( 165266 )  2024/04/30 01:25:27  
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4月28日に行われた補欠選挙で自民党が3連敗を喫し、国民の政権交代への期待が高まっていることが報じられている。

世論調査では次期衆院選で政権交代を望む人が52.8%に達し、永田町に揺れが広がっている。

岸田首相の辞任を避けるのは難しい状況とされており、今後の動向が注目されている。

(要約) 

 

岸田首相の政権運営については、派閥に低頭し無派閥を冷遇するなど、自爆行為が目立ち、派閥問題によって窮地に陥った。

経済政策では増税を推し進め、国民の負担を増やした増税モンスターと呼ばれる状況を招いた。

今後は政権の動向や岸田首相の対応が注目される。

(要約)

( 165268 )  2024/04/30 01:25:27  
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Photo:JIJI 

 

 政権交代が現実味を帯びてきた――。4月28日の投開票が行われた衆議院補欠選挙で自民党が3戦「全敗」。裏金問題への国民の不満が改めて浮き彫りとなった。さらに、ある世論調査によると、過半数を超える52.8%が次期衆院選で「政権交代」を望んでいるという。今、永田町に激震が走っている。もはや、岸田首相の退陣は避けられないのではないか。(イトモス研究所所長 小倉健一) 

 

● 「政権交代を期待」が過半数超! 永田町に激震 

 

 いよいよ、岸田文雄首相に引導が渡される日がやってくることになる。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が4月20日と21日に実施した世論調査で、次期衆院選後の政権について尋ねたところ、「政権交代を期待」が52.8%に上り、「自民党中心の政権の継続を期待」の40.1%を上回ったのだ。 

 

 4月23日の産経新聞の朝刊1面には「次期衆院選で政権交代『期待』52%、」という見出しが、大きく掲載され、永田町には衝撃が走った。4月25日、岸田首相の側近とされる自民党の木原誠二幹事長代理が党の会合において、「今、自民党は非常に厳しい状況だ。政権交代が起きてもおかしくない」と述べた。 

 

 産経の同調査で、《岸田首相にいつまで続けてほしいかの質問では「9月の自民党総裁任期まで」が最も多い43.2%。「国会が終わる予定の6月ごろまで」が25.0%、「すぐに交代してほしい」は20.7%で、「9月以降も続けてほしい」は8.2%にとどまった》とある。 

 

 補選が全敗してもすぐには辞めることはせず、どこかの段階で、次の総裁選への出馬を見送ると発表することになるのだろう。 

 

 長いだけで何の中身もない首相在職日数を増やすことだけ、首相の座に1日でも長く居座ることだけが、政策がすべてオワコンと化した岸田首相の目的となっていることから、9月まで在職日数を延ばせるなら、本人は喜んで了解することだろう。 

 

 さっさと退陣をしてほしいところだが、国民の声が届かない状態は、少なくとも9月まで続くことになりそうだ。 

 

 

● 派閥に低頭、無派閥は冷遇 自爆した岸田首相の政権運営 

 

 「国民の声が届かない」とは、2021年の自民党総裁選で、岸田首相が、当時の首相・菅義偉氏の政権運営を批判する文脈で使い始めた言葉だ。菅政権を打倒しようとした岸田首相は、総裁選を前にして「菅首相(当時)は、説明不足であり、発信が大事だった」と繰り返し発言した。 

 

 総裁選に当選直後、自民党総裁としての最初のスピーチでも、花束と共にエールを送った菅氏を横に立たせて、「多くの国民が政治に声が届かない、政治が信じられないといった切実な声を上げていた。私は、我が国の民主主義の危機にあると強い危機感を感じ、我が身を顧みず、誰よりも早く総裁選に立候補を表明した」とぶち上げたのだ。 

 

 同じ党内の人間に対して、どれだけひどい侮辱であったろうか。野党やメディアが書き立てるなら理解はできるが、勝負が決した後にもかかわらず、自分が追い出した相手に、お前には国民の声が届かないのだ、とぶった斬ったのである。岸田首相は、菅前首相にどれだけ無礼なことをしたか、理解できるだろうか。 

 

 「国民の声が届かない」というレッテルを、岸田氏は首相就任を経て「聞く力」という言葉に変え、繰り返し世論を煽(あお)ってきた。底意には、安倍・菅政権が国民の声が届かない政権だったという岸田氏の反省があったわけだ。 

 

 岸田首相の政権運営は、明確であった。派閥の領袖にひたすら頭を下げ、意向を汲み、怒らせないように、敵にならないように細心の注意を図る一方で、無派閥議員は徹底的に冷遇してきた。 

 

 派閥に力を与えていった岸田首相が、派閥の裏金問題で窮地に陥ったのは大きな皮肉であろう。自爆的に自分の派閥を解散したり、自らが先頭に立って派閥問題を解決しようというパフォーマンスを見せたものの、派閥は名前は消えたもののそのまま残っているし、自民党が裏金問題を今後起こさないと信じている有権者など、自民党の支持層も含めていないのではないか。 

 

 

 歴史を振り返っても、自民党あるところに裏金あり、裏金あるところに自民党ありである。政権交代がほとんど起こらない日本では、権力は自民党に集中する。集中すれば腐敗は起きるのである。 

 

 2018年に学術雑誌「Journal of Public Economic Theory」に掲載された「透明性は政治腐敗を減らすか?(Does transparency reduce political corruption?)」によると、政治腐敗を防ぐためには、以下の3つが必要だ。 

 

 1、徹底した透明性 

2、腐敗した政治家を選挙で落とす(腐敗が割に合わないものだと理解させる) 

3、補助金や規制など腐敗を生む政策をさせない 

 

 透明性もなく、政権交代もなく、補助金と規制まみれの日本で、腐敗が減ることなどあり得ない。世界一透明性の高いルールをつくる一方で、裏金議員を選挙で落とし、補助金や規制のなるべくない日本を作り上げていくほかない。 

 

● 国民負担を増やし続けた 増税モンスター 

 

 岸田文雄首相のやらかしてきた政策は枚挙にいとまがない。「令和版所得倍増計画」「金融所得課税の強化」「健康危機管理庁」……。岸田氏が党総裁選で掲げた「目玉」は、ことごとく封印されている。 

 

 筆者は、安保3文書改定については、評価をしているが、これとて、岸田首相の実績とカウントするというよりも安倍・菅政権の置き土産であり、既定路線を追認したということだ。岸田首相が強い思いをもってやったとも思えない。 

 

 「異次元の子育て政策」で莫大な税金を投入したものの、結果はご存じの通りだ。政策決定の前から、学術ベースで、子育て支援は少子化改善に結びつかないことは、わかりきっていた。それにもかかわらず、「やった感」「対策してる感」という岸田首相のメンツが優先されたわけである。政策効果のないところにお金を放り込んだら、待っているのは国民負担増、つまり増税である。 

 

 増税については、さすが「増税メガネ」と揶揄されたほどにやりたい放題であった。森林環境税、配偶者控除改定、インボイス制度、社会保険料の増税…。 

 

 岸田首相は、自ら問題をつくり、その解決のために、税金を上げたのである。なお、国民負担率が上昇(=増税)すると、経済成長率が低下することは、日銀(2000)や第一生命経済研究所(2023)の研究で明らかになっている。国民負担を増やしたら経済は冷え込むということだ。 

 

 結果、岸田政権がもたらしたものは、こうだ。 

 

 

 実質賃金は23カ月マイナスとなった。名目がいくら上がっても、物価が上がっては意味がないし、税金(社会保険料含む)が上がっては手取りが減るのである。こんな当たり前のことがずっと理解できずに、社会保険料をまた上げていく、不思議な政権である。 

 

 国民負担率は過去最高を更新した。GDPは4位に転落、この円安傾向でさらに5位のインドにも抜かれる可能性が高い。国民のお金をばらまいて相手国の歓心を買うという岸田外交唯一のテクニックも、このまま日本がただの貧乏国になっては、使えなくなる。 

 

 2021年から生活保護申請は3年連続増加、エンゲル係数は40年ぶりの高水準になった。総務省が発表した家計調査における「消費支出」は、12カ月連続でマイナスだ。 

 

 それでいて、「私は増税していない」といまだに主張をしているのだから、国民も舐められたものだ。むしろ、何の意味もない政策で莫大な税金を蕩尽し、国民負担を増やし続けたこの政権が、よくもこんなに長く続いたものだと感心する。 

 

 日本人の寛容な心がこのような増税モンスターを生んでしまったのであれば、選んだ国民も少し反省しなくてはいけないということなのだろう。 

 

小倉健一 

 

 

 
 

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