( 153003 ) 2024/03/25 23:55:29 0 00 自動車ディーラーのイメージ(画像:写真C)
原材料の高騰などで新車価格が高騰している。一方、所得がなかなか増えない庶民にとっては、新車は遠い存在になりつつあるの。
【画像】えっ…! これが自動車ディーラーの「年収」です(計12枚)
そんななか、新車購入の手段として残価設定型クレジット(残クレ)を利用する人が増えている。
残クレは、通常の購入方式よりも費用対効果が高いが、実はデメリットも多いことを再確認しておきたい。
残クレは最近になって登場した商品ではなく、2000年代末頃に登場した商品であり、クルマの新しい購入方法と考えられている。
500万円の自動車を購入すると仮定して、従来は現金一括払いか分割払い(ローン)だった。残クレはいわゆるローンのひとつではあるが、大きな違いはローン契約の期間である。
例えば5年払いの場合、5年後のクルマの将来価値である残存価値(残価)をあらかじめ設定しておく。最終回に残価を支払うことで、残り4年11か月分の支払いを抑えることができる。
例えば、500万円のクルマの5年後の価値が200万円だとすると、60回払いのうち59回払いで「300万円+利息」を分割で支払い、60回目の支払いで残りの200万円を支払うか、ディーラーにクルマを返却するか、新車に乗り換えるかを選択できる。車両返却または新車購入を選択することで、200万円の支払いを免れることができる。
自動車ディーラーのイメージ(画像:写真C)
残クレのメリットは、ずばり月々のローン負担が軽くなることだ。
500万円の新車を5年フルローンで購入した場合、従来のクルマの買い方では月々の負担は単純計算で
「8万3000円(500万円/60か月) + 利息」
であったのに対し、残クレでは
「5万1000円(300万円/59か月) + 利息」
で、負担は約40%軽くなる。従来のクルマの買い方では手が届かなかった高級ミニバンも、残クレなら買える可能性が広がる。
このほか、定期的に新車を購入する人にとっても、5年後の新車の価値を事前に知ることができ(据置)、少ない負担で頻繁に新車を乗り換えることができるため、残クレのメリットは大きい。少ない頭金で月々の負担を軽減できるのは、人によってはメリットだ。
自動車ディーラーのイメージ(画像:写真C)
メリットだけを見れば、残クレはクルマを購入するのによい方法に見えるだろう。一方で、デメリットに目を向けると、メリットより多くなる。実際にどんな事例があるのか確認してみよう。
●支払利息が高い 残クレの最大のデメリットは、支払う利息が高いことだ。将来価値を最終回に繰り延べることで月々の支払いを抑えられると紹介したが、実は繰り延べられる残価にも利息が発生する。つまり、残価が高ければ高いほど、負担する利息の総額も高くなる。毎月の返済額が少なくても、ローンの元本はなかなか減らない。
●制約も多い 残価の決定には基準が設けられている。この基準は、クルマを販売するメーカーやクレジット会社によって異なるが、一般的には次のような基準が設けられている。
・走行距離が基準より少ない(基本的に1000km/月以下に設定されている) ・内外装の傷や汚れが基準以下である(中古車査定の減点方式で評価されることが多い) ・事故などによる修復歴がない ・改造をしていない ・競技に使用されていない
設定された基準は、中古車として再販されることに裏打ちされている。この基準を満たさない車両はどうなるのか。走行距離や内外装の傷などは、追加料金を支払うことで免除されるケースもあるが、事故による修復歴がある場合は一発アウト。人によっては、残クレ期間中、事故を起こさないように慎重に運転せざるを得ないことがストレスになるかもしれない。
●長期間運転する人には向いていない 残クレは「短期間でクルマを乗り換える人」「普通にクルマを買えない人」をターゲットにしている。一度新車を買って乗りつぶすまで乗る人や、そもそも走行距離が基準よりかなり多い人には向いていない。どういう考え方でクルマを購入するのかを考える必要がある。
●クルマの人気に左右される 残価は、商品を提供するメーカーやクレジット会社が車種ごとに独自に決めている。その決め方は「市場での価値」で、ミニバンやスポーツタイプ多目的車(SUV)など人気カテゴリーのクルマは残価が高く、その恩恵を受けやすい。一方、現在最も不人気なカテゴリーであるセダンは残価が低く設定されているため、残クレを利用するメリットは少ない。購入前のシミュレーションで、残クレ利用のメリットがあるかどうかを見極めることが重要だ。
●“無限ループ”に陥る可能性もある 一度残クレを使うと、「残クレでクルマを購入する → 返却する(もしくは売る) → また残クレで購入する」という“無限ループ”に陥る可能性がある。月々の支払額が同じであれば、ディーラーが下取り価格や値引きを操作してユーザーに提示する可能性があるからだ。一度ハマると抜け出せない状況に陥る可能性があることを覚えておいてほしい。
自動車(画像:写真C)
残クレにデメリットがあるとわかっていても、高額な新車をポンと購入するのは難しい。どうすれば月々の負担を減らせるのか、頭を悩ませている人も多いだろう。
ひとつの提案は、ディーラー以外からローンを組むことだ。特に銀行などの金融機関では、ディーラーよりも低金利のマイカーローンが用意されている。
ただ、手続きが煩雑だったり、審査が難しかったりといったデメリットもあるが、銀行などの金融機関から長期間ローンを組むことで、支払期間は長くなるが、金利負担は軽減される。
営業マンは新車を売るだけでなく、残クレの契約数を目標として課されることもある。積極的に残クレを勧めてくることもあるが、
・自分の使い方に残クレが適しているのか ・銀行などを使って残クレを使わずに済むのか
よく検討することをお願いしたい。
筆者(宇野源一)はディーラー時代、
「契約からすべての手続きを店舗で行えるので便利ですよ」
というセールストークで残クレなどの利用を進めていた。担当営業マンの人柄がよかったとしても、腹のなかはわからないから、ぜひ自分で慎重に判断してほしい。
宇野源一(元自動車ディーラー)
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