( 155451 )  2024/04/02 12:53:16  
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自民党の二階幹事長が引退を決め、岸田首相は喜ぶが、二階の真意を理解しているかどうかが疑問視されている。

二階は50年にわたり政治家として活動し、自民党内で結束を築いてきた。

岸田との取引により引退を決めた二階は後継者問題を解決し、息子たちに議席を譲る計画を進めていた。

二階は政治のプロであり、計画的な引退を進めていた。

官邸や二階派の勢力争いもあり、内幕が明らかになっている。

(要約)

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 「自民党最後のドン」二階が自ら身を引くことを決断した。土の匂いのする政治家がまた一人去る。一方、厄介者を退場させたと官邸で小躍りする岸田。しかし、彼は重大な変化に気づいていない。 

 

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 50年の長きにわたり政界に身を置き、「永田町の妖怪」と恐れられた男の最期は一見、あっけなく見えた。しかし、わずか10分の会見の中に込められた真意に気づいた者は一体どれだけいるだろうか―。 

 

 3月25日午前10時半、自民党本部4階にある会見場で元幹事長・二階俊博の不出馬会見が開かれた。次の衆院選には出ず、事実上の引退を決めた二階。うつむき加減でボソボソと原稿を読み上げる声はいつになく小さい。ところが中盤、突然背筋を伸ばしたかと思うとカッと目を見開いて、次のように語った。 

 

 「初めて国政に立候補したころ、名も無い私に、初めて会った人が朝ご飯を食べさせてくれました。私は大変感激をいたした次第であります」 

 

 何者でもない私に、ご馳走してくれた人がいる。そのことを生涯忘れない。「妖怪」がまだ人間でありし頃のエピソードを披露したのだ。二階派の中堅議員が言う。 

 

 「二階先生の信条は『どんな奴とも飯を食う』。分け隔てなく人と付き合うことで慕われてきました。 

 

 総理を輩出することがなかった二階派は『寄せ集めのガラクタ集団』と揶揄されることもあったけれど、みんな二階先生の人柄に惚れ込んで、鉄の結束を誇りました」 

 

 その言葉を象徴するかのように、懐刀である元幹事長代理の林幹雄が隣にピッタリと寄り添い、会見を支えた。 

 

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 「記者に不出馬と年齢が関係あるかと聞かれて、『おまえ“も”その歳が来るんだよ、バカヤロウ』と叱りつけたのも二階先生らしい。ただキレて線を引いてしまうのではなく、『おまえも俺と同じ人間なんだよ』と懐を開いて見せる。 

 

 魑魅魍魎が跋扈する永田町で、あらゆる人を巻き込んで生き抜いてきた二階先生の手練を、短い会見の中で垣間見たように思います」(同前) 

 

 傍らでは、政界の荒波をともに乗り越えてきた総務会長の森山裕が、何か問題発言をしやしないかと気を揉みながら二階の姿を見つめていた。 

 

 裏金問題の渦中にあり、その去就に注目が集まっていた。党の処分が下される前に、「名誉ある引退」という花道を残す―官邸と二階派の間を取り持ち、調整役を担っていたのが森山だった。その森山の心配をよそに会見は幕を閉じた。 

 

 「『最強幹事長』の名を恣にした二階先生といえども寄る年波には勝てないということか。最後は非主流派に転落して力を失い、引退に追い込まれた。案外あっけないもんだな」 

 

 ある若手議員はこう腐す。しかしそうした評価は、二階という男の本性を完全に見誤っている。 

 

 故・安倍晋三は生前、二階を幹事長に起用した理由を問われ、「自民党で最も政治的技術を持った方だ」と持ち上げた。これは決してお世辞ではない。その後、二階は歴代最長の5年あまり幹事長として権勢を振るうことになるのだから。 

 

 

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 政治のプロフェッショナルである二階が何の狙いもなしに引き下がるはずがない。引退にあたり、総理の岸田文雄との間で取引があったことは永田町では公然の秘密だ。 

 

 「岸田さんは森山さんを介して、『二階さん自ら身を引くのであれば、裏金問題の処分は見送る』と伝えていたのです。 

 

 二階さんとしても離党処分などが下されれば、党内での影響力は著しく低下してしまう。何より不名誉な最期を迎えてしまう。『派閥のドン』として責任を取ったという形であれば、格好がつくし、求心力も維持できる。岸田さんからの取引の申し出は、二階さんにとってはプラスしかなかったのです」(自民党関係者) 

 

 今年85歳になった二階にはこれまで何度も引退説が流れた。それでも本人が引退を決めきれずにいたのは、後継者問題があったからだ。 

 

 次の衆院選で二階が立つ予定だった新和歌山2区を巡っては、地盤の重なる安倍派の前参議院幹事長・世耕弘成が「鞍替え」を狙い続けてきた。一方、二階は息子に継がせるため、引退の時期を見定めてきた。 

 

 しかし、一連の裏金問題で火だるま状態になった世耕は、もはや身動きがとれなくなった。二階にとって、息子に地盤を譲る絶好のタイミングが巡ってきたのだ。 

 

 「二階家では、地元事務所の所長である長男の俊樹さんと、公設秘書を務める三男の伸康さんの2人が出馬に意欲を燃やし、一本化できずにいました。 

 

 ところが世耕さんが自滅したので、二階さんは新2区を本命の伸康さんに継がせ、さらには俊樹さんに参議院和歌山選挙区をあてがうという大胆な計画をぶち上げた。これも岸田さんと話をつけた」(同前) 

 

 二階は突然引退を決めたように見える。しかし、水面下ではこんな計画が着々と進んでいたのだ。 

 

 「二階さんは代替わりを確実なものとするため、裏金問題で矢面に立たされた政敵の世耕さんを徹底的に叩いた。3月8日、産経新聞が和歌山県連青年局主催の『セクシーダンス懇親会』をスクープ。会を企画した川畑哲哉県議は世耕さんの元秘書で、そこでチップを口移ししていた男性も世耕さんの現役秘書でした。 

 

 

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 こうした“世耕派”への集中攻撃は二階派が仕掛けたリークと言われています。政治倫理審査会を前に、世耕さんのイメージダウンを図ったのです」(安倍派中堅議員) 

 

 こうして地ならしを済ませたうえで、二階は満を持してあの会見に臨んだのだ。会見後、二階は周囲にこう語ったという。 

 

 「こういうのはやっぱり自分で決めなきゃならん」 

 

 その満足げな二階の様子を、内心せせら笑って眺めている男がいた。 

 

 ―岸田だ。 

 

 会見の日の夕方、岸田は二階の根城である自民党本部5階の国土強靭化推進本部長室を詣でた。「党の功労者として、今後もご指導ください」 

 

 神妙な面持ちでそう言って二階を労ってみせた。 

 

 しかし官邸の自室に戻り、ドアを閉めると一転、拳を振り上げ、大きくガッツポーズを決めた。 

 

 〈これで邪魔者は消えた。俺の天下だ! 〉 

 

 そもそも二階の処分については岸田も困り果てていた。二階の政治資金収支報告書の不記載額は3526万円に上り、立件された議員を除けば最多。処分は避けられなかった。しかし、相手は40人近くの議員を束ねてきた「二階派のドン」。9月の総裁選で再選を目指す岸田としては、敵にまわすのは避けたかった。 

 

 後編記事『岸田総理が食べた「毒まんじゅう」、そして二階元幹事長は嗤うー岸田さん、あんた”も”終わりだよ』ヘ続く 

 

 「週刊現代」2024年4月6・13日合併号より 

 

週刊現代(講談社) 

 

 

 
 

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