 

現時点で、仙台市の転入超過が続いてはいるが、仙台市は「支店経済都市」ともいわれるだけに、一度“仙台パッシング”が始まったならば地域の人口を保つ“ダム機能”を果たせなくなる。 

 

 仙台市の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、2020年ごろから人口が減少局面に入る可能性があると指摘し、中小企業の活性化のほか、市内で学んだ若者が住み続けられる環境作り、子育てしやすい環境作りなどの基本目標を立てている。 

 

 進学時に東京圏に移り住んだ若者たちの故郷回帰の流れを作れるかどうかが、100万人都市をいつまで維持し得るのかを決めることとなりそうだ。 

 

河合 雅司(作家・ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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