( 155206 )  2024/04/01 15:00:07  
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インターネット上でよく目にする「結婚はコスパが悪い」という主張について、生活費、税金、社会保険料、年金などを最新のデータをもとに比較検証した記事がある。

結婚すると婚礼費用、子育て費用がかかるが、共同で暮らす場合は経済的に有利になる場面も多い。

夫婦や家族で暮らすと、税金や社会保険料の低減などもあり、結婚生活も考え方や収支によって結果が異なることが分かる。

(要約)

( 155208 )  2024/04/01 15:00:07  
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インターネット上で、「結婚はコスパが悪い」という主張をよく見かけるようになった。しかし、それは本当なのだろうか? 『老後ひとり暮らしの壁』の著者で、遺品整理・生前整理などの事業を手がける山村秀炯氏が、生活費、税金、社会保険料、年金まで、最新のデータをもとに「おひとりさま」との比較検証を行なった。 

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【写真】年収500万円以上の30代独身男性は「普通の男」じゃないんです 

 

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 「結婚はコスパ(コストパフォーマンス)が悪い」 

 

 「ひとりはお金が自由に使えて最高」 

 

 そんな意見を目にすることがあります。もちろん、結婚するのも独身を貫くのも、お金だけが理由ではないでしょう。ただ生き方の選択には経済的な視点も欠かせませんから、こうした切り口で良し悪しを語る人がいても不思議ではありません。 

 

 さて、本当にひとり暮らしは経済的自由を手にしやすいのでしょうか? 結婚はコスパが悪いのでしょうか?  

 結婚のコスト面だけを見れば、独身よりも高くなることは容易に想像できます。 

 

 婚約指輪に結婚指輪、結納式、結婚式代。親の援助などがあるとしても、百万単位のお金がかかります。ゼクシィ結婚トレンド調査2022によれば、結婚資金の平均額は371万3000円だそうです。 

 

 それから子どもができたら、ひとりを大学まで通わせた場合に約3000万円かかるといわれています(参考「フコク生命の学資保険みらいのつばさ」)。 

 

 これらのお金は結婚することで単純に上乗せされるものです。独身でいればその分を自由に使えると思えば、たしかに結婚はお金がかかります。 

 

 ただしパフォーマンスの面に目を移せば、結婚と独身生活でそれぞれ得られるものの価値基準はまったく違いますから、一概にどちらが優れているとはいえないでしょう。 

 

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 では、日々の生活費はどう違うのでしょうか。 

 

 結婚してひとり暮らしから2人暮らしになったときに、まず増えるのが家賃です。 

 

 ワンルームに2人で住むことができないというわけではないでしょうが、たいていは心機一転の意味も込めて、もっと広い部屋へと引っ越しをすることでしょう。 

 

 しかし、部屋数が2倍になったからといって家賃が2倍になることはありません。 

 

 リーウェイズ株式会社の不動産評価レポートによれば、駅からの距離や築年数をほぼそろえた場合、東京都内で20平米の部屋を借りる場合の平均家賃は7万8800円で、40平米の部屋の場合は12万8800円です。もしいままでの2倍の家賃を支払うのであれば、2.5倍の広さの部屋を借りることができるとの試算もあります。 

 

 トイレや風呂や玄関の広さはどの部屋でもたいして変わらないので、有効に使えるスペースはさらに広くなるでしょう。 

 

 次に、広くなった分、水道光熱費も増えることになりますが、こちらは2人分かかっていた基本料金が1つになって、部屋の明かりやテレビ、調理やお風呂にかかる水道ガス代が共同になることを考えれば、さらに効率的になります。 

 

 住居だけで考えるのであれば、ひとり暮らしは最もコスパが悪く、大勢で暮らせば暮らすほど共同で使える部分が増えて、パフォーマンスが上がっていきます。 

 

 食事については、外食をしているのであれば単純に2倍になりますが、自炊して2人分を作るのであれば、別々に自炊するよりも効率が良くなります。結婚をしたら外食が減って、お金も貯まるようになったし、健康的になったという話もよく耳にします。 

 

 交通費も、電車を使っていれば2人分で2倍ですが、車を使うのであればひとりを運んでも2人を運んでもかかる費用は変わりません。このように結婚して人数が2倍になることでスケールメリットを効かせられるようになる場面が増えてきます。 

 

 

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 次に税金について考えてみましょう。 

 

 日本の制度は、独身者よりも夫婦、夫婦よりも子育て世帯のほうに優しくなっています。政府としては、国民にどんどん結婚して子どもを作ってもらいたいので、当然の措置といえるでしょう。 

 

 実際に、どのような違いがあるのでしょうか。 

 

 総務省の「家計調査年報(家計収支編)二人以上の世帯」の2022年調査によれば、夫のみが働いている専業主婦世帯の平均年収は677万520円ですから、世帯年収700万円と仮定してみましょう。 

 

 年収700万円の会社員が独身でいた場合と、専業主婦を持った場合との税金を比較します。 

 

 独身の場合、給与所得控除後の金額が520万円となり、ここから基礎控除48万円と社会保険料控除約105万円を引いて、課税所得は367万円になります。 

 

 この場合、所得税の税率は20%なので、次のような計算になります(平成25年から令和1年までの各年分の確定申告では所得税と復興特別所得税を併せて申告・納付することとなりますが、ここでは便宜上含まれていません)。 

 

 所得税:367万円×0.2-42万7500円=30万6500円 

 

 また、東京都の場合の住民税は以下のようになります。 

 

 所得割:(520万円-105万円-43万円)×10%=37.2万円 

 

 均等割:4000円+1000円=5000円 

 

 住民税:37.2万円+5000円-2500円=37万4500円 

 

 つまり、所得税と住民税を合わせた税金総額は68万1000円です。 

 

 一方、夫婦の場合は、専業主婦が扶養家族となって配偶者控除があるので、課税所得は334万円となります。 

 

 所得税:334万円×0.2-42万7500円=24万500円 

 

 住民税:33.9万円+5000円-2500円=34万1500円 

 

 つまり、所得税と住民税との合計は58万2000円となります。 

 

 結婚して扶養の配偶者がひとり増えるだけで、税金は約10万円安くなります。 

 

 

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 最後に健康保険料と厚生年金保険料を合計した社会保険料(東京都 協会けんぽ)を比較してみましょう。 

 

 会社員の場合、扶養家族が増えたとしても、その分の保険料を支払う必要はありません。 

 

 ということで、独身でも夫婦でも社会保険料は105万3144円で同じです。同じ金額で2人分の社会保障が得られるのですから、たいへんお得な制度といえます。 

 

 言い換えれば、会社員の妻は年金保険料を納めなくても、65歳から亡くなるまで毎月5~6万円(平均受取額を参考)の老齢基礎年金受給者として受け取ることができるのです。これは国民年金保険料を支払ってきた人と(加入期間が同じであれば)同額となります。 

 

 男性も女性も、独身でフリーターをしている場合には、年間20万円弱の国民年金保険料と、所得に応じた国民健康保険の保険料を自分で支払っていかねばなりませんが、結婚して会社員の扶養家族となると、国民年金も健康保険も保険料を支払う必要がなくなります。 

 

 もちろん、病気やケガのときには会社員の夫もしくは妻の健康保険を使って医療機関を受診できます。子どもも同様です。 

 

 つまり、ひとり分の健康保険料で妻子など世帯全員の健康保険をまかなうことができるのです。年収や年齢などの条件を満たせば、扶養している親などもここに含めることができます。 

 

 ちなみに、以上の説明は、会社員の扶養家族となった場合だけであり、妻も働いていて年収が130万円以上ある場合や、自営業(個人事業主)やフリーランスの扶養家族の場合には当てはまりません。その場合は、国民年金も国民健康保険も妻の分を支払うことになります。 

 

写真:現代ビジネス 

 

 では、実際に65歳からもらえる毎月の年金額(老齢年金受給権者平均年金月額)を世帯別に見てみましょう。 

 

 夫婦共働きの会社員の場合、もらえる年金額は世帯合計で約27万円です。2人分の年金保険料を支払ってきたのですから、当然といえる金額です。 

 

 会社員と扶養家族(専業主婦)世帯の場合、その金額は共働きの場合よりも少なくなって、約22万円です。しかし、支払ってきた年金保険料はひとり分ですから、かなりお得です。 

 

 次に、夫婦ともに自営業の世帯の場合は、支払ってきた国民年金保険料は2人分ですが、国民年金だけなので、世帯合計でも約11万円にしかなりません。会社員の場合は、国民年金に上乗せして、会社が保険料を半分負担してくれる厚生年金に加入しますが、自営業の場合はそのような公的年金の仕組みがないからです。 

 

 おひとりさまの場合はどうなるでしょうか。 

 

 年金の金額は現役時の年収に比例するので、男性会社員の平均は約16万円、女性会社員の平均は約10万円となります。個人事業主の場合は、国民年金だけなので約5~6万円です。 

 

 おひとりさまの場合は、ややもすると生活が苦しくなってしまいそうな金額です。 

 

 この金額で老後の準備をして、もしかすると両親の世話もしなければいけないと考えると、年金だけに頼らずにしっかりと貯めていかねばという気になります。 

 

山村 秀炯(株式会社GoodService代表) 

 

 

 
 

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