( 151150 ) 2024/03/20 22:17:53 0 00 TBS NEWS DIG Powered by JNN
映画館に訪れた車いすの女性が「次回の入場を拒否された」と主張するSNSへの投稿が議論を呼んでいます。障害者が健常者と変わらない生活を送るために私たちが取り組むべきこととは。4月から義務化される障害者への対応“合理的配慮”について考えます。
【写真を見る】「今後はこの劇場以外で…」車いす女性に映画館謝罪 4月から義務化される障害者への合理的配慮とは?要は“建設的対話”【news23】
■車いすの女性「次回の入場拒否された」と投稿 映画館謝罪もSNSで賛否
「久々に悔しい気持ちになった」
車いすの女性が普段から利用する都内の映画館での出来事でした。
喜入友浩キャスター 「車いすの女性は、あちらの施設の中にある映画館を利用しました。その際に女性は車いす専用スペースからではなく、4段の段差があるリクライニングシートで映画を観たといいます」
女性は車いす専用スペースではなく、追加料金を支払い、リクライニングシートで映画を鑑賞。
女性によると、映画を見終わったあとに支配人とみられるスタッフが女性のもとにやってきて、こう伝えたといいます。
支配人とみられるスタッフ 「この劇場はご覧の通り段差があって危なくて、お手伝いできるスタッフもそこまで時間があるわけではないので、今後はこの劇場以外で見てもらえるとお互い、いい気分でいられると思うのですが、いいでしょうか」
女性がこの出来事をSNSに投稿すると、瞬く間に拡散。
翌日、映画館を運営する「イオンエンターテイメント」が謝罪文を発表しました。
イオンエンターテイメントのHP 「お客さまの映画ご鑑賞後に弊社従業員がご移動のお手伝いをさせていただく際、お客さまに対し、不適切な発言をしたことが判明いたしました。弊社の従業員への指導不足によるものと猛省しております」
ネット上では様々な意見が飛び交う事態に。
「誰だって好きな席選びたいじゃん」 「業務外の介助を要求するのが当然のことなんですか?」
映画館の近くで話を聞くと…
20代女性 「手伝うにしても、どう手伝えばいいのかわからないし、手伝えないことは手伝えないでいいんじゃないかな」
20代男性 「そういった対応されると、車いすで生活されている人たちの生活がすごく不便になるんじゃないかと」
■「大事なのは対話をすること」
車いすを使い生活を送る、東京大学・並木重宏准教授は今回の騒動について、お互いのコミュニケーション不足が原因だったのではないかと指摘した上で…
東京大学 並木重宏准教授 「合理的配慮、個別の対応が必要」
「合理的配慮」とは、障害者などの申し出に対し、無理のない範囲で対応し、一緒に解決すること。
これまでの法律では、民間の事業者は「努力義務」とされてきましたが、来月から義務付けられます。
障害者でも研究ができる「バリアフリー実験室」の開発を行っている並木准教授。
東京大学 並木重宏准教授 「これは我々のアイディアなんですが、中華テーブル式の実験テーブル。共用品をみんなで使うときに役立つかなと思う」
環境面の整備だけではなく、「合理的配慮」が進んで欲しいと義務化に期待しています。
東京大学 並木重宏准教授 「大事なのは対話をすること。相手の事情を聞いて、自分にどんなことができるか考えて、アイディアがあれば、意見を聞くことも大事だと思う」
■4月から障害者への「合理的配慮」が義務化に 全事業者が対象
喜入友浩キャスター: 今回の映画館の件について時間をかけて街で取材をしましたが、大多数は「こういったことはあってはならない」という声でしたが、中には、「事業者側も無理なら無理と言っていい」といった声もありました。佐藤さんはどう感じられましたか?
「DPI」日本会議 佐藤聡事務局長: 私も以前、中華料理店に入ろうと思ったら、「危ない」という理由で拒否されたことがあります。
これは障害者差別解消法では、“不当な差別的扱い”で、やってはいけないことになるんですが、ちゃんと私の話を聞いて、「こうやったら入れる」っていうことをお互いに話し合いたかったなというのはすごい思います。
喜入キャスター: 法律の話がありましたが、ちょうど法律が変わるタイミングで、4月から民間事業者は更なる対応が求められます。
こうしたケースで考えます。例えば、来店したお客様が障害者の方で、「欲しい商品がありますが、目が見えないので売り場がわかりません」と対応を求めたとします。そして、店員が「お求めの商品の売り場まで案内しますね」と話し合って対応策を検討する。
こうした負担の重すぎない、無理のない範囲で対応することを「合理的配慮」といって、4月から義務化されます。
小川キャスター: こうしたことをこれまでもやってきているという方もいらっしゃるかとは思うんですが、義務化されるということについては?
佐藤さん: とっても喜んでいます。これまでも、ちゃんと手伝ってくれて入れてくれるお店はたくさんあったんですが、そうではなくて、私を見た段階で、「車椅子は駄目です」と言って、全く話も聞かずに入れてくれないということはやっぱりありました。
喜入キャスター: 4月から義務化される「合理的配慮」がきっかけになるといいですよね。
■“負担が重すぎない範囲”とは?
改めて映画館のケースを考えます。
車いすのユーザーは、リクライニングになるプレミアムシートで鑑賞したといいます。ただ鑑賞後、映画館から「この劇場はご覧の通り段差があって危なくて、お手伝いできるスタッフもそこまで時間があるわけではない」と言われ、別の劇場を勧められたそうです。
4月から義務化される「合理的配慮」というのは、“負担が重すぎない範囲”です。
どこまで対応すればいいのか、かなり難しいと思うんですが、真山さんはどう感じましたか?
小説家 真山仁さん: 難しいんですよね。実際に映画館に行くと、ほとんどアルバイトの人しかいないので、アルバイトにどこまで教育をするのかというところがありますよね。
根本的な話をすると、やっぱりコミュニケーションが足りないということがハラスメントになったり、問題になること自体が「日本の社会はどうなっているんだ」っていう嘆きはあります。
だから法律でやらなきゃいけないっていうのはわかるんですが、なのにも関わらず、このよくわからない抽象的な表現ですよね。“負担が重すぎない範囲”で「合理的配慮」って、言われても説明できないですよね。
別に映画館を弁護するわけじゃないですが、「もしお怪我をされたときどうしましょうか」と。「うちはマンパワー的に人がいないので怪我されたら困るんです」と言えばいいんですよ。
なので、今回の映画館の件での言い方はちょっとさすがにありえないと思います。
■映画館はどう対応すべきだった?
小川キャスター: 映画館スタッフの言葉を見ると、説明をしているのかなというふうにもとれるんですが、佐藤さんはこの説明をどのように感じますか?
佐藤さん: 今回のことはいくつかポイントがあると思うんですが、まず、前提としてぜひ知っていただきたいのは、障害者もできるだけ見やすいところ、いろんなところを選んで見たいっていう気持ちは同じようにあるんです。
小川キャスター: 車椅子の方が見られる席って結構端っこだったり後ろだったりしますよね。
佐藤さん: 定員100人ぐらいの小さいホールだと、一番前の端っこにしか車いすの席がなくて、ものすごいガラガラのときでも、ものすごい見にくいというのがあるので、まずその環境ですね。設備的に車いす席ってすごく限定されていて、見にくいという問題が根本的にあります。
それとともに、今回の場合は話し合いができなかったんじゃないかなと思いますね。
ですから、本人に話を聞いて、事業者の方が「ここまではできるけど、これはちょっと今の事情でできない」ということを言って、話し合っていれば、「そこは無理でも、こっちだったらいけるかな」という次の方策が見つけられたと思うんです。
だけど、そういうことがなくて、一方的に「次からは違うところに行ってください」と言われたら、それは「差別を受けたな」というふうに受け取ると思います。
喜入キャスター: 聞いてみないとわからない、話してみないと伝わらないことってあると思うんですが、そのきっかけを放棄しないというのが大事なところだと感じています。
今回の映画館のケースについて、障害者の権利に詳しい関哉直人弁護士は、「合理的配慮の要は“建設的対話”。お互いが理解しながら対話していたかが問題」と話しています。
さらに「原因の一つに、『現場の理解不足』。個人の責任にしないためにも、研修やマニュアル作成など、組織的な対応が必要」とも話しています。
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