( 171318 )  2024/05/17 15:20:41  
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政府がある国会会議で、天皇の退位に関する特例法に基づく報告を受け、皇族の数や皇位継承に関する課題などについて議論が行われた。

現在の皇族の数が少なく、皇位継承資格のある男性皇族が減少していることから、女性皇族の身分保持や男系男子の養子縁組などの案が議論の焦点となっている。

立憲民主党や自民党など、各政党はそれぞれ異なる見解を持ち、女性宮家や男系男子の養子問題などについて賛否が分かれている。

議論を通じて、皇室に関する重要な方針が決定されることが期待されている。

(要約)

( 171320 )  2024/05/17 15:20:41  
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FNNプライムオンライン 

 

国会では17日午後、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議」が初めて開催される。 

 

【画像】皇族の女性は結婚すれば皇族を離れる事に 

 

この会議は、2017年に当時の天皇(現在の上皇さま)の退位に関する特例法が成立した際に議決された附帯決議で「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」について政府が検討を行った上で結果を国会に報告することが盛り込まれ、2021年末に政府有識者会議の検討結果がまとまり、翌年国会に報告されたのを受け、各党各会派がこの課題について議論するためのものだ。 

 

端的に言えば、現在、皇族の数が減り、とりわけ皇位継承資格のある男性皇族の減少が喫緊の課題となっている中、皇族数の確保策を軸に、安定的に皇位継承を可能とするための策について話し合う会議だ。ただ、2017年の退位特例法成立から実に約7年、政府有識者会議の報告からも2年以上が経過してようやく初会合に至ったことには、もっと早く議論すべきだったとの声も少なくない。 

 

もっとも、自民党が岸田政権のもとで「先送りのできない課題」として、麻生副総裁をトップとした懇談会を開催して所見をとりまとめるなど重い腰を上げ、ようやく各党の議論の場が設けられるに至ったことは前進だと言えそうだ。17日の会議は衆院議長公邸で行われ、衆参両院の正副議長、各党各会派の代表者、そして政府を代表して林官房長官が出席する。 

 

では、どんなことが議論の焦点になるのか。政府の有識者会議や与野党も「静謐な環境のもとで議論を深め、国論を二分するようなことはすべきではない」という考えで一致していることも踏まえ、冷静な視点で論点を検証したい。 

 

最大の焦点は、政府の有識者会議が皇族数の確保策として示した「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する」案と、「皇統に属する男系男子を養子縁組で皇族とする」案の2案(「男系男子を直接皇族とする」案を含めれば3案)の是非と、その制度設計の詳細ということになりそうだ。その先には、女性宮家の創設や、将来的に女性天皇・女系天皇を認める道を開くのかどうかという点も関わってくる。 

 

 

現在の皇室の現状に鑑み、将来的に悠仁さまの代に悠仁さま以外の皇族がいなくなる恐れがあることを踏まえ、政府有識者会議がまとめた皇族数確保策の第1案が「内親王・女王は婚姻後も皇族の身分を保持することとし、婚姻後も皇族として様々な活動を行っていただく」というものだ。 

 

政府有識者会議は、大河ドラマ「篤姫」など様々なドラマにも登場する和宮(皇室から江戸幕府第14代将軍・徳川家茂に嫁いだ)も、婚姻後も皇族のままだったことなどを引き合いに、望ましい方策だとしている。 

 

また、この方策に反対する考え方として、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持すれば、皇位継承資格を女系に拡大することにつながるのではないかという懸念があることを指摘した上で、結婚後の女性皇族が産んだ子は皇位継承資格を持たず、配偶者も子も「皇族ではなく一般国民とすることが考えられる」としている。 

 

この案を現在の皇室にあてはめれば、愛子さま、佳子さまをはじめとする内親王・女王がご結婚されても、皇族の身分を保持したまま皇室関連の活動を続けることが可能になり、また夫や子は皇族ではなく一般国民の身分で生活することになるわけだ。 

 

これは三笠宮家の長女・彬子さまと、次女・瑶子さま、高円宮家の承子さまにもあてはまることになる。その上で、有識者会議の報告書は「女性皇族が、婚姻後は皇族の身分を離れる制度のもとで人生を過ごされてきたことに十分留意する必要がある」という点も強調している。結婚後には皇室を離れたいというご希望があった場合には、それを尊重する可能性を示唆したものだと言える。 

 

この案についての各党の見解を見てみる。 

 

自民党は、「内親王・女王に婚姻後も皇族の身分を保持していただくことは皇族数の確保のために必要である」と賛同した上で、配偶者と子は皇族としない点も適切だとしている。公明党や国民民主党もこの見解に賛同する立場だ。日本維新の会も現実的だとして評価しているが、同時に「皇族が男系による継承を積み重ねてきたという伝統をなし崩しに消滅させ、皇位継承資格を女系に拡大することにつながるのではないか」との懸念も指摘している。 

 

一方で立憲民主党は、この案への賛否に先立つ形で、有識者会議の報告書自体に一部疑問を呈している。退位特例法の附帯決議が「安定的な皇位継承確保の課題」と「女性宮家の創設」の検討を要請しているにも関わらず、有識者会議の報告書の結論が皇族数確保策にとどまった上、女性宮家の創設についての見解を明確には示さなかったことがその理由だ。 

 

 

立憲民主党としては2012年の民主党政権時の野田佳彦内閣での有識者ヒアリングの論点整理として、結婚後の女性皇族が皇室に残る案として、女性宮家の創設案も含めている。党内では女性宮家の創設に賛成する意見が多い。女性宮家の創設は、結婚後の女性皇族の子も皇族の身分を保持することと同義と考えられ、断定的ではないが女性皇族の配偶者や子は皇族の身分を持たないことが考えられるとした政府有識者会議の報告書とは食い違うものとなる。 

 

立憲民主党が3月にまとめた論点整理では、配偶者や子に皇族としての身分を付与する案と、付与しない案それぞれの賛否の理由を挙げ、詳細な比較検討が必要だとしている。特に、配偶者や子に皇族の身分を与えない場合の問題点として、皇室の活動は女性皇族が単独で行うことになり夫妻としての活動ができないこと、一つの世帯内で皇族と一般国民という異なる身分が共存するため法律や制度の適用に混乱が生じること、一般国民のままとなる夫や子の行動に品位や中立性が求められるため女性皇族の皇籍離脱の要否の問題に派生する恐れなどをあげている。さらに憲法上の諸課題として、夫婦が同等の権利を有することを基本とする憲法24条1項との整合性や、配偶者や子の政治活動など基本的人権の制約、財産関係の問題などをあげている。 

 

このように、立憲民主党が示す、女性皇族の夫や子が皇族の身分を保持するという論点は、自民党や維新とは大きな隔たりがあり、議論の大きな焦点になるとみられる。 

 

また、皇室に関する世論の動向としては、女性天皇容認論、あるいは愛子天皇待望論も高まっていると報じられている。一方で、神武天皇以来126代にわたるとされる男系での継承を途絶えさせることになる女系天皇だけは認められないとの声も大きく、それにつながりかねない女性宮家や、女性皇族の子への皇族身分の付与への警戒感も、女系天皇容認論と比例して高まる状況だ。今回の会議などでの議論を通じ、世論の間にも冷静かつ深い認識が生まれることが望まれる。 

 

 

そして、政府有識者が示している皇族確保策の第2の案が、「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系男子を皇族とする」策だ。 

 

具体的には、現在の皇室で皇位継承資格のある男性皇族のうち若い世代が悠仁さまお一人しかいない現状に鑑み、戦前まで皇室の一員だった旧宮家の男系男子を養子縁組によって皇族とすることだ。これにより、皇族数を確保すると同時に、男系男子による皇位継承を続けていけるようにする策だ。 

 

有識者会議の報告書では、「養子縁組は家名や家業を継がせるという目的で養子になるのにふさわしい人を当事者間の合意により養子とすることも行われている」と指摘し、最大で5親等離れた養子縁組を行った江戸時代の徳川将軍家の例などがあげられている。さらに「男子を得なければいけないというプレッシャーを緩和することにもつながる」としたほか、「現在の皇室との男系の血縁が遠いことから国民の理解を得るのは難しいという意見もあるが、養子となった後、現在の皇室の方々と共に様々な活動を担い、役割を果たしていかれることによって、皇族となられたことについての国民の理解と共感が徐々に形成されていくことも期待される」としている。 

 

また養子の皇位継承資格については、「養子となって皇族となられた方は皇位継承資格を持たないこととすることが考えられる」としており、皇位継承資格はそのさらに男系男子に限る考え方を示唆している。その上で政府有識者会議は、この2つの策で十分な皇族数を確保することができない場合に検討する策として「皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする」という3つめの案を示している。 

 

この男系男子の養子縁組案について、自民党は「皇族数確保、安定的皇位継承のため必要な方策である」と賛同し、養子となった男性は皇位継承資格を持たず、その男子は皇位継承資格を有するものとすることが適切だとして、政府有識者会議の見解に賛同している、また、皇統に属する男系男子を直接皇族にする案についても同意している。公明党や国民民主党も同様だ。 

 

一方、立憲民主党は、この養子縁組案について、「現実的に養子の対象となり得る方がおられるのかを、その方の意思とともに慎重に確認した上で、制度設計の議論に移らなければならない。対象者の存在が不明なまま、具体的な制度を設計することはできない」と指摘している。さらに憲法上の課題として、養子になり得る資格を皇統に属する男系男子に限定することが門地差別を禁じ法の下の平等を定めた憲法14条に反しないかという論点をあげている。そして男系男子を直接的に皇族とする案についても、憲法上のハードルはさらに高いと指摘している。 

 

旧宮家については、昭和22年まで皇族だったが、天皇との男系の血統をさかのぼると伏見宮家を源流とし、歴代天皇では南北朝時代の北朝の崇光天皇の血統にあたるとされる。これを遠いとみるのかどうかということも、議論に関わってくる可能性がある。 

 

 

 
 

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