( 156491 )  2024/04/05 13:57:57  
00

政府が外国人ドライバーの受け入れを決定し、特定技能1号資格を持つ外国人労働者を活用することで物流の人手不足を緩和する方針が示された。

自動車運送業全体では、今後5年で2万4500人の外国人ドライバーを受け入れる予定であるが、20万人のトラックドライバー不足が見込まれており、国内人材の確保も重要視されている。

特定技能制度により外国人労働者を受け入れる分野が16分野に拡大され、政府は外国人材の活用などを成長戦略の一環と位置付けている。

(要約)

( 156493 )  2024/04/05 13:57:57  
00

ベストカーWeb 

 

 労働力不足に対応するため、政府が外国人ドライバーの受け入れを決めた。「2024年問題」で顕在化しているとおり、トラックドライバーなど物流の担い手不足が深刻になっており、「特定技能1号」資格の外国人材を活用することで人手不足の緩和を図る。 

 

【画像ギャラリー】世界のドライバーが日本に集い腕を競ったUD「エクストラマイルチャレンジ」から(4枚) 

 

 バスやタクシーを含む「自動車運送業」全体として、今後5年間で2万4500人を上限に外国人の職業ドライバーを受け入れるとしているが、トラックドライバーだけで20万人が不足すると予想されるなか、国内人材の確保も引き続き重要となっている。 

 

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部 

 

 政府は2024年3月29日、「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針」等を一部変更し、いわゆる外国人労働者の受け入れ上限数を緩和するとともに、対象となる分野を追加した。 

 

 受け入れ人数はこれまでの2倍以上となったほか、従来から対象となっていた「介護」「建設」「外食業」などの分野に加えて「自動車運送業」「林業」「鉄道」「木材産業」が新たに「特定技能」による外国人材活用の対象となった。 

 

 特に自動車運送業は働き方改革による「物流の2024年問題」に代表されるように、深刻な人手不足に陥っている。日本人の雇用や治安への影響などを危惧する意見はあるが、業界団体等においても外国人ドライバーの解禁を求める声は多かった。 

 

 分野別運用方針によると、自動車運送業では今後5年間で「特定技能1号」資格で最大2万4500人の外国人の受け入れが可能となる。この中には、バスやタクシーのドライバーも含まれているが、大部分はトラックドライバーになると見込まれ、特に物流分野での人手不足緩和が期待されている。 

 

 とはいえ、物流効率化を見越した上でも5年後には約20万人のトラックドライバー不足に陥ると予想されており、2万人強の外国人ドライバーを受け入れたとしても2024年問題には焼け石に水となる。国内でドライバーを確保するための取り組みも引き続き重要だ。 

 

 

 少子高齢化・人口減少が続くなか、外国人材の活躍を推進し、国籍に関わらず暮らしやすい多文化共生社会を実現することは政府の成長戦略の一部に位置付けられている。 

 

 入管法の規定に基づく「特定技能制度」は、専門的な技能を持った外国人労働者を受け入れる制度として2019年に始まった。 

 

 日本人の雇用機会に配慮するため、国内人材の確保のための取組を行なってもなお人手不足に陥っている分野に限り、即戦力となる一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れるという制度だ。 

 

 受け入れ枠の上限は5年ごとに設定され、今回の一部変更により対象は16分野に拡大した。また、この制度による外国人材の受け入れ後も国内人材の就労や生産性向上は「継続して行なうべき」とされている。 

 

 特定技能の外国人材は、「相当程度の知識または経験」が必要とされ在留期間が通算5年を超えない「特定技能1号」(配偶者等の在留資格は認められない)と、長年の実務経験等による「熟練した技能」が必要な「特定技能2号」(在留期間の上限なし、配偶者等にも在留資格)に分かれている。 

 

 自動車運送業分野で受け入れるのは前者(特定技能1号)となる。 

 

 なお、今回の拡大により非熟練労働者の「技能実習」と対象分野がそろったことで、技能実習から特定技能へ移行するなどの方法での受け入れもしやすくなるという。 

 

 トラック運送業の担い手不足は「2024年問題」として消費者の生活にも影響を及ぼし始めている。もちろん業界としての生産性向上や法改正、トラックGメンによる悪質荷主の取り締まりなど、国内人材を確保するための取組も進められている。 

 

 しかしながら人手不足の解消には至らず、自動車運送業の有効求人倍率は2.61倍(令和4年度)という高水準となっている。これにより5年後にはトラックドライバーが19万9000人、タクシー運転手が6万7000人、バス運転手が2万2000人不足するとされる。 

 

 政府は令和10年度末までの5年間で2万4500人を上限とする外国人ドライバーの受け入れを見込んでいるが、新たな国内人材の確保と、物流の効率化による効果を見越した上でも、2024年問題を解消するほどの受け入れ人数とはいえないだろう。輸送力確保のため、更なる取組を同時に進めていく必要がある。 

 

 外国人が特定技能制度でトラックドライバーとして働くには、車種に応じた第一種運転免許と、「日本語能力試験」のN4以上、もしくは「日本語教育の参照枠」のA2相当以上の日本語能力が必要。 

 

 バスやタクシーは乗客への対応が必要となるため、より高度な「N3」もしくは「B1」相当の日本語能力が求められ、試験の合格に加え新任運転者研修と、当然ながら旅客運送には第二種運転免許が必要だ。 

 

 雇用形態は直接雇用に限り、特定の地域に就労が集中しないよう必要な措置を講じる。同一分野(業種)内であれば転職も認められる。 

 

 また、人材の確保が制度の趣旨であるため、有効求人倍率等の公的統計を踏まえて、状況に変化が生じた際には国土交通大臣が見直しの検討・発議等を行なうとした。 

 

 受け入れ上限を超えることが見込まれる場合や、必要とされる人材が確保された場合、一時的な在留資格認定証明書の交付停止措置を法務大臣に求めることができる。 

 

 外国人材の受け入れが急速に進むと地域住民が不安を抱くおそれもあることから、国交大臣は治安上の問題となり得る事項を把握するため必要な措置を講じ、もし深刻な治安上の影響が生じるおそれがあると認められる時は、運用方針の見直しを含め関係機関と共同で検討を行なうとした。 

 

 

 
 

IMAGE