( 170698 )  2024/05/15 17:50:33  
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広島高裁松江支部は、島根原発2号機の運転差し止め仮処分を認めない決定を下した。

決定では、放射性物質の放出や安全性について異常なリスクがないと指摘された。

中電は安全性や災害対策について主張し、決定を受けて安全対策工事を進めるとコメントした。

一方、住民側は不満を示し、島根県知事は必要な安全対策を求めた。

島根2号機の問題は20年以上前から続くもので、今回の決定に対し住民側は違法であると主張している。

(要約)

( 170700 )  2024/05/15 17:50:33  
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島根原発2号機差し止め仮処分を却下する決定を受け、「司法は住民を見捨てた」などと掲げる住民側=15日午前10時5分、松江市母衣町、広島高裁松江支部 

 

 中国電力が12月の再稼働を目指す島根原発2号機(松江市鹿島町片句)の運転差し止めを住民が求めた仮処分で、広島高裁松江支部(松谷佳樹裁判長)が15日、差し止めを認めない決定を出した。島根原発で運転差し止めの仮処分判断は初めて。同支部は「異常な水準で放射性物質が原発敷地外に放出される重大事故の具体的な危険性があるとはいえない」と指摘した。 

 

【表】争点と住民、中国電力の主張 

 

 決定書によると、中電が設定した最大加速度820ガルの基準地震動(耐震設計の目安となる地震の揺れ)の評価については、中電が保守性を重ねているとした上で「原子力規制委員会の審査に過誤、欠落があるともいえない」と言及。1月の能登半島地震を受けて住民側が主張した避難計画の不備に関しては「(主張の前提となる)重大事故が発生する具体的危険性について証拠を伴う主張がない」として退け、避難計画の内容や実効性に関しては触れなかった。 

 

 このほか争点は、敷地と宍道断層の近さや、三瓶山(大田市)の大規模噴火による敷地内降灰のリスクなどで、いずれも中電側の判断には合理性があるなどとした。 

 

 決定後、中電は「地震および火山事象に対する安全性の確保や原子力災害対策などについて、裁判所に丁寧に主張してきた。妥当な決定をいただいたものと考えている。引き続き安全確保を第一に安全対策工事を進めるとともに、原子力規制委員会が行う使用前確認にも適切に対応していくことで、地域の皆さまに安心いただける発電所を目指す」とのコメントを出した。 

 

 住民側の海渡雄一弁護士は「極めて違法、不当な決定だ」と話し、原告団長を務める芦原康江元松江市議は「とても残念でならない。長い間、この原発の差し止めを求めて裁判を続けてきたが、悔しいの一言だ」と述べた。 

 

 島根県の丸山達也知事は「当事者ではないので、事情を承知していない。県は引き続き中電に対し、必要な安全対策を進めるよう要求し、原子力規制委員会にも厳格な審査と確認を求める」とのコメントを発表した。 

 

 島根2号機の差し止め訴訟は、島根3号機増設時の調査で確認された宍道断層の安全性評価に問題があるとして住民側が1999年4月に提訴。2010年5月に松江地裁が請求を棄却した。住民側は控訴した。 

 

 控訴審は係争中で、判決確定までに時間がかかるため、住民側が23年3月に仮処分を申し立てた。高裁は24年2月までに双方の意見を聴く審尋手続きを非公開で計4回実施した。住民側は稼働によって人格権が侵害されると主張。中電は危険性の具体的な指摘がないと反論し、申し立て却下を求めていた。 

 

 島根2号機は、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型。中電は8月の再稼働を計画したが、安全対策工事の遅れで12月に延期した。島根原発は全国で唯一、県庁所在地に立地し、避難計画の策定が必要な30キロ圏に2県6市の計約45万人が暮らす。 

 

 

 
 

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