( 164334 )  2024/04/27 15:28:02  
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東京都知事の小池百合子のカイロ大学卒業疑惑について、元側近の告発が再燃している。

元側近の告発には事実と違う部分があり、特に海外へ行ったとされる元新聞記者の話は完全に嘘であることが明らかにされた。

報道機関は事実確認の電話をすべきだったと指摘されており、信頼性を重視するメディアは修正時には読者に明記していることが多い。

また、ファンタジー小説『女帝』の記述が印象操作として批判されている。

一方で、小島氏の行動が外部人材としての問題を浮き彫りにする一例であり、政治的な公平性の視点から見る必要があるとの指摘もされている。

(要約)

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インタビューに答える小池百合子・東京都知事。 2024年1月4日撮影 写真:朝日新聞社/時事通信フォト 

 

 小池百合子東京都知事のカイロ大を卒業したかを巡る疑惑が再燃している。小池知事の元側近の告発は正しいのか、徹底検証する。(イトモス研究所所長 小倉健一) 

 

● 一度もエジプトに行ったことはない 「完全にウソの話」 

 

 小池百合子東京都知事のカイロ大を卒業したかを巡る疑惑が大きな話題となっている。月刊文藝春秋(5月号、文藝春秋デジタルでは4月9日掲載)は<「私は学歴詐称工作に加担してしまった」小池百合子都知事 元側近の爆弾告発>と題して、小池知事の元側近であり、元都民ファーストの会・事務総長で弁護士の小島敏郎氏の告発を掲載している。 

 

 記事は「小池氏がカイロ大を卒業している」という言葉を信じた小島氏が、卒業証書をメディアに公開したものの、学歴詐称疑惑報道が止まらないことに困っていた小池知事のために、「カイロ大から声明文」を出してもらってはと助言したことを明らかにしている。そこで声明文案を作る際に中心的な役割を果たしたのが、小島氏が「小池さんのブレーンの一人」「私とも旧知の間柄」とする匿名の元ジャーナリスト「A」だ。 

 

 まず、この小島氏の告発には、明確に事実と違う部分がある。 

 

 <その際、A氏はこんな話も荒木さん(※都民ファーストの会・前代表の荒木ちはる氏)から聞いています。小池知事の特別秘書の夫に、元新聞記者の方がいます。声明文が出る前、彼は小池さんの密命を受け、コロナ禍のなかカイロまで行ったというのです。何か工作でもしようと思ったのでしょうか。しかし、特段の成果もなく帰国。それで最終的に私やA氏にお鉢が回ってきたわけですが、荒木さんは、「何をしに行ったんだか」と、呆れた感じで言ったそうです> 

 

 これは完全にウソの話である。匿名の元ジャーナリストAがまた聞きで聞いてきた話を、本人と特定できる形で書いてある。元新聞記者は知り合いなので、この記事を読んだ後に、電話をして事実確認をしたのだが、そもそも元新聞記者は、これまで一度もエジプト(カイロ)に行ったこともなければ、コロナ禍で海外へ行くこともなかったと筆者に証言している。 

 

 さらには、月刊文藝春秋に告発記事が掲載された後に、週刊文春の記者から電話がかかってきたので、そのことを伝えてあるという。週刊文春の記者は、事実確認をして間違っていることが明らかになった後で、記事を消す処置を取らないのだろうか。 

 

 

● 記事を書く前に 事実確認の電話をすべきだった 

 

 一般読者がこれを読んで感じるのは「この元新聞記者ってのは、交渉人気取りでカイロへ行っておいて何もできなかったダメなやつ」ではないだろうか。元新聞記者はそんなに怒ってないようだったものの、文藝春秋が元新聞記者にどんな恨みを持っているのかわからないが、さすがにこの記述をするなら、裏取りをすべきだ。 

 

 そもそもを言えば、文藝春秋は元新聞記者の連絡先を知っているわけで、事実確認など簡単にできるはずだし、電話一本入れてから記事にしてほしいところ。 

 

 ものすごい大きな役割を果たしている元ジャーナリストAが誰なのかが誌面からは読者にさっぱりわからない一方で、元新聞記者は誰なのかが特定できるように書いてある。元新聞記者の名誉のためにも、デジタル版だけでも、記事を消すべきではないのだろうか。 

 

 海外でも、信頼性を重視するメディアは、修正時には読者に明記しているところが多い。文藝春秋は「~感じで言ったそうです」という伝聞調であれば、何を書いてもいいと考えたのだろうか。 

 

 例えばだが、「元ジャーナリストBは元文春記者からこんな話を聞いています。文藝春秋の編集長が元記者に<おれ、いま、めっちゃ不倫をしてる>みたいな感じで言ったそうです」って書かれたら、いやだと思わないのか。この報道姿勢は、よくないと思う。 

 

● 文藝春秋発行の 『女帝』での印象操作 

 

 実は、この小島氏の適当すぎる手記に登場するAが私なのではないかと複数メディアから問い合わせを受けた。 

 

 また、ファンタジー小説として面白かった『女帝』(文藝春秋)にも、私について<この本(小池知事の特別秘書が書いた『小池百合子「人を動かす100の言葉」』という本)の出版元はプレジデント社である。同社には小池の元秘書が編集幹部におり、小池との距離が非常に近い。都知事選挙戦の最中に学歴詐称の噂を、小池自らが否定するインタビュー記事が掲載されたのも、『プレジデント』(二〇一六年八月十五日号)であり、都知事になった人気絶頂の小池が、まっ先にエッセイを連載したのも『プレジデント』である>と書いてある。 

 

 これだけ読むと、何か世論誘導に加わったのではないかという印象を受けると思うが、当時のこの小池自らが否定するインタビュー記事のタイトルは、『カネ、未婚、学歴詐称 「小池百合子にぶつけた『嫌な質問5』」』だし、ひたすらタイトル通りに小池知事に嫌な質問をぶつけている。どうしてこれが世論誘導なのかさっぱりわからない。 

 

 その後、人気絶頂の小池氏の連載がプレジデントで始まったのは事実だが、人気絶頂の橋下徹氏の連載、人気絶頂の菅義偉氏の連載、性加害問題で注目が集まっていた伊藤詩織氏の連載も『まっ先』に(独占で)始めたのは私だ。 

 

 このファンタジー小説『女帝』の記述こそ、印象操作だろう。文藝春秋も小池百合子氏の著作を発行しているのに、なぜプレジデント社だけが批判の文脈で出てくるのか、全く理解不能だ。ただ、『女帝』は国民がドラマ「水戸黄門」並みに楽しめるよい小説(水戸黄門同様に、主人公の名前は正しい)だと思うので、ゴールデンウイークなどに読んではいかがだろうか。全国の書店で絶賛発売中だ。 

 

 

● 文春編集部が望む ファンタジーだ 

 

 本当に、私自身、文藝春秋の報道には苦労してきた。他にも、週刊文春では、維新の吉村洋文氏や橋下徹氏を総理になったらどうかという記事が掲載されたことを指して、記事を書いたジャーナリストの麹町文子氏の正体が実は私なのではないかという謎のコラムが掲載されたこともあった。 

 

 文春編集部へ抗議文を入れたのだが、文藝春秋の新谷学氏と、当時のプレジデント社の社長によって千代田区麹町にあるホテルの個室内で、手打ちがなされ、本件はうやむやになってしまった。 

 

 麹町氏は、他にもれいわの山本太郎氏や公明党の山口那津男氏が総理になったらという記事も書いていて、文春コラムによれば、(麹町文子である)私が維新の回し者だという書き方だったが、こちらも文春編集部の望むファンタジーが描かれてしまったということになる。 

 

 文春の編集部の人に聞いたが、私がプレジデントを辞めたときには、当時の編集長が「小倉氏は、東京地検特捜部が経営者を逮捕した『テクノシステム』(小池知事に関係があったとされていた)絡みで辞めるしかなかったのでは」と話していたらしい。風評被害を生んでいるとしか思えない。 

 

 物を書いて生きている私にとって、文春に批判めいたことを書くのは経済的メリットが全くないが、事実は事実として書き残しておかないと、風評被害が起き続ける可能性がある。文春とは今後も緊張関係が続くのかもしれないが、文春一人勝ち時代にそういう書き手がいてもいいのであろう。いずれにしろ、麹町文子氏も元ジャーナリストA氏も、私ではないことは強調しておく。 

 

● 橋下徹が指摘する 「外部人材の批判的言説は要注意」 

 

 さて、いい加減な発言を繰り返す、小島氏の話に戻りたい。 

 

 この記事を読んで、読者はいろいろな思いを持つのだろう。 

 

 橋下徹氏は、X(4月10日)で<【かつての外部人材の批判的言説には要注意】事実は今後明らかになるだろうが、政治的な公平性の視点で見る必要もある。首長が外部人材を活用すると、その後両者が対立関係になることが多々ある。外部人材が自分の意見こそ絶対的に正しいと思い込み、それを採用しない首長を攻撃するのだ。小島氏は築地市場の移転問題や、今の神宮外苑再開発について小池さんと見解が対立していた。外部人材の意見は視野が狭かったり、実現不可能な空論であることも多い>と指摘している。 

 

 小島氏は記者会見で都民ファの役職をクビにされた腹いせではないかと指摘され、自分から役職を辞めたという弁明をしていたが、実際に都民ファの議員にその点について尋ねると、「ことごとく都民ファや小池知事の政策の方向性とぶつかるようになり、みんなの総意で辞めてもらった」という証言を得た。これが事実なら、小島氏は腹いせで手記を出した可能性が高まる。 

 

 過去には、築地から豊洲への市場移転でも、荒唐無稽な築地残留(再整備)案を出して関係者の多くから失笑を買っていた。明治神宮外苑の再開発計画にも反対をしていたようだが、これも誤りだ。 

 

 明治神宮外苑の再開発とは、緑地面積は増え、老朽化したスタジアムはバリアフリーが導入され、また民間資金で行われる計画だ。イチョウ並木も維持されることになった。そして、ここで得た収益をもって、明治神宮の伝統や文化を維持することになる。環境問題も含めて、素晴らしい再開発なのだが、小島氏の目を通すと「アウト」ということのようだ。都民ファは、小島氏をクビにして大正解だったということだ。 

 

小倉健一 

 

 

 
 

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