( 151354 )  2024/03/21 13:54:58  
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2024年の日本では、電気自動車(EV)が普及していない状況であり、トヨタの豊田章男会長はEVのシェアは30%でピークを迎え、残りは水素エンジン車と内燃機関車が占めるだろうと述べている。

一方、英国は2035年にガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止を控え、EVのシェアは14.7%を占めている。

水素車とEVの競争について、水素はバッテリーを追い越す可能性は低いとされている。

日本では水素カーの需要もあるが、英国では水素ステーションが少ないため水素カーの普及が進んでいない。

また、水素の製造には多くの電力が必要であり、バッテリーと比べるとデメリットもあるとされる。

水素車が将来的に普及する可能性はあるが、現在の状況において差があり、選択肢は各国で異なっている。

(要約)

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水素ステーション(画像:写真AC) 

 

 2024年の日本では、電気自動車(EV)が普及しているとはいい難い。2024年1月の新車販売において、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)を合計しても約2.8%だった。 

 

【画像】えっ…! これが60年前の「海老名サービスエリア」です(計15枚) 

 

 そんな日本の自動車メーカー最大手・トヨタの豊田章男会長は、 

 

「EVのシェアは30%でピークを迎え、残りは水素エンジン車と内燃機関車が占めるだろう」 

 

と2024年1月に発言している。 

 

 トヨタには「MIRAI(ミライ)」という水素カーがある。水素を持続可能なエネルギーとして重要視する。なお、MIRAIは現在、消費税込みのメーカー希望小売価格が726万1000~861万円となっている。 

 

 国際エネルギー機関(IEA)は、バスや貨物車といった大型車を中心に、2050年までに道路交通エネルギーの16%を水素が占めるようになると見込む。 

 

 一方、2035年にガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止を控える英国では、2024年1月の新車販売のうち、EVが14.7%を占めた。 

 

“EV先進国”である同国のリベラル系高級紙「ガーディアン」は2024年2月13日、 

 

「ゼロエミッション車の競争において、水素はバッテリーを追い越すのか」 

 

といった記事を掲載した。そこでは、 

 

「水素がバッテリーを追い越すことはない」 

 

と結論づけられている。いったい何を根拠にしているのか。 

 

英国の2024年1月の新車市場全体(画像:自動車製造業者および貿易業者協会) 

 

 現状見えているEVの弱点をおさらいしたい。 

 

 まずは航続距離がほかにくらべて400kmほどと短いことが挙げられる。短距離の移動ならいいが、長距離の移動には不向きである。充電時間が長く、フル充電ではひと晩かかる。急速充電をするとバッテリーが劣化しやすくなる。 

 

 バッテリーが高価である。傷つくと爆発しかねない問題がある。軽微な損傷があるだけで、修理や評価が不可能となる。 

 

 その一方で、水素の場合は航続時間がかなり長い。ミライの場合、環境にもよるが 

 

・Gグレード:約850km 

・Zグレード:約750km 

 

とある。 

 

水素の場合、家での充電はできず、専用の水素スタンドでの補充が必要になるが、車への充電時間は3分程度で、ガソリン並みの速さである。 

 

 水素というエネルギー自体にも魅力がある。元素のなかで最も軽量な水素は、タンクに入れて保管もできるし運ぶこともできる。遠方から電気を運ぶことは難しいが、電気を水素にいったん変換すれば可能になるのだ。 

 

 車のなかで、水素は酸素と結合し、電気を発生させ、車を走らせる。このとき水も一緒に作られるが、CO2を排出しないので、究極のエコだと考えられている。 

 

 

テスラCEOのイーロン・マスク(画像:AFP=時事) 

 

 水素はさまざまなもののなかに存在している。無尽蔵な資源というのが大きな強みである。 

 

 しかし、本来の目的を考えてCO2を排出しないように水素をつくるとなると、太陽光や風力などによる完全にクリーンな電気を使って水を水素と酸素に分解することになる。 

 

 テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、 

 

「電力で車が動くのに、いちいちグリーン電力を水素づくりに使うのか」 

 

と発言する。 

 

 エネルギー変換すると、変換後のエネルギーは減少するものだが、グリーン水素づくりには、バッテリーに直接充電の約3倍の電力が必要になる。余計な熱が発生するからだ。ケンブリッジ大学の機械工学博士であるデヴィッド・セボン教授はその変換率は今後も大きく変わらないだろうとしている。 

 

 水素ガスの可燃性、圧縮して貯蔵する必要があり漏れやすい、漏れると軽いので拡散しやすい。電解装置がなければ、化石燃料より同じエネルギー量でより体積が食うので、輸送コストがかかる可能性がある。 

 

 このように、デメリットをガーディアン紙はまず否定している。 

 

2024年2月13日に配信された、英リベラル系高級紙「ガーディアン」の記事。タイトルは「ゼロエミッション車の競争において、水素はバッテリーを追い越すのか」(画像:ガーディアン) 

 

 もうひとつ、水素カーに対して同紙が否定的なのは、英国における現状からである。 

 

 ほとんどのメーカーが水素よりバッテリーを選んでつくりはじめているので、20年間で販売された水素自動車は300台に満たないが、EVの販売台数は100万台に達している(英国自動車製造販売協会)。 

 

 水素ステーションがないので、水素カーが選ばれない。水素カーが選ばれないから、水素ステーションがつくられない。英国では、公共充電ステーションは3万1000か所(家庭用充電器を除く)に対し、水素ステーションはわずか 

 

「9か所」 

 

である。 

 

 ガーディアン紙の否定には、このように英国の現状をベースとした発言がある。これは、EVが普及していない日本などでは見方が変わってくる。まだ公共のEVステーションの数がそれほど多いともいえず、差が大きく開いていないので、水素カーが今後選ばれていく可能性もある。 

 

 一般的な勤め人など、ふだんの走行距離は英国と日本でそれほど大きく変わるものではないだろうが、英国の国土面積は 

 

「日本の約3分の2」 

 

である。そんなところからも、日本人には水素カーがより選ばれていく可能性も否定できない。 

 

鳴海汐(日英比較ライター) 

 

 

 
 

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