( 160362 )  2024/04/16 14:56:26  
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日本社会では平均年収443万円で生活することが難しい状況となっており、『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』という本では、現実の生活や切実な声が述べられています。

このような状況から目の前の氷河期世代を救う方法として、東京都の「東京しごと塾」が取り上げられています。

この塾では非正規社員を対象にしており、就職支援事業が行われています。

身近な企業を訪問し、グループでの活動やキャリアカウンセリングが行われています。

これにより、就職や復職の支援が行われており、将来への希望を持つことができるようです。

(要約)

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〔PHOTO〕iStock 

 

 平均年収443万円――これでは普通に生活できない国になってしまった。なぜ日本社会はこうなってしまったのか?  

 重版7刷の話題書『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』では、〈昼食は必ず500円以内、スタバのフラペチーノを我慢、月1万5000円のお小遣いでやりくり、スマホの機種変で月5000円節約、ウーバーイーツの副業収入で成城石井に行ける、ラーメンが贅沢、サイゼリヤは神、子どもの教育費がとにかく心配……〉といった切実な声を紹介している。 

 

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 どうやって目の前の氷河期世代を救えばいいのか。これまでの取材を振り返ると、東京都の「東京しごと塾」に希望が見える。 

 

 東京しごと塾とは、政府が氷河期世代支援に乗り出す4年前の2015年度から、東京都が独自に行っている就職支援事業で、30~54歳の非正規社員を対象に行われる。事業の管理は東京しごと財団が行っている。実際の企画運営は東京しごと財団から人材ビジネス会社大手のパソナとパーソルテンプスタッフに委託されている。 

 

 腰を据えて訓練できるよう受講期間は2ヵ月間とされ、1期当たり原則として20人程度の少人数制で実施される。日々の生活に困らないよう、都から日額5000円の就活支援金が支給され、受講後3ヵ月の就職支援と定着支援が行われる。 

 

 ビジネスマナー、応募書類の作成、面接の練習などを行ったうえでグループを組み、東京しごと塾があらかじめ協力要請した企業にアポイントをとって訪問していく。会社の特徴などをヒアリングして、訪問企業をどうPRするか企画会議を重ね、最終日は企業の担当者を招いてプレゼンテーションを行う。グループワークを通して塾という“仮想職場”で“働く”体験をする。 

 

 支援のカギとなるのは、手厚いキャリアカウンセリングだ。ジョブトレーナー1人が受講生5人を担当し、その人が得意なことを見つける。受講生は「失敗した」「何をしたいのか分からない」などそれぞれに後ろ向きになっている。ジョブトレーナーは受講生が失った自信を取り戻し、一歩踏み出せるよう自己肯定感を引き上げていく。就職活動でマイナスイメージがつきがちな非正規雇用や無業の期間の長さをポジティブに捉えられるようにするのが、ジョブトレーナーの役割となる。 

 

 

 東京しごと塾の初年度2015年度の受講生は205人、86人が就職したうち、正社員が45人だった。直近ではコロナの影響を受けつつも採用状況は堅調で、2021年度の受講生は117人、90人が就職して55人が正社員になって卒業した。 

 

 ある男性は都内の有名大学を卒業後、1年だけ正社員で働いた。メンタルヘルスを崩して辞めて以降、サービス業で契約社員やアルバイトの職を転々としていたが、小売業への正社員入社が決まった。 

 

 また、20代の頃に正社員で働いた経験が3ヵ月だけという男性は、16年間も無業状態だったが、ジョブトレーナーと一緒に「自己紹介書」を作り、面接の練習を繰り返すうち、就職活動に前向きになり状況が好転。初歩的なITスキルでも可能なシステム保守職で採用された。 

 

 「もうすぐ40歳。それまでに何とか正社員になりたい」と年齢を強く意識した男性は一歩踏み出し、東京しごと塾に訪れた。チームを組んでコミュニケーションを図ることで働く意識が高まった。自分と似た境遇の仲間と知り合えたことで気持ちが救われ、過去を振り返って、自分に足りないものを学んでいくことができたという。 

 

 東京都は現在、コロナ関連の就労支援対策も実施しており、2021年度から2年間で5000人を支援する。求職者は、正社員を採用したい企業でまず派遣社員として最大2ヵ月、最大3社までで働き、企業風土や適性を見極めることができる。派遣期間中の費用は都が負担し、採用後に職場定着を図る企業には助成金制度を用意している。 

 

 個人の力ではどうしようもない不景気と規制緩和の波に呑まれた就職氷河期世代には、メンタルのケアも必要だ。そうしたサポートと、社員を育てようという意識のある中小企業とのマッチングを図ることができれば、まだ諦めなくても良いのではないか。 

 

現代新書編集部 

 

 

 
 

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