( 150123 )  2024/03/17 22:00:15  
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日本には安楽死を認める法律や制度が存在しない。

安楽死の法制化を望む人や反対する人の思いが取材された。

一つの例として、パーキンソン病を患う迎田良子さん(64)が難病や痛みから解放されるために安楽死を選んだ経緯が紹介された。

日本では安楽死は認められていないため、迎田さんはスイスで安楽死を選択した。

一方、安易に死を選択することに危機感を持つ人々もおり、ALS患者の岡部宏生さん(66)は安楽死に強く反対し、生きることの尊さを訴えている。

(要約)

( 150125 )  2024/03/17 22:00:15  
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日本では、「安楽死」を認める法律や制度はありません。 

 

安楽死の法制化を望む人、それに反対する人、それぞれの思いを取材しました。 

 

【写真を見る】「安楽死」を考える スイスで最期を迎えた日本人 生きる道を選んだ難病患者【報道特集】 

 

■安楽死が認められていなかったら?「首を吊って死んだかもしれない」 

 

都内に住む、64歳の迎田良子さん。難病のパーキンソン病患者だ。 

 

迎田良子さん(64) 

「歩くのが好きなので、ちょっと辛くても歩きたいです。見てもわかる通り、膝が曲がって前かがみになっていて、 辛いというか、歩くのがちょっと大変」 

 

日本では認められていない、安楽死の法制化を心から願っている。 

 

迎田良子さん(64) 

「安楽死に関して討論してほしいと思う。日本でもいつか、安楽死が合法化されることを願っています」 

 

パーキンソン病は手足が震え、徐々に体が動かなくなるなどの難病だ。 

 

ただ、それ自体で死に至る病ではない。 

 

迎田良子さん(64) 

Q.安楽死が仮に認められていなかったら? 

「辛くて身体が痛みが続きますから、だんだん動けなくなってくるので、首を吊って死んだかもしれない」 

 

両親と兄の4人家族。両親は不仲で、母親が自宅に連れ込んだ交際相手に、暴力を振るわれるなどしたため、迎田さんは小学生の頃から、早く家を出て自立することを夢見ていたという。 

 

高校を卒業後、海外で日本語の講師などをした。 

 

憧れだったヨーロッパと行き来しながら、一人で夢を切り拓いてきた。 

 

しかし、50代でパーキンソン病を発症したことで、フランス人の男性との婚約が破談に。 

 

その後、両親を看取り、一人で生活することが難しくなってきたと感じ、安楽死を決断した。 

 

迎田良子さん(64) 

「不快さ、体の痛みを代わってくれるわけではないので、進行性の難病なので、私はもう安楽死を選びますね」 

 

日本では、患者の希望などで延命治療をやめることは認められているが、致死薬を使う「安楽死」は認められていない。 

 

このため迎田さんは、海外で安楽死を認めてくれる団体を探し出し、手続きを行った。 

 

迎田良子さん(64) 

Q.安楽死を選びたいと思ってからどのくらいが経ちましたか? 

「もう7年以上経ってますね」 

 

Q.もし日本に安楽死があったらその道を選びましたか 

「そうですね」 

 

 

2週間後、スイスのジュネーブを訪れた迎田さん。 

 

迎田良子さん(64) 

「すごい綺麗。ほら、透き通ってるでしょ。 夏は気持ちいいのよ、足を入れてピチャピチャしてね」 

 

レマン湖は、パーキンソン病を患う前の2006年に、恋人と訪れた特別な場所だという。 

 

迎田良子さん(64) 

「私が人生の中で一番幸せだと思ったところですし、そこで痛みを消して(安楽死して)、私の散骨をできる所なので嬉しいです」 

 

安楽死当日。 

 

婚約していたが破談になったフランス人の元恋人が、当初付き添う予定だったが、直前に断られたという。 

 

迎田良子さん(64) 

「この人には看取ってほしかったなというのはありますけど、やっぱり人の考え方には権利もありますので、この結果が一番自分にとってベストだと、ポジティブに考えています」 

 

レマン湖での散骨を手配し、日本にいる親族や主治医への手紙の発送も終えた。 

 

迎田良子さん(64) 

「私って用意周到なのよ。ああいう家庭に育ったから。人に甘えるというのが下手くそなのかもね」 

 

準備が進む中、あらためて安楽死を思いとどまることができないか尋ねた。 

 

迎田良子さん(64) 

Q.今すぐに死が迫っているわけではないですよね。まだまだ生きられると思うんです 

「生きられるけど、何が嫌なのかというと、痛みなんじゃないですか。痛みと不快感」 

 

安楽死が日本で認められた場合の懸念についても聞くと… 

 

迎田良子さん(64) 

Q.難病を抱えた人は福祉も少ないから「自分は本当は生きたいけど、安楽死した方がいいのかな」と思ってしまう人が出ると思うがどうですか? 

 

「難病だから誰でも(安楽死をして)いいというものではないですよね。病気になったから嫌だ、安楽死だというのではない」 

 

「基本は生きることですから。でもそれがやむを得ないときに安楽死があるってことだから。そこのジャッジをね、しっかりしないと」 

 

■「イエス、OK。ありがとう」 そして、バルブを外した 

 

迎田さんをサポートするのは、安楽死団体「ライフサークル」のプライシック医師。 

 

 

プライシック医師 

「ハロー」 

 

迎田良子さん(64) 

「ハロー」 

 

プライシック医師 

「あなたに花をもってきたかったの。日本のサクラのようなものです」 

 

迎田良子さん(64) 

「サンキュー」 

 

誓約書への署名が終わり、ベッドに横たわる迎田さん。 

 

プライシック医師 

「誰もがスイスではなく、自分が住む場所で安楽死できることが大切。自宅でできたらいいのに」 

 

迎田良子さん(64) 

「グッドアイデア(良い考えだわ)」 

 

プライシック医師 

「私の団体にはたくさんの日本人がいます。スイスが最善の選択ではありません」「大丈夫?」 

 

迎田良子さん(64) 

「大丈夫。ありがとう。ここに来られて本当に幸せです。夢が実現しました」 

 

プライシック医師 

「バルブを外したら何が起きるかわかりますか」 

 

迎田良子さん(64) 

「私は死にます」 

 

プライシック医師 

「それがあなたの最後の願いならば、バルブを開けて良いです」 

 

迎田良子さん(64) 

「イエス、OK。ありがとう」 

 

迎田さんの遺骨は生前望んだ通り、レマン湖に散骨されたという。 

 

■難病患者の訴え「安楽死に強く反対です」 

 

安楽死をめぐっては、安易に死を選択することになりかねないと危機感を感じている人たちがいる。 

 

先週、京都地裁で行われた裁判。2019年、医師の大久保愉一被告(45)が、全身の筋肉が徐々に衰えていくALS患者の林優里さん(当時51)から依頼を受け、薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人などの罪に問われたものだ。 

 

林さんはSNSに「安楽死させてほしい」などと投稿していた。京都地裁は大久保被告に、別の殺人罪と合わせて懲役18年を言い渡した。 

 

裁判ではALS患者の岡部宏生さん(66)ら、多くの障害者が傍聴を続けた。判決後の記者会見では… 

 

「この事件が起き、裁判が始まってから、生きることと死ぬことの選択の問題にされ、同じ病気や障害のある者、仲間同士の分断が広がっています」 

 

「障害があっても生きていける日本社会に一緒にしてほしいと思います」 

 

 

重い障害がある人たちは、安楽死の問題をどう受け止めているのか。岡部さんの自宅を訪ねた。 

 

岡部さんは現在話すことができないため、眼の動きで文字盤を追い、介助士に一文字ずつ読み取ってもらう。 

 

介助士 

「こ、ん、に、ち、は、マル。よ、う、こ、そ、で、す、マル」 

 

18年前の48歳の時にALSを発症した岡部さん。将来を悲観し、何度も自殺することを考えたという。 

 

岡部宏生さん(66) 

「ここのベランダから飛び降りようと具体的に実行しようとしたのですが、柵を乗り越えられるほどの筋力が残っていなかった」 

 

病気の進行とともに、自力での呼吸ができなくなるALS患者。 

 

このため、人工呼吸器をつけて生きるか、つけずに死を迎えるかの選択を迫られるが、7割の患者が呼吸器をつけずに亡くなるという。 

 

当初、岡部さんも呼吸器をつけずに死ぬことを考えていた。 

 

だが、「障害に縁がない人にも生きることについて考える機会を提供したい」との思いから生きる道を選び、障害者の現状を訴えてきた。 

 

日本で安楽死が認められることに危機感を抱いている。 

 

岡部宏生さん(66) 

「私も4割の時間は、死にたいと思うくらい辛いです。そんな時に『死なせてあげよう』と言われたら、間違いなく『なら死なせて』と言ってしまうでしょう」 

 

「安楽死が本当に必要な人以外に、どんどん広がってしまうことが恐ろしいです。だから安楽死に強く反対です」 

 

介助士による24時間体制での介護が必要な岡部さん。介護していた妻がうつ病になった時には、自身を責めることもあったという。 

 

岡部宏生さん(66) 

「こんなに介護が大変ならば、自分の家族の介護負担をなくすために安楽死しよう、という人が必ず出てくると思います」 

 

■「安楽死で死んでいける社会を目指すなら、希望をもてる社会ではありません」 

 

岡部宏生さん(66) 

「今日の講演は中学生高校生相手なので、とても楽しみにしています」 

 

病気が進行すると眼球の動きが悪くなり、文字盤を使った会話もできなくなるという。 

 

 

 
 

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