( 163312 )  2024/04/25 01:30:38  
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獨協大学の森永卓郎教授は、日本の経済において財務省と日銀の立場の違いについて指摘し、日本経済の不安定化について警告している。

一方、財務省が進める「増税」路線には、見えない増税が盛り込まれ、具体的には「子育て支援金」などが挙げられる。

子育て支援金に関する議論では、負担が労使折半になるが、経営者の負担が労働者に転嫁される可能性も指摘されている。

このようなステルス増税により、現役世代の負担が増加し、少子化対策の名目で増税が進む可能性が懸念されている。

(要約)

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森永卓郎氏 

 

【ニュース裏表 田中秀臣】 

 

最近、獨協大学の森永卓郎教授とネット配信の討論番組で同席した。森永教授は「財務省にとって『増税は勝ち』で、日銀にとっては『利上げが勝ち』」と日本経済の最大の問題点を的確に指摘していた。さすがである。すでに日銀は3月にマイナス金利をやめて利上げ路線に転じた。秋口には追加の利上げが市場関係者の間で噂されている。日本経済を不安定化させる動きだといえよう。 

 

【表】「4人家族で1カ月に必要な金額」京都総評の試算と内訳 

 

財務省の「増税」路線の方は手が込んでいる。いわば見えない=ステルス化された増税を財務省は生み出そうとしている。その典型が、「少子化対策は待ったなしの瀬戸際である」という岸田文雄首相の危機意識を背景にした「子育て支援金」だ。 

 

「子育て支援金」は、少子化対策の財源を、健康保険料に上乗せして徴収しようという制度設計だ。政府の説明はコロコロ変わり、初めは「実質負担額はゼロ」や「国民1人当たり平均で月500円の負担」を強調していた。だが国民には赤ちゃんや児童まで含まれている。それを指摘されると今度は、世帯収入による負担額を渋々公表した。それによると2028年度で、年収600万円世帯で月1000円の負担になる。 

 

このケースでは独身者が想定されているので、独身者にはつらい負担になるだろう。また共働き世帯だと平均年収が800万円なので、単純に計算すると負担額は年間1万6200円になる。働く世代には追加的な負担になり、子供を新たに産みたい、育てたいという動機付けを経済面から低下させる可能性があるだろう。 

 

なお、子育て支援金の負担は労使折半になるが、経済学の初歩からいえば、この経営者側の負担は労働者側に転嫁可能である。もしそうなれば、共働き世帯で年間3万2400円の負担増だ。現役世代はただでさえ税と社会保険料の国民負担率が50%近くあり、森永教授いうところの「五公五民」状態だ。現役世代への負担増は限界にきている。 

 

しかも「子育て支援金」の負担は健康保険料で徴収するという。健康保険は病気のリスク分散を図る枠組みであり、子育て支援とは関係ない。つまり取れそうなところから取っているだけだ。これは財務省の悪知恵だろう。こんなデタラメがまかり通れば、どんな理屈でも増税が可能になる。 

 

 

いま、消費税について減税を主張しても「社会保障の財源に響く」と否定されている。同じことが、今後「子育て支援の負担を減らすべきだ」といっても「健康保険制度に響く」とされてしまうかもしれない。そして、効果があるかどうか分からない少子化対策の名目で、どんどんステルス増税が増えていく可能性がある。 

 

まさに亡国ものの「増税」法案である。残念ながら衆院を通過してしまったが、断固、見直すべきものだ。(上武大学教授・田中秀臣) 

 

 

 
 

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