( 154066 )  2024/03/29 00:41:16  
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2024年3月19日に日銀が金融政策の変更を行ったが、その影響で円高(米ドル/円下落)にならなかった。

これについて、米国の金利低下やインフレ率の緩和、日本の貿易収支改善などが予想通りの出来事だったため、市場価格には既に反映されており、為替レートに大きな変動が起きなかった。

日銀の大幅な利上げや米国の金利低下の速度が予想より遅いと考えられ、また日本政府や日銀が円高よりもインフレを通じた賃金上昇を望んでいることから、大幅な円高は期待されないとの見方が示されている。

(要約)

( 154068 )  2024/03/29 00:41:16  
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米ドル/円 日足 2024年3月19日、日銀はマイナス金利解除、YCC撤廃を含む大規模な金融政策の変更を行ったが、円高(米ドル/円下落)にはなっていない。 出所:TradingView 

 

 今回は、最近の為替相場に焦点を当てながら、市場のメカニズムについて解説してみたいと思います。 

 

●2024年の年初には、多くの専門家が円高になると予想していた 

 今年(2024年)の年初には、多くの専門家が円の強含みを予想していました。そのロジックは次のようなものでした。 

 

 まず、2024年が円高になると予想された主な理由は、アメリカの金利低下にありました。 

 

 具体的に数値を挙げると、米国の長期金利は2023年10月のピーク時4.99%から、わずか数ヵ月のうちに3.78%まで低下しました。現在は約4.2%とある程度戻しましたが、4.99%というピーク時の水準までは戻していません。 

 

 また、アメリカのインフレ率も2022年6月の9.1%から3%台へと低下しました。これには原油価格の下落が影響しており、今後もその効果に期待が寄せられています。 

 

 これらとは別の要因として、日本の貿易収支が改善していることも挙げられていました。 

 

 円安が輸出を促進し、安い原油価格が輸入コストを抑制することで、2023年9月に日本の貿易・サービス収支は黒字化しました。この流れは、原発再稼働や外国人観光客の増加によって続き、さらなる国際収支の改善を促すと見られていました。 

 

 このようなことから、今年(2024年)の年初には米ドル/円が1ドル=120円台へ早々に達する可能性があるという見方もあったのです。この予想には多くの人が驚くかもしれません。 

 

●米国の金利・インフレの動向や日銀政策変更の市場予想は当たったのに、なぜ円高にならないのか?  

 しかし、米国の金利動向・インフレ率、日銀のマイナス金利解除やイールドカーブ・コントロール(YCC)廃止といった市場予想が当たったにも関わらず、円は横ばいか、さらに弱含みとなりました。なぜでしょうか?  

 

  

 この現象は、市場がコンセンサス(一般的見解)とサプライズ(予期せぬ出来事)に基づいて動く良い例です。市場価格は将来の予想と現在の状況を踏まえて形成されます。 

 

 米国の長期金利の低下、インフレの緩和、原油価格の下落、日本の貿易収支の改善は、すべて事前に十分予想されていた事象です。したがって、これらはすでに為替レートに反映されていました。仮に予想どおりに進展しても、すでに価格に織り込まれているため、それによって為替レートが変動することはありませんでした。 

 

●私が初めから大幅な円高は起こらないと見ていた理由とは?  

 私自身は、初めから大幅な円高は起こらないと見ていました。 

 

[為替に関する参考記事] 

●米ドル/円相場が急落したが、2024年はどう動く?  米ドル/円、S&P500、米日金利差のチャートで見えてくる為替変動の3つのドライバーとは?  

●為替は金利差だけでは動かない!  2024年は米ドル安・円高! との予想が多かった中、なかなか下がらない米ドル/円はこれからどう動く?  

 

 その理由としては、日銀が意味あるぐらいの大きな幅で利上げを行うことは難しいと考えていたからです。さらに、米国の長期金利低下もそれほど速くないと予想していました。 

 

 また、政策面で言うと、現在の日本政府と日銀が望むのは円高ではなく、インフレを通じた賃金の上昇です。日本の当局は賃金上昇を景気回復の起爆剤と見ているため、円安を容認する傾向があると思われます。 

 

 そのため、中長期に渡る大幅な円高は期待しないほうが良いと私は思います。 

 

 多くの日本人は、円と日本国内経済に関するエクスポージャーが過度に大きいと思います。円安のリスク、日本国内が不景気になるリスクなどは、常に存在しますので、時間をかけて、通貨、投資先の分散をしたほうがいいと思います。 

 

 ●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。 

 

ポール・サイ 

 

 

 
 

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