( 156031 )  2024/04/04 00:08:58  
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2024年3月に、有名ショップが施工したセキュリティを備えたR34スカイラインGT-Rが盗まれる事件が発生。

なぜ強固なセキュリティが破られ、盗まれたのかについて検証が行われた。

スカイラインの盗難が増加しており、米国の25年ルールによってR34GT-Rの価格が高騰し、人気が急上昇していることが要因として挙げられている。

盗まれた車が2~3週間後に奇跡的に発見されるケースもあるが、再び盗難事件も報告されている。

盗難団は慎重に犯行を準備し、狙った車両のセキュリティを徹底的にチェックするなど、手口も巧妙化している。

(要約)

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ベストカーWeb 

 

 以前にベストカーWebで取材し、有名ショップが施工していたセキュリティを装着したR34スカイラインGT-Rを盗まれる窃盗事件が2024年3月に発生した。なぜ強固なセキュリティが破られ、盗まれたのか。被害者に話を聞き、検証してみた。 

 

【画像ギャラリー】最強セキュリティ「ゴルゴ」を装着していたのにもかかわらず「R34スカイラインGT-R」はなぜ盗まれたのか?(8枚) 

 

 文/加藤久美子、写真/加藤博人、日産、AdobeStock 

 

 2024年3月1日に警察庁から発表された「車名別盗難状況」(未遂を含まない盗難認知件数)によると、スカイラインの盗難台数は2022年が116台に対して2023年は71台と少し減ったものの、ワースト10に入っている旧車のスポーツモデルはスカイラインだけ。 

 

 2024年に入ってからもSNSでたびたびR34スカイラインGT-R盗難の報告が出てきている。スカイライン、特にR34GT-Rの盗難が増え始めたのは3~4年前からである。それは、34GT-Rの価格が高騰し始めた時期に重なっている。なぜ、高騰しているのか? 

 

 ベストカーWebの読者の皆様ならご存じの方も多いと思うが、これは米国特有の並行輸入車のための「25年ルール」(製造年月日から丸25年が経過すると『FMVSS連邦自動車安全基準』の縛りがなくなる)が関わっている。 

 

 R34GT-Rは1999年1月に発売されたので25年後の2024年1月から合法的に米国輸入が解禁となる。右ハンドル車であっても破壊試験そのほか、諸々の試験を受けることなく輸入OKとなる(販売や登録に関しては州のルールが優先されるため輸入はできても販売や登録が困難なケースもある)。 

 

 映画『ワイルド・スピード』(The Fast & Furious)シリーズやクルマのゲームに日本製スポーツカーが多数登場することもあって人気急上昇。25年ルール解禁に向けて人気も価格も高騰している。それに合わせて残念なことに盗難も増えているのだ。 

 

 そして増えつつあるR34GT-Rの盗難だが、2024年1月31日に千葉県野田市内で盗まれた「おもしろレンタカー」所有の白いR34GT-Rと、同時期に都内で盗まれた青いR34GT-Rの2台は盗難から約2~3週間を経た時期に、横浜港のコンテナのなかから奇跡的に発見されている。 

 

 2台とも2024年3月18日に横浜港の山下ふ頭にてそれぞれのオーナーに返還されており、この時はテレビの取材なども入っていたので筆者も立ち会ってコメントさせていただいた。 

 

 密輸される直前のコンテナ検査で盗難車が見つかることはこれまでにもあったが、その数は年間5台以下。ちなみにコンテナ丸ごとのX線検査は全数ではなく、わずかな台数しか検査対象となっていない。今回の発見は奇跡中の奇跡といえるだろう。 

 

 しかし、喜びもつかの間……同年3月5日夜にまたR34GT-Rの新たな盗難事件が発生した。場所は群馬県太田市。盗まれたR34GT-Rには国内最強といわれるユピテル製カーセキュリティ「GRGO」(ゴルゴ)が専門店A2Mでしっかり組まれていた。 

 

 以前、ベストカーWebでも取材させていただいたA2Mは開業から18年目を迎え、3000台以上を施工し、1台も盗難されたことがないという(バッテリー切断などのアタックは数件あるが盗難には至らず)。 

 

 

 それなのになぜ?そこで、オーナーのMさんに話を伺った。 

 

 「盗まれるしばらく前からクルマのバッテリーが弱くなっていました。それで、バッテリー保護のためにカーセキュリティ(ゴルゴ)の作動を夜間だけにしていたんです。いつも寝る前にスイッチONにしていたのですが、その日はスイッチを入れる前に盗まれてしまいました。私自身、家にいて起きている時でした」 

 

 「自分のミスで盗難されてしまいました。純正状態からほとんどのパーツを交換するなどして、とても愛着のあるクルマでした。盗まれて約1カ月が経ちますが、警察からはまったく連絡がありません。目撃情報も入ってきていません……。考えると非常に落ち込んでしまうので気持ちのコントロールと戦っています」 

 

 聞いているこちらも胸が苦しくなるようで、こちらからお話を伺うのが憚られるほどMさんは落ち込んでいらっしゃった。しかし、盗まれてから3週間以上経ってほぼ無傷で発見されたR34GT-Rの例もある。 

 

 また、これ以上盗難で苦しい思いをする人がいなくなるよう、注意喚起の意味でも取材にご協力いただいた。 

 

 スカイラインGT-Rのような超人気車種を盗もうとする窃盗団はまるで常に見ているかのようにして「たまたまその日だけやってしまったミス」を利用してやすやすと盗んでいくことがある。筆者がこれまで取材させていただいた50名以上の盗難被害者の方々のなかにも同様の理由で盗まれた方が数名いる。 

 

 「10年くらい前から毎晩、クルマ(シビックタイプR)で家に帰ってきたらすぐにバッテリーとハンドルを外して家のなかに持ち帰っていた。しかし、その日は帰りが遅く、疲れていたこともあって、バッテリーとハンドルを外すのを忘れて部屋に入ったとたん眠ってしまった。朝起きて2階の窓から駐車場を見たらクルマがなかった」 

 

 「いつもは少し離れた鍵付きの駐車場に停めるが、その日は夜遅かったので自宅前のスペースに置いていたところ、リレーアタックでレクサスGSを盗まれた」など。 

 

 長年ずっとこの習慣で愛車を守ってきたのに、本当に「その日だけのミス」で盗まれてしまうこともある。 

 

 窃盗団は狙いを定めたクルマはどんな手段を使ってでも盗もうとする。事前準備にも時間をかける。セキュリティの状態は入念にチェックする。 

 

 どんなセキュリティがついているか。常に作動しているか?電源ランプはついているか?ドアを開けたり叩いたりして警報音が出るか?などもチェックする。 

 

 わざと何度もドアを叩いてアラーム音を鳴らし、オーナーが近所に配慮してセキュリティを切るタイミングを見計らって盗みに行くこともある。 

 

 近年は「高価買取」を装ってオーナーが不在でクルマに疎い高齢者が在宅している時を狙って家を訪問し、盗むクルマのセキュリティ状態や防犯カメラの位置などを確認してタイミングを見計らって盗むことも増えている。 

 

 盗難されたクルマが見つかる例は非常に稀である。旧車は時価額での車両保険を付けることも保管状態など高いハードルがあり現実的にはとても難しい。何らかの異変を感じたら警戒し、同じ地域で盗難情報に敏感になってほしい。 

 

 また、大雨や台風、地震の余震が続くような時は盗難が増える。家族のような大事な存在である愛車を守ってあげてほしい。 

 

 

 
 

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