( 150898 )  2024/03/19 23:58:40  
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日本銀行は、金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決定し、植田総裁が記者会見を行った。

植田総裁は、賃金と物価の好循環を確認し、物価目標達成の見通しが立ったためと説明。

今後は金融政策を緩和的に維持する考えで、短期金利の設定などについても述べた。

(要約)

( 150900 )  2024/03/19 23:58:40  
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金融政策決定会合後、記者会見する日銀の植田総裁(19日午後、日銀本店で)=高橋美帆撮影 

 

 日本銀行は19日に開いた金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を決めた。日銀本店で19日午後3時半から開かれた記者会見の主なやり取りは以下の通り。 

 

【図表】マイナス金利政策の解除で想定される影響 

 

 植田和男総裁「賃金と物価の好循環を確認し、先行き、展望リポートの見通し期間終盤にかけて、目標が見通せるにいたったと判断しました。マイナス金利政策、大規模な金融緩和策は一定の役割を果たしたと考えています。日銀は引き続き、2%物価安定目標の実現という観点から、経済物価情勢に応じて金融政策を運営してまいります。緩和的な金融環境は継続すると考えています」 

 

 ――総裁就任1年目で、大きな政策転換を決めた。実質賃金はマイナスが続いている。なぜこのタイミングで決めたのか。 

 

 植田氏「最近の経済情勢、賃金と物価動向を点検しました。春闘の結果、最近の状況から賃金物価の好循環の強まりが確認された。2%の物価目標の実現が見通せることから、大規模な金融緩和の見直しを決めました」 

 

 ――住宅ローンや貸出金利の上昇、金利のある世界がやってくる。日本経済への影響をどうみているか。 

 

 植田氏「貸出金利、預金金利は今回の政策変更で、市場金利が変動します。政策変更に伴う短期金利の上昇は0・1%程度。これまでと同程度の長期国債の買い入れを行う方針です。今回の措置を受けて、貸出金利が大幅に上昇するとはみていません。先行きも現時点の物価見通しを前提にすれば、緩和的な環境は続きます」 

 

 ――今後、政策を見直す可能性はあるのか。利上げの進め方について。 

 

 植田氏「見通しが下方向にぶれて、追加的な緩和が必要になれば、これまでの手段を通じて幅広く行いたいと思います。今後の政策手段は短期金利になる。短期金利の設定の仕方、おおまかな言い方ですが、短期金利を政策手段としているほかの中央銀行と同じになる。適切な政策金利を狙っていくことになる。その際に現状、物価2%の持続的安定が見通せる状況にいたったと申し上げましたが、予想物価上昇率の観点では、まだ2%には距離があります。そのギャップからすれば、緩和環境を維持することが大事だと言うことに留意しつつ、普通の金融政策を行うことになる」 

 

 

 ――異次元緩和が終了したという見方もある。新たな枠組みに名称をつけるのならばどう考えるか。イールドカーブコントロールが撤廃されて、上限の金利のめどもなくなった。金利が急激に上昇すれば、指し値オペを行う。緩やかに上昇する時は許容するのか。 

 

 植田氏「明後日に始まる金融調節政策枠組みの名前ですが、特に考えていません。短期金利を政策手段とする普通の政策調整になるということです。 

 

 国債の買い入れは当面、これまでと同じ程度の額でしますが、金利水準は市場が決めることだと考えています。金利が急激に上昇する場合に、オペを行うことを担保しておきたいということです」 

 

 ――短期金利はほかの中銀と同じように設定する。緩やかな緩和環境が続く。経済物価情勢によって半年ごとの利上げはあるのか。長期国債の買い入れについて、バランスシートの縮小も検討することになるのか。 

 

 植田氏「経済物価見通し次第であるということになります。現在の見通しを前提にすると、急激な上昇は避けられると考えています。 

 

 バランスシートのサイズについては、現状の金額をしばらく維持する。将来はどうかということですが、申し上げていますように、大規模緩和の終了後は縮小を視野に入れている。どこかの時点で買い入れ額を減らすことは考えていますが、今の時点で申し上げられることはありません」 

 

 ――2%の達成の確度が高まったら次の引き上げに動くのか。大量の国債を保管している。ストック効果による緩和もある。加味したうえで、緩和環境を維持するということか。 

 

 植田氏「2%目標の実現という点では100%という状況ではなく、1月の会合から上昇していて、大規模緩和の解除に必要な数値を超えたということで今回の判断になった。さらに上昇することになれば、見通しが変わったとことになる。別の言い方をすれば、基調的に上昇すれば、水準の引き上げにつながるということになる。 

 

 国債を大量に保有している、ストック効果について。申し上げてきたように、定量的に何%かとはいえませんが、緩和方向の力が働いているということかと思います。認識しつつ、買いオペや残高調整を金融調整手段としては用いず、短期金利の調整をもって行うのが今後の考え方です」 

 

 

 ――今後の政策運営について。経済や物価のトレンドに加えて、金融システムを考慮に入れて認識を示しているのか。現在の情勢、中長期的にはテーラールールが指し示す水準まで引き上げる考えがあるのか。長い目線で適正な政策運営についての考えを。また、春闘の1次集計が判断にどんな影響を与えたか。 

 

 植田氏「金融システムへの配慮がどれくらい背後にあるか。経済全体が長い間、ゼロ金利、その周辺の超低金利につかっていた状況ですので、急激に金利があがる事態になると、予期せぬ混乱が起きる、または起きないということも意識しています。具体的にどういうことかを考えているわけではありません。仮に利上げにいたるにしてもゆっくりと進めていくのは適切かと思っています。 

 

 短期金利への考え。今後、テーラールールをどう考えるか。常にルールは金融政策を決める者の頭にある。いれるべき変数の水準、パラメーターの値によって出てくる金利水準は様々、幅がある。考え方の整理として貴重なものだとは認識していますが、追求しつつ政策を決めていくことにはならないと思います。 

 

 今回の春闘の1回目の回答が与えた影響ですが、やはり、予告してまいりましたように、賃金の妥結状況は重要な判断の一つなので、大きな判断の材料にさせていただきました」 

 

 ――今後展望リポートの見通しが上ぶれれば、利上げを考えるのか。物価目標の達成まで緩和を続けるのか。何をもって緩和的な金融環境だといえるのか。 

 

 植田氏「物価見通しが上ぶれるのか、中心見通しがそれほど動かなくても、上ぶれリスクが高まるのか、そういうことは、政策変更の理由になると思います。 

 

 理屈上は物価上昇率がいまは達していない、下回っている間は緩和環境が続くということ。上昇していけば、緩和の程度は縮小していくということだと思います。金融環境が緩和的だというのは、テーラールールと似た話になりますが、現実の金利が中立金利よりも低い状態が緩和的な金融環境だということになると思います」 

 

 

 ――イールドカーブコントロールの廃止で、金利を市場に任せることになる。上限をなくして任せる、急激なものには対応するという。また、経済物価を反映した緩やかな上昇は容認するという。上限のめどがないと、市場局の裁量がどの程度でオペを行うのか判断できない。内部では何かがあるのか。 

 

 植田氏「難しい問題。基本的な考え方としては金融市場の実勢を見た上で、急激に上昇しすぎていると思えば、機動的なオペを行う。金利の実勢を見る際に、上限ここまでを超えたら何かをする、金融市場局に伝えるようなことはしません。機動的なオペをした時は市場局と情報交換をしていきたいと思っています」 

 

 ――住宅ローン金利につながるのが短期金利。短期金利が0・75%というのは緩和的、1%でも緩和的なのか。 

 

 植田氏「特定の金利水準が緩和的かどうかと言うのは、その時、中立金利がどれくらいかによって変わります。何かと言えば、名目で言えば、予想物価上昇率と実質の中立金利の足し算になる。実質の中立金利は何%か、これは中銀の総裁が2時間、3時間話してもなかなか答えが出ないくらい、特定しにくいものです。 

 

 予想物価上昇率については、10年くらいだと、1~1・5%の間のどこかにあるということかと思いますが、長期的に2%を実現されるところでは、2%になっていないといけない、動いていく余地がある。 

 

 名目の中立金利の水準は動いていくだろうし、現状、特定もしにくい。情けないお答えで申し訳ないですが、さらに申し上げれば、コールレートは0・1ないし1になる。予想物価は1を超えている。引き算をすれば、実質の中立金利は大きなマイナスになる。大きなマイナスでない限り、中立を下回っている。そういう意味では緩和的だといえると思います」 

 

 ――中小企業についてどんなヒアリングをしたのか。 

 

 植田氏「本店、支店にお願いをして、短観よりも小さな先にヒアリングを実施して、幅広い先から、半分以上から賃上げの計画があるという回答を得ました。小規模なところは賃金を上げにくいことも承知していますが、大企業がどうするかを見つつ、決めていく傾向にある。その点も加味して、中小の賃金動向を予想したということはあります」 

 

 

 
 

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