( 154196 )  2024/03/29 14:17:41  
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ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手の元通訳である水原一平氏が解雇され、違法賭博に関与したという疑いが報じられ、日本中で衝撃を与えている。

しかし、現時点では大谷選手自体には疑惑はなく、真実が明らかになるまで見守る必要がある。

記事は、20年以上前に違法賭博に関わる議員に出会い、ギャンブルが人を変えることについて語っている。

(要約)

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 ドジャース大谷翔平選手の元通訳・水原一平氏を巡る報道が加熱している。スポーツを巡る賭博とは何もアメリカだけの問題ではない。日本でも違法の野球賭博の現場を見たという作家の小倉健一氏が、その怖さを語る。「私が学生だった20年以上前、ギャンブル依存症で違法賭博をしている議員に出会った。その人はもう亡くなっている」ーー。 

 

 恐ろしい事態が進行している。ロサンゼルス・ドジャースで活躍する大谷翔平選手の側でずっとサポートしてきた通訳、水原一平氏が突然解雇された。多くのアメリカの報道機関が、水原氏が禁止されているギャンブルに関わり、大谷選手の資金を不正に使用していた疑いがあると報じている。長年にわたり大谷選手を支えてきた水原氏の解雇は、日本全国に大きな衝撃を与え、多くの議論を呼んでいる。 

 

 地元ロサンゼルスタイムス(3月22日)によれば、 

 

<MLBが、元ドジャース投手のトレバー・バウアーに対する調査のように、大谷を休暇にすることはなさそうだ。バウアーとは異なり、大谷は(違法なノミ屋に金を送ったという水原の撤回された主張以外には)いかなる疑惑にも直面していない> 

 

<現時点では、大谷は野球賭博はおろか、ギャンブルもまったくしていないことが知られている。リーグの団体協約では、野球以外の違法賭博を行った選手はコミッショナーの裁量に任される処罰の対象となる。2015年には、マイアミ・マーリンズのジャレッド・コサート投手が、野球ではなく他のスポーツで違法賭博をしていたことが発覚し、リーグから罰金を科された>というから、今後の焦点は、大谷選手が「送金」に関与していたかどうかにかかってくるが、この報道の限りでは、罰金などで済まされる可能性がある。まずは真実を明らかにして、大谷選手が関与していたならしていたで、きちんと謝罪をすることが大事だ。 

 

 私が学生だった20年以上前、ギャンブル依存症で違法賭博をしている議員に出会った。その人はもう亡くなっている。 

 

 学生インターン(秘書)として、ある衆議院議員事務所に出入りをしてたときのことだが、勉強のつもりで無料で入らせてもらった別の国会議員のパーティで自民党の市議会議員X氏と知り合った。その後、何度か食事に行ったり、地元の政治活動、選挙活動を手伝ったりもしていた。X議員は、繊細な印象を受ける細身の高身長で、性格はマジメ。いつか落選するかもしれないと行政書士などの資格を取得するような人だった。知り合ってから数年が経ったある日、X議員のクルマに同乗していたときのことだ。かかってきたケータイ電話に、ボソボソと話していると思ったら、今度は突然大きな声で「あー!えー。じゃあ行きます。10で」といって電話を切ったのだ。 

 

 大きな声にびっくりしていていると、X氏は「実は、これ野球の賭博なんだよね」と聞いてもいないことを興奮気味に話し始めたことをよく覚えている。 

 

 X氏の当時の言葉を借りれば、地元とか少し離れたところに拠点を構える「ヤクザ屋さん」が胴元となって、プロ野球のヤミ賭博が開催されているのだという。雀荘でその存在を知って、やってみたら面白くてハマったのだそう。 

 

 

 ギャンブルのルールは、シンプルだった。例えば、読売ジャイアンツVS横浜DeNAベイスターズの試合があったとしよう。すると、胴元は「読売-2ポイント、横浜+1ポイント」という風に、オッズを発表する。 

 

 もし、あなたが読売に賭けるとすれば、試合の最終結果から読売の点数を2ポイント引き、その結果と、ベイスターズの点数と比較して勝つ必要がある。例えば、1対1の同点で試合が終わったとすれば、賭け上は、「-1対1」であなたの負けである。あなたがギャンブルで勝つためには、読売は3点以上の点差で勝たねばならないことになる。 

 

 逆に、あなたが横浜なら、1対1で試合が終わっても、ギャンブル上は1対2となって勝つ。 

 

 勝ったら、賭けた金額の倍の金額が返ってくる。 

 

 アメリカで行われている野球賭博にも似たようなルールのものがある。 

 

 マネーライン(Moneyline)と呼ばれていて、もっともポピュラーなものだ。どのチームが勝つかを予想するのだが、オッズが「-150」「200」などと設定されている。ルールが少し独特で、オッズが「-150」など「-」のケースは、「(オッズの数字)ドル賭けると100ドルと賭けた分(このケースではオッズの数字)ドルが戻ってくる」というルールだ。オッズが「-150」であれば、150ドル賭けて勝てば、150ドルと100ドルで250ドル戻ってくる。負ければ、賭けた150ドルが無くなる。逆にオッズが「+200」など「+」のケースは、「100ドル賭ければ、賭けた100ドルに(オッズの数字)ドルが加算されて戻ってくる」というルールだ。オッズが「+200」であれば、100ドル賭けて勝つと、300ドル戻ってくる。負ければゼロだ。 

 

 日米同様に、オッズをうまくコントロールすれば、胴元が必ず勝つような仕組みになっている。 

 

 X氏の話に戻ろう。あまりに異様な興奮に、日頃からのギャップもあってびっくりして、X氏の友人であり、後援者でもある人に、ヤミ賭博であることは伏せて「X氏はギャンブル好きなんですね」と聞いたら、その人物も、野球賭博の実態を知っていて「X氏の掛け金があまりに高くてドン引きしている」と明かしてくれた。一回の試合で数十万単位のお金をかけて、ナイター観るときは酒も入ることで異様な大興奮を夜な夜なしているのだという。 

 

 その事実を知って、X氏から距離をソッと置くようになったのだが、残念なことに、数年後、X氏は胃がんで亡くなってしまった。葬式には、X氏の誠実な仕事ぶりを知っている人ばかりで、まさかそんな一面を持っていたことなど、知らないだろう。本当に、ギャンブルは人を変えてしまうなあと、感じたのを覚えている。 

 

 政治家という職業が、繊細なX氏にとって激しいストレスを生んでしまったのだろう。アメリカでは、ストレスの溜まる職業、例えば、軍隊で、ギャンブル中毒になる人が続出している。 

 

 

 全米ギャンブル依存症対策協議会(National Council for Problem Gambling)は、米国人口の2%がギャンブル依存症になるリスクがあり、軍人の4%が「リスクのあるギャンブルの基準を満たしている」か、深刻なギャンブル依存症の問題を抱えていると推定している。 

 

 カジノメディア「USBETS」(2023年11月29日)には、こんなギャンブル依存症の人物の声が紹介されている。 

 

<陸軍に勤務していたイェーガー氏は、アメリカに家族を残し、単身で韓国へ派遣されたときにギャンブルにハマったという。 

 

「落ち着いて、何か食べて、疲れてはいたけど、まだ眠る気にはなれなかった」というイェガー氏は、駐屯地内にあるスロットマシンができる部屋の前を通った。イェーガーによれば、現役軍人と退役軍人、軍人の配偶者や家族、基地に出入りできる民間人がこの部屋で遊ぶことができたという。 

 

「いつもしているように、ちょっとだけプレーしてみようと思ったんだ。それで座って、肩の力が抜けてリラックスしたのを覚えている。そして、大当たりはしなかったけれど、すべてが消え去ったような気がしたんだ」> 

 

 週刊文春電子版オリジナル(3月24日)によれば<「一平ちゃんはね、ギャンブルにハマるような気配は全くなかった。真面目に働いていて、性格も優しいし、親孝行だし。今回は知り合った人がよくない方だった。度が過ぎちゃったんだね」/ドジャースの大谷翔平選手(29)の元通訳で違法賭博に関与した疑いで解雇された水原一平氏(39)。彼を「一平ちゃん」と呼び、こう語るのは、カリフォルニア州オレンジ郡で「鮨処 古都(Sushi Koto)」を営む松木保雄氏(75)だ>という。 

 

 筆者がX氏に感じたものと一緒である。マジメで誠実な人物に見える人物こそ、ギャンブル依存症へと突き進むのだろうか。すべてを失った水原氏だが、まずは依存症の克服から始めたい。 

 

小倉健一 

 

 

 
 

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