( 154133 ) 2024/03/29 13:07:52 0 00 京阪京津線の上栄町駅
2023年12月、京阪電車京津線の上栄町駅(大津市札の辻)で記者が下車した際、目の前で高齢男性が係員に呼び止められていた。
【動画】日本一勾配のある場所にある京阪電鉄京津線の駅
同駅は基本的に無人だが、朝の時間帯に係員が配置されている。この男性は別の無人駅から乗ったが、時間がなく切符は買っていなかったという…。
大津市と京都市を結ぶ京津線と、琵琶湖沿いを走る石山坂本線からなる大津線。全26駅のうち無人は14あり、ICカード専用の簡易改札機や切符を入れる集札箱を設置している。
京阪電気鉄道の社史「京阪百年のあゆみ」によると、京都市営地下鉄東西線が1997年に開通したのと同時に、高収益区間だった京津線の三条―御陵間が廃線となった。
これに伴って経営の合理化を進め、2002年に京津線、翌年には石山坂本線で運転手のみのワンマン運転となった。
車掌がいなくても安全に運転できるよう、自動放送や異常通報装置、ホームの状態を確認できるミラーなどを整備したという。
京阪の広報担当は「運転手は安全に運転することが一番大切であり、不正防止の対応は特にしていない。チェックしていたら時間がかかり、定時運行も困難になる」と説明する。
京阪の上栄町駅に設置された集札箱とIC専用の簡易改札機
上栄町駅などのホームには「不正乗車は犯罪です」と大書されたポスターが掲示されている。
乗車券を持たずに乗車、ICカードをタッチせずに乗車、期限切れの定期券の使用、他人名義の定期券やICカードを使用、といった不正を明示。「運賃・料金を免れようとする行為は処罰の対象となる場合があります」と注意喚起している。
不正乗車を見つけた場合は、京阪は旅客営業規則に基づき、通常分とその2倍に相当する額を合わせた運賃を請求するとしているが、不正乗車の実態は不明という。
こうした中、利用客から「ICカードをタッチしていない人がいる」などと不正乗車疑いの指摘が寄せられたため、京阪は昨年11月から12月にかけて調査を行った。
石山坂本線の無人駅である松ノ馬場、滋賀里、石場、中ノ庄、唐橋前の5駅にカメラを設置。その映像を、人工知能(AI)を用いた社外の画像解析技術で分析した。IC乗車券や切符の利用者数と、改札を通った人の数の差異を調べるなどしたという。
不正乗車の実態把握のために調査が行われた京阪石山坂本線の石場駅。無人駅でICカードをタッチする簡易改札機や集札箱が置かれている(昨年12月、大津市松本2丁目)
分析結果は非公開で、今後の対策も検討中というが、京阪の広報担当は「正しい鉄道利用に関する啓発は今後も行う。いろんな乗車券があり、利用の仕方が分からない時は券売機近くのインターホンで申し出てほしい」と呼びかけている。
なお、切符を所持していなかった冒頭の高齢男性はいったん駅を出たが、後にきちんと運賃を払ったという。
不正乗車の実態調査のため、京阪の石場駅に設けられたカメラ(2023年12月)
国土交通省によると、2020年3月末時点の無人駅は全国で4564駅と約48%を占め、過去約20年で1割ほど増えた。利用者の減少などが背景にある。
有人駅に比べ、無人駅は不正乗車が起きやすいとされる。上智大学経済学部の川西諭教授(行動経済学)らは21年に大手鉄道会社と協力し、自動改札ゲートのある駅と無人駅間の往復でICカードの降車タッチ数を比較分析した。
結果をまとめた論文で、「自動改札ゲートのない駅、無人時間帯の長い駅ほど、また、往復運賃が高い区間ほど不正乗車が多くなる傾向が明らかになった」と指摘。タッチデータから被害金額の推定や対策の効果測定も可能になることが期待される、としている。
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