( 163894 )  2024/04/26 15:53:33  
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和歌山県町村会は、自民党の二階俊博氏の後継として、二階氏の公設第一秘書である伸康氏に出馬を要請した。

伸康氏は出馬要請後に熟考する姿勢を示し、地元の支援者からも期待されている。

二階氏の長男で秘書を務める俊樹氏も名前が挙がっていたが、町村会からの要請で現時点では伸康氏が一番手とされる。

伸康氏の出馬について、世襲批判があるかもしれないが、町村会が独自で要請したという点を強調し、二階氏の後継者として伸康氏を支援する理由を述べている。

(要約)

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町村会から出馬要請を受けた二階伸康氏(左から2人目)。右隣が会長の岡本章・九度山町長 

 

自民党の二階俊博・元幹事長の体調不良がささやかれる中で、地元の和歌山県町村会は4月24日、二階氏の三男で、二階氏の公設第一秘書を務める伸康氏に出馬を要請した。 

 

【写真】二階氏の後継に名前があがっていた長男・俊樹氏 

 

 24日朝、和歌山県印南町役場の町長室で、二階伸康氏への出馬要請は行われた。 

 

 伸康氏が町長室に現れると、待ち受けていたのは、町村会会長である岡本章・九度山町長、同副会長の日裏勝己・印南町長、西前啓市・古座川町長の3人。 

 

 岡本氏が「出馬要請」と書かれた表彰状を思わせる書面を手に、 

「次期衆議院議員選挙にあたり、和歌山県町村会は町村長の総意により貴殿に出馬要請いたします」 

 と読み上げ、伸康氏に手渡した。当初、こわばった表情だった伸康氏だが、書面を手渡されると、嬉しそうな笑顔を見せた。 

 

 その後、記者団に囲まれた伸康氏は、 

「重く受け止め、熟慮します」 

 と、立候補を明言こそしなかったが、 

「まだ父(二階氏)には相談していない。ただ衆議院は常在戦場で、長く回答に時間はかけられない」 

 と前向きに答えた。周囲には地元の支援者が待ち構え、拍手が沸き上がった。 

 

 二階氏の後継としては、やはり秘書として地元を取り仕切る長男、俊樹氏の名前もあがっていた。俊樹氏は2016年におひざ元、御坊市長選に出馬したが大差で落選。当時、筆者は週刊朝日で取材したが、俊樹氏について「上から目線」だという声を地元ではよく聞いた。 

 伸康氏は、そのことを知ってか知らずか、記者団に対しても低姿勢で、何度も頭を下げていた。 

 

 和歌山県は次期衆院選で現在3つある小選挙区が2つに減る。二階氏は新しい和歌山2区から出馬を予定していたが、自民党の裏金問題で次期衆院選に出馬しないことを表明。だれが後継候補になるかが注目されていた。 

 

 和歌山県内の21町村は、すべてがこの新2区となる。その町村会から出馬要請されたということは、実質的に伸康氏が二階氏後継の一番手になったといえる。 

 

 この出馬要請を主導したとみられているのが岡本氏だ。 

 

 自民党のある和歌山県議は岡本氏について、「二階氏が国政のキングメーカーなら、岡本氏は和歌山のキングメーカー」だと評する。 

 

「2022年の和歌山県知事選では、先に世耕弘成参院議員が中心になって、総務官僚を自民党で推薦する話を進めていた。それを二階氏と岡本氏がタッグを組み、国民民主党など野党の衆院議員だった岸本周平氏を町村会が推し、自民党推薦をひっくり返し、一気に知事に押し上げたのは有名な話です」(前出の自民党県議) 

 

 伸康氏の記者会見の日、“キングメーカー”の岡本氏を直撃した。 

 

 まず、伸康氏への急な出馬要請についてはこう話す。 

 

「和歌山と国とのパイプがなくなると心配でした。6月に衆院選があるんじゃないかとニュースにもなっており、すみやかに二階先生の後継のメドをつけなければと思った」 

 

 新和歌山2区からは、伸康氏だけではなく、前述のように二階氏の長男、俊樹氏の名前もあがっていた。また、裏金事件で離党勧告の処分を受け、離党した世耕弘成参院議員も、衆院にくら替えして参戦するといわれてきた。なぜ、伸康氏だったのか。 

 

「俊樹氏や世耕氏も新和歌山2区から出馬したいという話は知っている。それもわかった上で伸康氏に、和歌山町村会は総意で決めた」 

 

 その理由についてはこう話す。 

 

「伸康氏は、二階氏が国の中枢で活躍していた10年ほどですか。ずっと横でそれを見てきた。その経験がある。国のこともわかるし、和歌山県御坊市で育ち、和歌山のことも十分わかっている。それと46歳という若さ。この2つです。俊樹氏を、という人も町村会にはいたが、2人をケンカさせるのはダメです。家族なのでそちらで話し合いをしてくれとすでに伝えています。まさか俊樹氏が伸康氏を押しのけて出馬するなんて強引なことはしないはずだ」 

 

 

■「町村会が要請したので世襲と言い切れない」 

 

 だが、伸康氏が出馬となると当然、世襲批判が浮上してくることは明白だ。これについては、 

 

「私は二階氏が引退を表明してから会うことも連絡もしていない。二階氏が伸康氏を、と言えば世襲だが、町村会が独自で人物本位で伸康氏へ出馬要請を出したので、そうとは言い切れない」 

 

 と、あからさまな世襲ではないという理屈を語り、こう続ける。 

 

「和歌山のために尽くしてきた政治家である、二階氏。その二階ブランドはとても重く、選挙を有利に戦うにはそこも必要だ。二階さんも世耕さんもいなくなり、頼み事ができる国会議員がいないので、我々の手で作り上げたい、それが伸康氏だ」 

 

 では、なぜ世耕氏ではないのか。 

 

「町村会で世耕氏の名前はあがっていない。1人も聞いていない。衆議院にくら替えしたいと、前回の衆院選も(二階氏の地盤の和歌山3区から)出そうになった。世耕氏は首相になりたいと、自分のことを考えて、新和歌山2区に出たいんですよね。個人のこと、私のことで、大義がない。和歌山県のこと、日本のことを考えているのか疑問だ。世耕氏が自民党を辞めた時に電話をもらいました。その時ハッキリと(裏金事件を)『秘書のせいにしてぬくぬくとやって、本来は議員辞職すべきじゃないか』と言ったら、世耕氏から反論がなかった。それに比べて二階氏は責任をとって(次の選挙に)いかないと決断した。政治家として一流だ」 

 

 とはいえ、岡本氏も世耕氏が衆院選に出馬するのではないかとみており、 

「伸康氏と世耕氏の戦いとなったらみなさん(メディア)は面白いでしょう。でも、こちらは組織をあげて伸康氏を応援する」 

 と語った。 

 

■世耕氏支持者は「勝ち目もある」 

 

 世耕氏の支持者によると、無所属になった世耕氏も、活発に動き始めている。この支持者はこんな話をする。 

 

「二階氏という重しがなくなり、(世耕氏は)待望のくら替えのチャンス。こっそりと和歌山入りして、二階氏の地元などでも支援者と会合を開いています。無所属なので世耕氏にストップをかけられる人はいません。離党勧告を受けた自民党にいつ復帰できるかメドも立たない。それなら衆院選で勝負し、勝って復党する意向です。二階氏の威光が政界引退でぐっと落ちてきたので、『世耕氏を支援しやすくなる』という有権者もいますね。岡本氏は目立つのが好きで、メディアの前では21町村の首長が伸康氏で全員一致と言っていますが、こちら側で聞くと『伸康氏の出馬要請は聞いていない』という首長もいる。世耕氏を支援したいと言っている人もいます。それに伸康氏と俊樹氏の不仲は地元では知られている。世耕氏と俊樹氏が組み、二階家が分裂する可能性も十分あります。衆院解散となれば世耕氏は出るはずで、勝ち目もある」 

 

「ドン」二階氏不在の中、新和歌山2区は伸康氏、俊樹氏、世耕氏の争いで混沌としてきた。 

 

(AERA dot.編集部・今西憲之) 

 

今西憲之 

 

 

 
 

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