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総務省が2月の消費者物価指数を発表し、生鮮食品を除く総合指数が2.8%上昇した。

一方で、賃金や可処分所得は増えず、庶民の生活が厳しくなっている。

2024年には自民党総裁選挙と解散総選挙が予定されており、増税の議論が盛んになっている。

日本銀行のマイナス金利解除など金利上昇の影響も懸念されており、政治勢力間の増税や社会保険料引上げの議論が進んでいる。

与党は増税に向けた動きを強めており、日本維新の会も社会保障改革案「医療維新」を提案しているが、その内容には議論がある。

(要約)

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 総務省が22日発表した2月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106.5となり、前年同月比で2.8%上昇した。物価上昇が止まらない一方で、手元の賃金、可処分所得は一向に増えていかず、庶民の生活は厳しくなるばかりだ。 

 

 そんな中、2024年内には自民党総裁選挙、そしてその前後に解散総選挙があると噂されている。「岸田自民党は増税を推し進めるべく布陣を固めているが、対抗馬となる野党も実は、増税勢力ばかりである」と国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は喝破するーー。連載「2024年の増税・公金チューチュー勢力図」第1回。 

 

 日本銀行がマイナス金利解除に踏み切った。当面、追加利上げの可能性は低い見通しとなっているが、中長期的に金利上昇が日本の財政政策に影響を与えることは避けがたい。国債利回りの上昇は、日本政府の財政を圧迫させていくことになる。したがって、国会議員の増税勢力の発言権が強まっていく流れが生まれてくる。まして、今年は自民党総裁選挙、そしてその前後には解散総選挙があると噂されている。そのため、総選挙後に向けた動きが主要与野党の中に生まれている。 

 

 現在のところ、与野党の国会議員らの主張を照らし合わせてみると、通常のパターン通り、総選挙後の論点設定は、社会保障制度改革&増税・社会保険料引き上げというパッケージの議論になりそうだ。 

 

 与党は更なる増税に向けた新たな布陣を2024年の年明けから実質的に作り上げている。1月31日、闇金問題が連日お茶の間を騒がせている中、自民党の財政健全化推進本部が国債利回り上昇を想定し、財政規律を求める議員が体制強化に踏み切っている。財政健全化推進本部の会長には麻生太郎副総裁が留任し、本部長に古川禎久元法相(茂木派)、本部長代行に小渕優子選対本部長、幹事長に青木一彦、幹事長代行に木原誠二、橘慶一郎が就任している。 

 

 そのテーマは、プライマリーバランス、歳出の抑制目標、所得税減税(単年度措置で終了させる)を扱うということだ。まさに、麻生氏、茂木派・元茂木派、岸田派、無派閥のメンバーによる増税志向のメンバーでの会合だ。同推進本部の幹事長代理に所得税減税を決めた岸田首相の側近である木原氏が入っていることは、所得税減税を単年度の一過性のものとする意図が見えて極めて残念である。一方、増税に距離を取ってきた旧安倍派は解散させられており、党内で増税を止める勢力は弱まっている。自民党の中長期的な党内情勢は増税一色ということになりそうだ。 

 

 

 このような与党情勢に呼応するように、日本維新の会は「医療維新」と題する社会保障改革&財源案を打ち出した。維新は高齢者医療の窓口負担原則3割化を打ち出し、社会保険料の重さに苦しむ現役世代からの支持を集めることを狙っている。 

 

 しかし、「医療維新」の具体策を良く読んでみると、必ずしも現役世代にとってバラ色の単純なストーリーではないことも分かる。岸田政権は方針として異次元の少子化対策の財源として原則2割負担化を掲げており、現状でも一定上の所得がある高齢者は2~3割負担になっている。一見すると、維新は原則3割負担化ということで、岸田政権よりも一歩踏み込んだ内容を提示しているように見える。 

 

 しかし、「医療維新」では同時に低所得者還付金制度を作ることを謳ってもいる。この制度の内容如何では実質的にはほとんど岸田政権案と変わらない可能性がある。つまり、この点は同政策パッケージの本丸ではない。 

 

 では、「医療維新」の本丸は何か。それは後期高齢者医療の財源の約4割を占める現役世代の社会保険料による支援金を廃止し、その財源を「税財源化」することにある。ただし、この財源規模は約6兆円であるが、その財源案について同党は詳細を示していない。その内容によっては、現役世代の所得や財産形成にも影響を与える増税が伴う可能性もある。本来、高齢者医療の窓口負担率を高め、現役世代の社会保険料負担を減らせば良いだけの話だが、「医療維新」の裏側に見える税収中立(=減税・増税を均衡させる)の発想に財務省の影がチラつくことは言うまでもない。 

 

渡瀬 裕哉 

 

 

 
 

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