( 152058 ) 2024/03/23 13:17:10 0 00 いま一度、味噌選びについて考えてみませんか?(写真:yukiotoko/PIXTA)
70万部の大ベストセラー『食品の裏側』の著者、安部司氏が開発した8万部突破のレシピ集『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』に続き、『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん2 ベスト107レシピ』が発売され、発売7日で増刷するなど反響を呼んでいる。
【写真で見る】「無添加の神様」安部氏が考案した「魔法の調味料」なら、自宅で簡単に作れる「絶品安部ごはん」
『食品の裏側』発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、安部氏が自ら15年かけて開発した膨大なレシピノートの中から、「簡単に時短に作れるレシピ」を厳選したレシピ集だ。
いまなお食品添加物の現状や食生活の危機をメディア等で訴え続けている安部氏が「平気で『安い味噌』を買う人が知らない残念な真実」について語る。
*味噌シリーズの1回目:味噌の「米・豆・赤・白」の違い、正確に言えますか?
■「伝統的な味噌」と「速醸味噌」の違い
前回記事「味噌の『米・豆・赤・白』の違い、正確に言えますか?」の冒頭で「味噌汁が家庭の食卓から消えつつある」と述べました。
「子どもが味噌汁を飲まない」という家庭も多いのですが、「家庭で使う味噌」をいいものに見直すだけで、大きな違いがあるはずです。
私は講演や食育セミナーで全国を回りますが、「どんな味噌を使っていますか?」と聞くと、多くの人が「特売の安価な味噌」と答えます。
「だし入り味噌」「減塩味噌」を使っているという家庭も多くあります。
「安かったから」「便利だから」で選んでいたとしたら、いま一度、味噌選びについて考えてみませんか?
味噌は煮たり蒸したりした大豆をつぶして、麹と塩を加え、熟成させて作ります。
この発酵・熟成には1年以上かかります。なかには2~3年かけて作られるものもあります。
日本には四季があります。冬は気温が低く、夏は気温が高い。
この自然の温度の中でじっくり時間をかけて発酵・熟成することで味噌本来の風味や複雑なうま味が生まれるのです。
しかし、これをもっと早く作る方法があるのです。
それが「速醸」という方法です。
■醤油や酒と同じことが、味噌でも行われている
これは材料を仕込んだのちに、酵素を加えて加温することで発酵を促進し、短期間で仕上げる方法です。
「速醸」は大量生産でき、はるかにコストが安く作れます。
「速醸」については、以前の記事「平気で『安い醤油』買う人の超残念な盲点【前編】【後編】」「日本酒『“添加物”で伝統的造り方が減少』は問題か」でも述べていますが、醤油や酒だけでなく、味噌でもこの製法が行われているのです。
当然ですが、「長い時間をかけて発酵・熟成した味噌」と「速醸で作られた味噌」では、風味も味わいも、まるで違います。
食べ比べればその差は歴然で、「速醸味噌」にはコクと味の伸びがありません。
味噌といえば「味噌汁」ですが、それよりも、「もっと味噌の違いが一番わかりやすいもの」があるのです。
■「味噌の差」が劇的に出る「あるもの」とは…?
それは前回記事でも紹介した「甘みそ」です。「安部ごはん」の「魔法の調味料」のひとつでもある「甘みそ」は、味噌を楽しむ調味料です。
「田楽」「酢味噌」「回鍋肉」のように、「甘みそ」を使った料理は「速醸味噌」だとまったくおいしくないのです。
ぜひみなさんもご自宅で実験してみてください。
子どもたちに「昔ながらの長期熟成の味噌」を使って作った「甘みそ」を一度食べさせると、「だし入り味噌」や「速醸味噌」はおいしくないと言い出します。
子どもほど、「味の違い」がわかるのです。
では、「昔ながらの長期熟成味噌」と「速醸味噌」はどう見分ければいいのでしょうか?
【味噌を見分けるポイント①】「ラベル」を見る まずは「ラベル」を見れば、わかります。
味噌の原料は「米、大豆、食塩」「麦、大豆、食塩」です。
これに「甘味料」や「着色料(ビタミンB2)」「漂白剤(亜硫酸ナトリウム)」「保存料(ソルビン酸)」などの添加物が入っているものは「速醸」と考えて間違いありません。
【味噌を見分けるポイント②】「値段」を見る また「速醸で作られた味噌」と「長期熟成味噌」は「値段」が全然違います。
特売品や激安の味噌は「速醸で作られたもの」がほとんどです。
【味噌を見分けるポイント③】「テイスティング」する もう1つ、味噌の違いは「テイスティング」をすれば一発で見抜くことができます。
「平気で『安い醤油』買う人の超残念な盲点【後編】」で醤油のテイスティングを紹介していますが、それの味噌バージョンです。
■「味噌のテイスティング」のやり方は?
方法は簡単で、減塩味噌と昔ながらの長期熟成味噌を用意して、大さじ1杯(およそ15~18g)の味噌を200ミリリットルのお湯で溶いて飲み比べるだけです。ゆっくり舌で転がしながら風味や後味を味わってみてください。
お湯を昆布やかつおだしに変えると、もっとわかりやすいと思います。
醤油同様、普通に味噌をなめただけでは、「どれも同じようなもの」といっていた人も、ぬるま湯に溶かしてみると、「全然違う!」と驚きます。
「子どもが味噌汁を飲まない」とお困りの方は、ぜひ一度味噌を見直してみることをおすすめします。
「そうはいっても値段の安いものを買いたい」「長期熟成味噌は高い」とおっしゃる気持ちもわかります。
■「安いもの」には必ず「裏側」がある
しかし、「安いもの」には必ず「裏側」があります。
「子どもが味噌汁を飲まない」と嘆く家庭をよく見てみると、味も風味も乏しい「速醸で作られた味噌」を、「値段だけ」を見て「安いから」と買っているケースも少なくありません。
ささいなことのように思える「日々の基本調味料選び」が、結果として「味噌汁嫌い」「和食嫌い」の子どもを生み出す一因にもなることも十分あるのです。
そして、「加工食品」に頼れば頼るほど、「結果的に高くつく」というのもよくあることです。
フリーズドライやインスタントの味噌汁を買うよりも、長期熟成味噌を使って手作りしたほうが、結果として、はるかに安価のはず。
毎日使う調味料にこそ、お金をかけるべきではないでしょうか。
『安部ごはん2』では「甘みそ」を使ったレシピを多数紹介しています。
たとえば、北海道の定番料理「ちゃんちゃん焼き」も、「甘みそ」さえ用意しておけば、簡単に自宅で作れます。甘辛いみそ味だから、野菜もたっぷり食べられます。
ぜひ「いい味噌」を使って、体に優しく、おいしい食事を作っていただきたいと思います。
次回は健康ブームに乗って人気を博している「だし入り味噌」について述べましょう。
*味噌シリーズの1回目:味噌の「米・豆・赤・白」の違い、正確に言えますか?
安部 司 :『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事
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