( 152236 )  2024/03/23 23:11:59  
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望月衣塑子記者は、ジャニーズ事務所による性加害問題を巡る記者会見で、問題を批判するために「陰部」「ソーセージ」という言葉を使い、本音を引き出そうとした。

しかし、最近ではマスメディアがジャニー喜多川氏の性加害を無かったことにしようとしているとして批判しており、被害者への補償が進んでいない状況に危機感を示している。

ジャニーズ所属タレントがテレビやCMで再び起用される動きがあるが、望月氏はこの傾向に警鐘を鳴らしている。

(要約)

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 生中継で、「陰部」「ソーセージ」というワードが飛び出す……。 故ジャニー喜多川氏による性加害問題を巡るジャニーズ事務所(当時)が開いた記者会見で、東京新聞の望月衣塑子記者は覚悟を示すために、あえて使った言葉だ。「どこかジャニーズを擁護しようとしている芸能記者や一部のスポーツ記者たちを観て、私は『本気でいくしかない』とその時心に決めました。女性である自分だからこそ、批判されても具体的な言葉をあえて使うことで本音を引きだそうと思い、発言しました」。そう振り返る。 

 

 その後性加害問題は芸能界に大再編を巻き起こした。テレビ局、出版社はこぞって旧ジャニーズ事務所所属タレントの起用を控えていたが、最近になって流れが変わってきた。望月氏は「被害者への補償が全然進んでいないにも関わらず、多くのマスメディアはジャニー喜多川氏の性加害をなかったことにしようとしていないか」と警鐘を鳴らす。また「国がこの問題に介入するべきだ」とも主張している。「みんかぶプレミアム特集「日本・世界経済こう変わる」第3回ーー。 

 

――望月さんはジャニーズ問題に関して事務所やタレントを起用してきたメディアに厳しく報じてきました。例えば、記者会見にて、あえて「ソーセージ」という言葉を使って、この問題に対する圧倒的覚悟を見せてきました。それによって、問題はいい方向にむかっていると思いますか。 

 

 全然良い方向に向かっていません。PR業界関係者の話では、4月の改変移行、スタートエンターテイメント(旧ジャニーズ事務所の「スマイルアップ」からマネジメント業務を引き継いだ会社)所属のタレントのテレビやCMでの起用が戻ってくるといいます。関係者は「過去に何事もなかったのようになるような気配。それはそれで恐い」と言います。 

 

 木村拓哉氏の主演ドラマBelieve-君にかける橋-』(テレビ朝日系)も4月から放送されることが決まりました。このドラマはテレビ朝日の開局65周年を記念してつくれるもので、早河洋会長は元より、局としてかなり力を入れています。 

 

 

 日本テレビの福田博之専務は記者会見で、スマイルアップが人権デュー・デリジェンスの観点から、それなりに被害者に対する対応に進展がみられる、という旨の発言をしています。また、日テレは、4月の番組改編以降は、新規の起用を検討できるとしました。テレビ朝日は、今後の起用について「当初からタレントに問題があるとは認識していない」とし、「これまで通り企画内容を踏まえ、その都度総合的に判断してキャスティングしている」としています。 

 

 今、NHKとテレビ東京に関しては、4月の改編からも新規の契約は見合わせています。NHKは4月の改編でこれまであった旧ジャニーズの8番組を終了させると発表しました。TBSに関しては旧ジャニーズ問題を巡る特別調査委員会の「外部委員会からの提言」をHPに公表し、提言の中には「人権デュー・デリジェンス」に着手、8月に結果の公表を目指すという記載もありました。 

 

 しかし、編成やドラマ、バラエティ部門の関係者は、「高い視聴率につながる旧ジャニーズのタレントを使い続けたい」という本音が漏れて聞こえてきます。なのでTBSも4月以降は旧ジャニーズタレントの復活の場が増えてくるのではとみています。また朝日新聞出版社の週刊誌AERAは昨年12月18日号にTravis Japanを表紙を使ったのに続き、2月にはSnow Manを表紙に起用しました。昨年、あれほどジャニー喜多川氏による性加害問題でメディアに向けられた批判を、メディアはすでに忘れてしまっている、記憶の彼方に消し去ろうとしているようにも見えます 

 

 しかし、スタートの福田淳CEOは「スマイルからは資本関係もはじめ、完全に独立した会社になる。それが産業界などの要望」とはっきり言っていたが、つい最近、4月と5月に東京ドームや大阪の京セラドームで、スタートの開催イベントを予定しており、その告知が突如、スタートCOOの井ノ原快彦氏からスマイルのファンクラブに送られました。「経営も資本関係も完全にスマイルとは独立している」とした福田氏の説明とは食い違うようなことが起きています。 

 

 SUPER EIGHTやNEWS、KAT-TUN、Hey! Say! JUMP など12組ものスタート所属のアーティストが出ることになるようですが、彼らはいつスタートに移籍するのか、したのかさえ発表されていません。スマイルとの資本関係もなく、なぜ、突如スタートの初ライブをスマイルのファンクラブでやるのか。コンサートも元ジャニーズの滝沢秀明社長率いるTOBEが土日を挟んで週末に行うのと違い、スタートは東京では平日の1日のみ、かつてはファンクラブの友達も連れて行くことができたのに、今回はなぜかスマイルのファンクラブのみに限定されており、料金もこれまでの1.5倍強の1万5千円。若い女性たちは、お小遣いやバイトをしてコンサート代を捻出している女性が多い中で、ファンからの批判と苦情の声が高まっています。 

 

 

 特定の記者を排除するNGリストが作成されていた昨年10月の記者会見以降は、スマイルは記者会見を開かなくなりました。何週間かごとに、補償の申請者数や補償に合意した人の数だけが、A4版の紙ペラ1枚にも満たない分量で発表されるだけです。補償の進んでいない元ジュニアたちに関する質問をぶつけても「個別の交渉内容はお答えできない」の一点張りです。 

 

 かつてのような閉鎖的な組織に戻りつつあるように感じます。日テレが「進んでいる」という被害者への補償については、2月29日時点で962人の申告者数のうち、補償の支払いが終わったのは249人のみです。 

 

 被害者の話では、補償の基準が800万円でそこから個別の状況に応じて数百万円程度まで上乗せされるということでした。しかし、その全容や個別の補償がどうなっており、その基準は何かということについて、スマイル側は「被害者が公表を望んでいない」などとして一切明らかにしていません。これだけのことが起きても、1000人近い人々が補償を申請していても、全容を明らかにするつもりはスマイルはさらさらないのです。全てがなかったかのようにしたいのでしょうか。 

 

望月衣塑子 

 

 

 
 

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