( 161219 )  2024/04/19 01:46:23  
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2024年5月、住信SBIネット銀行が短期プライムレートを引き上げると発表し、これにより住宅ローンの変動金利が上昇することが予想される。

現在の金利設定を考慮したシミュレーション結果では、返済額が増加することが示されている。

他行も金利引き上げに追随する可能性があるとされており、借り換えや固定金利に変更するなどの対策が考えられている。

(要約)

( 161221 )  2024/04/19 01:46:23  
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住信SBIネット銀行は、2024年5月に短期プライムレート(短プラ)を引き上げると発表した。これは現在、住宅ローン(変動金利)を返済中の金利が上がるということであり、毎月の返済額が増加する。金利引き上げの影響を試算するとともに、他銀行へ金利引き上げが波及する可能性についても考察する。 

 

大手銀行の10年後の変動金利は0.7%~2.3%と当サイトは試算 

 

目次短プラ上昇で、返済中の変動金利が上昇へ!変動金利は今後上昇するのか返済中の借り手はどうすべきか 

 

住信SBIネット銀行のプレスリリース 

 

「これを皮切りに、他行も短期プライムローンおよび住宅ローン変動金利の引き上げの検討に入るのでは。金利上昇に向けて、スイッチが入ったかもしれない」(淡河範明・住宅ローンアドバイザー)。 

 

 住信SBIネット銀行は、2024年4月17日、円定期預金およびローン金利について、5月1日に改定(引き上げ)すると発表した。日銀の金融政策変更で政策金利が「マイナス0.1%」から「0~0.1%」に引き上げられるなど、金利は上昇局面にあることが背景だ。 

 

 円定期預金金利については、1年物について年0.03%から、年0.10%に引き上げる。実に金利は3倍以上上がる。 

 

 同時に、貸し出し金利の基準となる「短期プライムレート」について、年1.675%から、年1.775%に、0.1%引き上げる。 

 

 それに連動して、住宅ローン変動金利の基準金利が2.775%から2.875%に、0.1%上昇する。資産形成ローン、不動産担保ローン、目的ローン(教育・自動車・リフォーム・多目的・フリーローン)も同様に0.1%上昇する。 

 

*短期プライムレート:銀行が大企業などに対して行う1年以内・短期融資の最優遇金利のことで、市場金利に左右される。現在、銀行が提示している短期プライムレートの最頻値は1.475%。 

 

2025年1月から変動金利上昇の可能性 なお、「住宅ローン変動金利」の決まり方は複雑だ。以下、住信SBIネット銀行の変動金利の決まり方を説明する。今回の場合、2024年4月30日までに借り入れた利用者の場合、2025年1月から変動金利が上昇する可能性がある。 

 

 まず、銀行が短期プライムレートを引き上げた場合、多くの銀行はそれに連動して住宅ローン変動金利の基準金利を引き上げる。 

 

 ただし、現在返済している人にはすぐに適用されるわけではない。「基準金利が改定される」のは、4月1日と10月1日の年2回だけ。その際に短期プライムレートが上がったままであれば、基準金利が改定される。さらに、借入金利が本当に引き上げられる「借入金利の改定日」は3カ月後となる。そのため、2024年5月に基準金利が引き上げられても、実際の金利が上昇するのは、2025年の1月なのだ。 

 

激変緩和措置で、返済額が上昇するのはもっと先 また、毎月の返済額については、激変緩和措置として、「5年ルール」「125%ルール」を適用する銀行が多い。 

 

 2025年1月から新しい借入利率が適用され、その金利で計算された返済額が適用されるのだが、毎月返済額を引き上げるのは5年に一回までとしている銀行が多い。つまり返済額が変わるのは、5年目、10年目、15年目…に限られる。 

 

 さらに返済額の上げ幅については、+25%までしか引き上げない。本来はそれ以上の返済が必要であっても、+25%を上限とする。金利については必ず支払わないといけないため、住宅ローン元本の返済は少なくなる。本来払うべき元本返済は、先送りすることになる。ともあれ、返済額が上昇するのは、1年後から5年後になる。※参考:住信SBIネット銀行「住宅ローン金利変動リスク等に関する説明書」 

 

返済額はいくら上がるのか試算 それでは、金利上昇で返済額がどのくらい増加するのか試算してみよう。 

 

 前提条件は、借入期間30年、借入残高5000万円。5年ルール等は適用なしで試算した。 

 

金利0.298%の毎月返済額 145,206円 

金利0.398%の毎月返済額 147,368円 以上のように、毎月返済額は2,162円増加する。一見、それほど大きな負担には見えない。 

 

 次に、30年間の総返済額をシミュレーションしてみた。 

 

金利0.298%の総返済額 5,227万円 

金利0.398%の総返済額 5,305万円 以上のように、総返済額は78万円増加する。思ったよりも大きな負担と感じるだろう。 

 

 今回、日銀の金融政策変更により政策金利がマイナス0.1%から、0~0.1%に引き上げられたため、短期プライムレートを0.1%引き上げたのだろう。今後、短期プライムレートをさらに引き上げることになれば、返済額も増加していく。 

 

 

※転載フリー。転載時は出典の明記を。変動金利は、大手銀行の代表的な金利。店頭金利は、日本銀行「金融経済統計月報」などを参考に作成。表面金利は銀行関係者から独自に入手。表面金利の点線部分は資料がないため、編集部の推測。短期プライムレートは最頻値で、日本銀行の統計「長・短期プライムレート(主要行)の推移」を参照。 

 

返済中の変動金利の決まり方「住宅ローンの変動金利」について考える場合、以下の2つの変動金利が別物であることに注意しよう。 

 

・新規に借りる場合の変動金利 

・返済中の変動金利 住宅ローンの変動金利は、 以下の式で求められる。 

 

「基準金利」ー「優遇金利幅」=「融資金利」 

 

 住信SBIネット銀行で4月に新規に変動金利を借りる場合、金利は以下のように求められる。 

 

・新規に変動金利を借りる場合 

2.775% ー 2.477% = 0.298% 一方で、返済中(2017年12月に借りた人)の場合は、以下のようになる。基準金利に変更はないが、現在と優遇金利幅が違うので、適用金利が新規借入と違う。この優遇金利幅はずっと変わらない。 

 

・返済中(2017年12月に借りた人)の場合 

2.775% ー 2.298% = 0.477% 

 

 下図のように、「変動金利の基準金利」は過去30年程度、ほぼ変更がなかった。 

 

 ただし、銀行は資産運用難の中で住宅ローン顧客の獲得に注力しており、優遇金利幅を拡大することで新規に借りる人だけに低金利を提供してきた。 

 

 一方で、一旦借りた人については、金利優遇幅は変更されないため、中には「高い変動金利」が適用されている人もいるということだ。これは住信SBIネット銀行に限らず、ほぼ全銀行がそうしている。 

 

変動金利は採算割れなので、いつかは引き上げる 現在の「新規融資の変動金利」は、ネット銀行であれば0.3%前後。大手銀行も0.3%から0.5%程度で融資している。史上最低水準と言える。 

 

「銀行は顧客を獲得しやすいので、変動金利に力を入れている。ただし、スプレッド(融資金利と調達金利の差)をきちんと取れていないので、最近の融資は採算割れをしている。採算度外視で融資している」(淡河範明・住宅ローンアドバイザー)という。 

 

 そのため銀行としては、いつかは変動金利を上げるしかない。その手法としては、「変動金利の基準金利」を上げるしかないのだ。優遇金利幅は、借入時に適用された幅がずっと続く契約となっているので、「変動金利の基準金利」を引き上げて、変動金利で返済中の顧客全ての金利を引き上げることになる。 

 

 また先ほどのグラフを見てもわかる通り、1991年には変動金利の基準金利は8%台だったこともある(現在は2.475%)。 

 

 急激な金利引き上げはないにしても、採算割れをいつまでも続けるわけにはいかないだろう。 

 

他行は追従して、短プラを引き上げるのか? 金融機関というと、横ならび、護送船団方式で運営してきた業界だが、ネット銀行については、そうした同調圧力があまりない。 

 

「今回の日銀の政策金利引上げはちょうどいいタイミングだったのでは。預金金利も上げており、顧客からも非難を受けにくい状況だったといえる」(同)という。 

 

 これをきっかけにして、基準金利引き上げについて様子見だった金融機関も、本格的に検討するモードになりそうだ。 

 

 ただし今後、「変動金利の基準金利」が急速に上昇するかというと、「すぐに大幅に金利が上昇するとは考えにくい。1行だけ金利を引き上げれば、他行への借り換えが起こる可能性もある。当面は各銀行が横にらみでジリジリと金利を引き上げて行く展開となるのでは」(同)と予想する。 

 

 また、日銀の金融政策については、引き続き金利を引き上げるのではないかという観測も出ている。そのタイミングで、「変動金利の基準金利」を引き上げる銀行も出てくるだろう。 

 

 

他行に借り換えすべきか? 返済中の住宅ローン変動金利が上昇することが決まった場合、まだ金利を引き上げていない他行に借り換えを検討できるかもしれない。 

 

 しかし、借り換えにはコストが必要だ。現在、低金利の住宅ローンの場合、最初に「借入額×2.2%」の手数料を支払うことになるほか、登記費用もかかる。5000万円を借り換える場合、手数料だけで110万円も必要になる。先ほど0.1%の金利上昇を試算したが78万円。金利差がもっと大きくならなければ、メリットはない。 

 

 また、借り換えた先の銀行が、変動金利の基準金利を変更しないという保証はない。 

 

 現在返済中の変動金利が明らかに高かったり、一部の地銀のようにネット銀行との金利差が大きい場合は、借り換えは意味がある。 

 

 しかしネット銀行や大手銀行の場合は、金利差が0.1%~0.2%程度におさまっており、1行だけ突出して金利を引き下げることも考えにくく、借り換えは有効な手段とはならないだろう。 

 

固定金利に変更すべきか? さらなる金利上昇に備えて、銀行はそのままで、変動金利から固定金利に変更することが可能だ。毎月返済額を固定化できるので、返済額増加リスクを抑えられる。 

 

 ただし、変動金利から固定金利に切り替える場合、当然ながら金利は上昇するので、毎月返済額が増加する。返済額シミュレーションなどを活用して、返済額がどう変わるか試算するといいだろう。 

 

 また、金利上昇に備えて、貯金をしておくという対策も可能だ。金利が上昇した場合、貯金で繰り上げ返済を行うことで、毎月返済額の増加を抑えられる。 

 

 いずれにせよ、変動金利を借りている場合は、将来の金利上昇について、一度シミュレーションしてみることをお勧めする。 

 

ダイヤモンド不動産研究所 

 

 

 
 

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