( 160772 ) 2024/04/18 00:10:48 0 00 TBS NEWS DIG Powered by JNN
大谷選手の元通訳・水原一平容疑者の違法賭博問題で注目が集まっている「ギャンブル依存症」。水原氏自身も陥っていたとされていますが、なぜ、抜け出せなかったのでしょうか。かつてギャンブルに依存した経験がある青木さやかさんとともに“依存”の実態や、私たちが知るべき「正しい知識」などについて考えます。
【写真を見る】ギャンブルに依存し借金を抱えた青木さやかさんと考える「ギャンブル依存症」 水原一平容疑者の“違法賭博”どう見た?【news23】
■「やりたい」と思うことはある、しかし“危うさ”が自分にはある
藤森祥平キャスター: 青木さんは医師から「ギャンブル依存症」という診断は、これまで受けてはいなかった。ただ、相当はまってしまいました。
20代半ばの頃に上京してから、パチンコがやめられなくなり、消費者金融機関から借金をするなど、ほぼ毎日のようにパチンコをやっていた。借金は約5年間で数百万円まで重ねてしまった、という状況でした。今はもうパチンコはやっていないんですか?
青木さやかさん: 今やってないですね。距離を置いてる、という感じです。でも「やりたい」と思うことはあります。やっぱり面白いものですよね、とても。でも、うまく付き合うことができないというか、ほどほどのところで止められる気がしない。その“危うさ”が自分にはあると今も思っているので、今はやっていないです。
小川彩佳キャスター: 「意識的に距離を置いていかないと」という。
青木さやかさん: 「距離を置く努力をしている」という感じですかね。
藤森キャスター: 今回、水原容疑者の様々な情報が出ていますが、どのように感じていますか?
青木さやかさん: 額が大きいので驚きますが、最初は1回の賭けだったと思います。勝ったり負けたりしながら、負けが込んできて、「次は勝つかもしれない」というのがどんどん回数が増えていった、というのはすごく理解ができるので。額は大きすぎますが、借金が増えたということは、とても理解ができるというか。
藤森キャスター: どうしても常識的に「約210億円勝ち、約280億円負け、そして62億円の損失」は途中どこかで「あれ、これはまずい」と思えないのかな、というふうに感じてしまいますが。
青木さやかさん: 私は水原さんではないのでわからないのですが、思っていたとは思います。私の過去の記憶をたどると「まずいな」って思っていたけれども、「もしかしたら取り戻せるかも」とも思ったのではないかな、と。
■「まずい、本当に。」と思いながら次の日も…
小川キャスター: 青木さんも同じような経験をされたこともありますか?
青木さやかさん: そうですね。1日に20万勝った。それが1週間続いたとしたら、そしたら借金が返せるわけじゃないですか。「普通に仕事するよりも、多く稼げる」という。
小川キャスター: バイトをしたりとかするよりも稼げると思ってしまう。
青木さやかさん: そうですね。感覚を覚えてしまう。
藤森キャスター: どうやって青木さんがギャンブルを辞められたんですか。
青木さやかさん: 私はすごく売れて、仕事がいっぱいになり、パチンコに行く時間がなくなったんです。
藤森キャスター: 売れたお金で「もっとやるぜ」みたいな感じにならないほど、忙しくなったということですか?
青木さやかさん: そうです。それもあるし、大きく稼げるようになったので、パチンコに行って稼げる額というのが楽しくなくなった、という。
藤森キャスター: もし売れてなかったら…
青木さやかさん: どうなってたんでしょうね。わかりませんけれども「まずいな」と思いながら、しばらくやってましたね。
東京大学准教授 斎藤幸平さん: 粗品さんとか、儲かってさらに競馬とかもやってますけど、ああいう感じではないですよね。
青木さやかさん: だから言えなかったですよね、粗品さんみたいな感じではなくて。そのときは人にあんまり言えなかった。恥ずかしいなとか、まずいなとか、やばいなとか。できるだけコソコソやっていたかも知れない。ギャンブルの友達以外には言わなかったと思う。
小川キャスター: 「やめないと」とか、そういった感覚はありましたか?
青木さやかさん: ありました。いつもどこかにありました。「やばいな」って。「まずい、このままだとどうなるんだろう」、自己破産するとか。そのときの仲間が結構みんなギャンブルをやっていたので、「何とかなるんじゃないか」という思いがありながら、夜一人になると「まずい、本当に。明日は行っちゃ行けない」と思いながら、次の日も行ってしまうという。
■日本では違法の「オンラインカジノ」 “日本からのアクセス数”が8倍に
藤森キャスター: 2年前の最新情報で、オンラインカジノの現状です。日本ではアクセスして賭博するのは違法です。
【日本からのアクセス】 2019年4月:1400万回 2021年7月:1億1200万回
しかし、日本からのアクセス回数が桁が変わるほど増え8倍に、日本は世界の国別アクセス数ランキングでも4番目まで増えてしまった。
青木さやかさん: 啓発活動をされている「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中代表がよく言ってますが、オンラインカジノが始まってから本当にギャンブル依存症の方が増えている、というお話を聞いてます。
私はパチンコを主にやってましたが、24時間ずっと止めたくなかったですが、店が閉まると止めざるを得ない。冷静にならざるを得ない時間が半日はあった。そうじゃなかったら、24時間私もやってるだろうな、と思いますよね。特に夜中にやるんじゃなかろうかと思います。
小川キャスター: 物理的な距離が生まれないので、その恐ろしさというのはありますね。
藤森キャスター: 斎藤さんはギャンブルやりますか?
斎藤幸平さん: やらないです。ずっと学生でお金がなかったので、やろうと思ったことがないですが、こうやって身近になってくると、はまってしまう若い人は結構出てくると思います。
資本主義は役に立たないものでも、とにかく儲かるんだったら何でもやるんです。それが問題で、日本もこれから2030年に大阪でIRをやる、みたいな話になっていますが、言ってみれば、水原さんは身をもってその危険性を示してくれたので、日本も本当にそれやるのか?というのは、改めて考える必要があるかもしれないですよね。
■ギャンブル依存症の脱出のきっかけ「底つき」とは
青木さんの厚労省が行う依存症の啓発活動イベントなどに参加されたり、依存症をテーマにした映画にも出演されたり様々な形で発信をされていますが、どういった思いがその裏にはあるんですか。
青木さやかさん: 私はただ自分の経験や過去のことを話しているだけですが、自分の苦しかったこととか、過去いろんな傷みたいなものというのは、決して私だけの問題ではなくて、今も多くの方が抱えてる問題なので、私の発言や経験が役に立てばいいな、というのはどこかにはあります。
啓発活動をする中で、すごくいろんなことを勉強をさせてもらっています。私はこの啓発活動の中で、「ギャンブル依存症が実は病気」だということも初めて知りました。
水原さんもそうかもしれませんが、「底つき」という言葉があります。人により違いますが、家族がギャンブルをやりすぎて家族がいなくなってしまった、とか。自分自身の社会的地位が失われたとか、経済的に困窮したとか、それがそれぞれの人の「底つき」になります。
「底つき」をして自分以外の人を傷つけたな、苦しめたな、と自分が感じたときに初めてギャンブル依存症から抜け出せる、ということがあるらしいんですね。だから自助グループでは「底つきになって良かった」ってみんな言うんです。「初めてギャンブル依存症を認めて、そこから抜け出そうと自分は努力できる」ということをおっしゃっている。
私は言葉は悪いけれど、水原さんにとっては“チャンス”というか、「それしかなかった」ということもあるのかな、と「底つき」ということなのかな、と思います。
■ギャンブル依存症回復のために周りができること
藤森キャスター: ギャンブル依存症回復のために周りができることはどんなことか、久里浜医療センターの松下幸生院長に聞きました。
▼借金を肩代わりしない:肩代わりしてしまうことで本人が問題と向き合うことを妨げる ▼依存症についての理解を持つ:病気なので本人の意思では止められない。例えば、叱責すると、症状として「嘘をつく・隠す」ことがどんどん悪化してしまう。
青木さやかさん: 嘘ばっかりついてましたよね、過去は。一緒に住んでいたパートナーに「パチンコやめてほしい」というふうに言われていましたが、その人のことも大事だし、止められないから嘘をついていくようになるんですね。そうすると嘘が嘘で塗り重なっていて、何が本当なのかよくわからなくなる、というか。「嘘をつくのが彼に対する誠意なのかな、せめてもの」と思うようにもなりました。
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