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イスラエルがイランに報復攻撃を行ったことで、日経平均株価が急落し、今年最大の下げ幅となった。

新NISAで資産運用を始めた投資初心者は、このような市場の変動にどう対処すべきか悩んでいる。

記事では、市場の変動は予測が難しく、長期・積立・分散投資が重要であることが強調されている。

また、相場の下落局面でも積立投資を続けることや、銘柄選別の重要性が指摘されている。

資産運用会社「なかのアセットマネジメント」も新たなアクティブ型の投資信託を立ち上げ、独立性を重視している。

今後も資産運用の重要性や対処法について連載が続く予定。

(要約)

( 162709 )  2024/04/23 16:49:39  
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イスラエルのイランへの報復攻撃を受けて、日経平均は一時1300円超下落した(写真:AP/アフロ) 

 

 「つみたて王子」こと、なかのアセットマネジメント社長・中野晴啓氏による連載「中野晴啓の正しい投資」。イスラエルがイランに報復攻撃をした4月19日、日経平均株価は一時1300円以上値下がりし、今年最大の下げ幅となった。3月には4万円台の大台に乗っていたが、3万7000円を割り込む場面もあった。新NISAで資産運用を始めた投資初心者は、どのように動揺を克服し、危機を乗り切っていったらいいのか。(JBpress) 

 

【グラフ】S&P500は長期で見ると右肩上がりだが、それは過剰流動性のおかげ 

 

 (中野晴啓:なかのアセットマネジメント社長) 

 

 前回の澤上篤人さんとの対談記事は、今でも大きな反響をいただいております。「大暴落」という見出しが目を引いたのでしょう。実際、一時4万円の大台に乗った日経平均株価は、あれよあれよという間に下落し、4月19日には一時、前日終値と比べて1300円以上も急落して3万7000円台を割り込みました。 

 

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 米国のハイテク株の値下がりに引きずられていたところに、イスラエルがイランに報復攻撃を仕掛けたという報道が駆け巡り、一気に下げ幅を拡大したのです。 

 

 そこで気になるのが、今年1月からスタートした新NISAをきっかけに資産運用をはじめた投資初心者の方々の心情です。 

 

 年初からの約3カ月間、日本株は右肩上がりに上昇してきました。私は、その勢いは急すぎると危うさを感じていましたが、新NISAで資産運用を始めた方々は幸先のいいスタートに、さぞ喜んでいたことでしょう。 

 

 日本株だけではありません。米国株もエヌビディアやマイクロソフト、グーグルの親会社であるアルファベットなどAI(人工知能)で先行する半導体・巨大IT銘柄が相場を牽引していました。 

 

 新NISAがスタートして3カ月が過ぎ、初心者もそろそろ慣れてきたかと思われる矢先の相場の急落。SNSでは動揺を隠せない個人投資家のコメントも見られます。 

 

 しかし、こうしたマーケットの急変は、いつ、何をきっかけに起こるか、プロでも予測することが難しいのです。これまでの連載でも繰り返し述べてきましたが、資産運用で大切なことは、長期・積立・分散投資です。短期的な激変でも慌てずに、長期の視点を維持して投資を続けることが欠かせません。 

 

 今回は、株式市場の大幅な下落を受けて、改めてショックを乗り切る心構えについて整理したいと思います。 

 

 

■ 「新NISAを始めれば絶対もうかる」 

 

 まず、大前提として、マーケットが右肩上がりに上昇し続けることはあり得ない、と肝に銘じておきましょう。「当たり前だろう」と思う方も多いと思いますが、「新NISAを始めれば絶対もうかる」と言わんばかりの解説が世の中に氾濫していたので、そんな感覚に陥っていた人も多いと思います。 

 

 確かに、米国の株式指標(インデックス)であるS&P500の推移を見れば、これまではおおむね右肩上がりに上昇してきたように見えます。世界の人口は今後も増え続けることから、グローバルで見れば経済は成長し続ける、すなわち世界の株式マーケットも上昇していく、という説明も理解できます。 

 

 こうした解説を信じて、新NISAを始めるにあたり、まずはS&Pのほか、世界の株式いわゆるオールカントリー(オルカン)と名付けられたインデックス型の投資信託を購入した方も多いはずです。 

 

 しかしこれは、「S&Pやオルカンに投資をしておけば問題ない」という、S&Pやオルカンを扱うファンド運用会社や販売会社のマーケティングが成功した結果です。それを受けて資産運用を始めた方々のマーケットに関する理解は、まだ不十分だと言わざるを得ません。 

 

 「S&Pはもうかる」という見方について言えば、結果的に過去はそうだった、ということを言っているに過ぎません。人口の増加を背景として世界経済が成長しても、マーケットはアップダウンするので必ずしも連動しません。究極的にはマーケットは実体経済の動きに回帰するかもしれませんが、それがいつになるのか、誰にもわからないのです。 

 

 そもそも、これまでマーケットが上昇してきたのは、異常なほどの過剰流動性、つまりカネ余りの状況が長く続き、だぶついた資金が株式市場全体に流れ込んでいたからです。しかし、もはやそうした異常な状況は長続きしないでしょう。そのあたりの詳細は、澤上さんとの対談をお読みください。 

 

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 つまり、マーケット全体が「右肩上がりに上昇し続ける」という見方は幻想である、としっかりと理解していただきたいと思います。今回のマーケットの急落を、いい学びの機会にしてほしいのです。 

 

 

■ 原則は相場の下落局面でもコツコツ積み立て 

 

 その上で、ではどうしたらよいのか、を考えてみましょう。 

 

 まず大前提として、株価が大きく下落する中でも、積立投資を続けることです。そもそも2割、3割と値下がりすると耐えきれなくなり損失覚悟で売ってしまう人もいると思います。しかし、資産運用で大切なのは長期視点です。値下がりの時にコツコツ買い続けることで、将来的に株価が回復した際に利益を取り戻せる可能性があります。 

 

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 また、「S&P」や「オルカン」といったインデックス型の商品一辺倒だった方は、これを機に再考してもよいかもしれません。先ほど、これまでマーケット全体が右肩上がりになってきたのは、過剰流動性を背景に市場全体に資金が流入していたからだと説明しました。マーケット全体が上昇するので、投資する銘柄を厳しく選別しなくても、そこそこのリターンを確保できたわけです。 

 

 しかし、イスラエルによるイラン攻撃でマーケットが急落したような、リスクを取るのに慎重になる局面では、投資家による銘柄選別はより厳しくなります。インフレが続いていることで世界的に金利は高い状態で、マイナス金利を解除した日本では日銀が利上げのタイミングを見計らっています。 

 

 過剰流動性を背景に加熱していた株式マーケットは転機を迎えており、投資家の選別眼が鋭くなることで、銘柄ごとのパフォーマンスの差が開いていくことが予想されます。 

 

 つまり、S&Pやオルカンといったインデックス型の投資信託より、企業を独自に選別して投資しているアクティブ型の投資信託で、より高いパフォーマンスを発揮するケースが目立つようになってくるはずです。「S&Pやオルカンに投資しておけば安心」という世界は、そろそろ終わると思います。 

 

■ 新たな資産運用会社、波乱の出発 

 

 私たちが設立した独立系の資産運用会社「なかのアセットマネジメント」も、こうした考えに基づきアクティブ型の投資信託を手掛けます。日本株と世界株の2つのファンドで、4月25日に新規設定し、19日から楽天証券で募集を始めました。まさに、イスラエルがイランに報復攻撃をした日で、波乱の船出となりました。 

 

 昨年6月、セゾン投信の会長の座を追われてからほぼ10カ月で、新たなファンドをようやく立ち上げることができました。スピードを重視してきたつもりですが、当初のもくろみより数カ月遅れました。手続き上の慣習に阻まれたのが要因です。 

 

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 政府は資産運用立国を掲げ、新たな運用会社の参入をうながす方針を示していますが、高い参入障壁は依然として残っているわけです。 

 

 それでも、当初思い描いていた理想の形にかなり近い資産運用会社を作ることができたと思います。 

 

 最もこだわったのが、独立性です。そもそも、私がセゾン投信を追われたのは、親会社であるクレディセゾンの意向が強く働いたからでした。私が目指していた顧客本位の資産運用という経営方針と、規模の拡大を急ぎたい親会社の方針が、相容れなかったのです。 

 

 私の経営方針を信頼して大切なお金を預けてくださった個人投資家の皆様に対しては、長期の資産運用という責務を全うできずに大変申し訳なく思っています。こうした事態を二度と起こさないためにも、なかのアセットマネジメントでは私が過半数の議決権を持ちつつ、私の方針を理解してくださる株主を募りました。 

 

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 最終的に主な株主は、スパークスグループ、第一生命ホールディングス、ソニーフィナンシャルグループの3社。取締役会の体制は、私を含む社内から3人、社外からはソニーフィナンシャルグループ社長兼CEO(最高経営責任者)で元金融庁長官の遠藤俊英氏ら4人を招きました。社外取締役が過半数を握ることで、ガバナンスを強力に効かせます。 

 

 これにより、顧客本位の資産運用を徹底したいという私の理念を実現できると考えています。資産運用会社が親会社の意向に左右されやすいという業界が抱えている課題に対して、1つの解を示せたと自負しています。 

 

 マーケットが大揺れの中での出発となりましたが、危機に負けずに日本に本格的な資産運用を普及させる牽引役を果たしていきたいと、身を引き締めております。今後の連載もぜひ、楽しみにしてください。 

 

中野 晴啓 

 

 

 
 

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