( 159829 ) 2024/04/15 00:02:55 0 00 AdobeStock
長きにわたり日本経済を見つめてきた経済アナリストの森永卓郎氏。日経平均株価が史上初めて4万円を突破するなど、明るい話題も多い日本経済だが、森永氏は「いまの日本はバブル経済の中にいる。そしてバブルは必ず崩壊する」と警告する。バブル崩壊を訴える根拠と、そんな中で日本人はどうすればいいのかについて、森永氏にうかがった。
世界経済はいま、非常に危機的な状況にあります。このまま放っておけば、人類は滅亡に向かうことでしょう。
しかしこんな状況にあるにもかかわらず、金の亡者たちは金を右から左に動かし、楽して稼ぐことをやめようとはしません。むしろ、いまの世界的な株高が、その状況にますます拍車をかけているのです。
いまの状況は、「世界規模でババ抜きをしている」ようなもの。これはどういうことか。本来株というのは、その企業の将来性を信じて買うものです。それがいまは、「儲かるから買う」「買ったら高値で売る」といった感覚でしか売買されていません。
その結果、多くの銘柄が本来の価値よりも高く評価されてしまい、日本経済がバブルの状態に陥ってしまったのです。「日経平均株価4万円」「新NISA」といった言葉に踊らされていまの株式市場に乗っかってしまうと、ババを掴まされることになります。
この200年間、世界を見渡すと大きなバブルだけで70回以上発生しています。しかし、一つの例外もなく、バブルは弾けています。そして、いつ弾けるかはわかりません。これは、“私”がわからないだけではありません。
バブルについての研究を行ったカナダ出身のアメリカの経済学者ガルブレイスは、「バブルがいつ崩壊するかを予測することは誰にもできない。ただしバブルはすべて崩壊してきた」と言っています。
私は、いまの日本経済はとてつもないバブルの状態にあると思っています。これまでの史上最大のバブルといえば、1920年代のアメリカで起きたものです。しかし、1929年10月24日木曜日に起きた「ブラックサーズデー」を皮切りに、3年弱でダウ工業平均株価は約10分の1まで落ち込みました。1929年の水準まで戻ったのは、なんと1954年のことです。
1920年代のバブルには、自動車と家電の企業の株価の上昇が大きな要因を占めていました。ただ株価が暴落したのは、自動車と家電が悪かったからではありません。あまりに高い株価になったためです。実態よりも株価が高ければ、その反動は必ず来ます。
翻っていまの世界経済を見てみると、いまは電気自動車(EV)に人工知能、半導体や宇宙開発のバブルです。
EVについてはもうインチキだとわかってきましたよね。テスラの利益は半減していて、2割引きで叩き売りしても在庫が増えている状況です。日本でも当初、先進的な人たちはEVを高く評価し、買い求めました。
しかし、実際に走らせてみるとどうにも使い物にならない。走行距離は短いし、ガソリンスタンドであればものの数分でガソリンが入れられるのに、EVであれば限られた充電スタンドを探し出し、急速充電でも30分から1時間は待たなければいけない。自宅に設置するタイプの普通充電だと、平均で8時間程度の時間を要します。
車に乗りたいときに自由に乗れないわけですから、こんな面倒なことはありません。その結果、いま世界中でハイブリッドの車の方が評価を高めているわけです。
そしてこのEVというのは、「機械製品」でありつつ、スマートフォンと同じ「電子装置」にも位置付けられます。すなわちEV化が進むと、大量の半導体が必要になる。そのため半導体バブルが起きたわけです。しかし裏を返せば、EV化にブレーキがかかれば、そこまでの半導体は必要ではなくなります。
半導体は、「少し需給がゆるむと大暴落する」という歴史をこれまで繰り返してきました。おそらく、いまの半導体のバブルも今年~来年あたりがピークだと思っています。
宇宙開発にしても、いま世界中が乗り出していますが、よく考えてみれば、「宇宙に行って何をするの」という話です。
「宇宙旅行なんて楽しそうじゃん」という人もいるかもしれません。しかし多額のお金をかけて宇宙に飛び出して地球を見たとしても、ただそれだけなんです。飛行機も最初こそ「すごいな」と思っても、何回も乗っていれば感慨もなくなります。また飛行機でもある程度地球の形は見えますし、宇宙だと移動の手段にもなり得ません。私は、いまの宇宙開発バブルは詐欺師たちが期待を高めすぎた結果だと思っています。
森永卓郎
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