( 171358 )  2024/05/17 16:08:51  
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4月の衆議院3補選で、立憲民主党が全勝し、日本維新の会は東京15区と長崎3区で候補者を立てたが惨敗した。

維新内では内部抗争も起きており、足立康史議員の行動に疑問が呈されている。

足立議員は公職選挙法に違反したとして処分を求められており、維新の配布行為も議論を呼んでいる。

東京維新の内部問題は全国展開に支障をきたしており、未来に向けて厳しい道のりが待っている。

(要約)

( 171360 )  2024/05/17 16:08:51  
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写真提供: 現代ビジネス 

 

 4月に行われた衆議院3補選では立憲民主党が全勝。「立憲を倒し野党第一党になる」ことを目標に掲げる日本維新の会は東京15区と長崎3区で候補者を立てたが惨敗に終わった。 

 

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 この2つの選挙区は自民党が候補者を擁立せずに不戦敗となったことから事実上の「野党第一党」を決める上での前哨戦と見られていたが、結果はあまりにも明白であった。 

 

 その後の各社世論調査での政党支持率でも大きく水を開けられ、少なくとも関西以外では「与党VS立憲」の構図が基本となりつつある。 

 

 いいところのない維新だが、ここへきて「内輪揉め」まで勃発している。 

 

 「足立康史議員の発言に対し厳格な対処を求める上申書」 

 

 こう題された文書は2024年4月19日付で、宛先は党の馬場伸幸代表と藤田文武幹事長となっている。送り主は東京維新の会代表の柳ヶ瀬裕文参院議員である。 

 

 柳ヶ瀬氏が問題としている足立氏の問題とは以下の2点だ。 

 

 1. 不特定多数の有権者が閲覧するSNS投稿において、東京15区での機関紙配布について当該配布がさも違法であるかのような個人的見解を述べた 

 

 2. 動画配信において、1時間にもわたり、機関紙配布は通常の範囲ではないなど持論を展開し、公の手続きによらず党の判断を一方的に否定した。そのうえ、この点についても「党に言っても一向に交通整理がされないので、最終手段としてスペースで自身の考え方を出した」等と、党の統制を無視することを正当化する発言を繰り返した 

 

 これが「足立議員の手前勝手な理屈によって公に党の名誉を害するものであった」と断じているのだ。 

 

 そして、「足立議員の一挙手一投足は、金澤ゆい候補の当落にも著しく不利な影響を与え、組織人たる党所属議員としての資質を根本から疑わせるものであり、断じて許されるべきではない」として党紀規則に基づき足立氏への処分を要求しているのである。 

 

 ところで、この「機関紙配布」とはどのようなものだったのか。 

 

 公職選挙法では、選挙期間中に配布できるものは選挙管理委員会から配られる証紙を貼ったビラのみと規定している。 

 

 そんな中、維新の会は証紙の貼っていない政党機関誌を選挙区内で配布。裏面には補選候補者の写真やプロフィールなどが記載されている見開き4ページの文書である。これにネット上で「選挙違反ではないか」と疑問の声が上がった。 

 

 こうした声に対して「事実誤認に基づくネガキャンをされているので、反論する」として日本維新の会の音喜多駿政調会長が反応した。 

 

 音喜多氏は「選挙期間中、証紙が貼ってある「法定ビラ」以外にも配れるチラシがあるというマニアックな話」と題して以下のように主張した。 

 

 「選挙期間中は、証紙の貼ってある法定ビラの他にも、政党・政治団体の『機関紙』を配布することができると、公職選挙法第201条15に規定されています。 ただし、『これは政党の機関紙です! 』と強弁すればなんでも自由に配れるわけではなく、『告示の日前6ヶ月間において平常おこなわれていた方法』で行わなければなりません。 つまり、普段から(少なくとも直近6ヶ月間)政党として継続的に街頭演説やポスティングで政党機関紙を配布していれば、そのやり方を選挙期間中に続けることは問題ないよ、ということですね。 

 

 日本維新の会は常日頃から定例街宣を行って機関誌を配ったり、ポスティングを行っています。 なので、選挙期間中&選挙区内であっても、平時と同じ活動として、機関誌を配布することは違法には当たりません(総務省・選管に確認済)」 

 

 音喜多氏はしたり顔でこのような主張を展開したが、これは身内ですら納得できるものではなかった。いち早くX上で反応したのが足立康史衆院議員だ。 

 

 「今回のビラが合法かどうかのポイントは、【直近六月間において平常行われていた方法で頒布しているかどうか】に尽きます。 音喜多さんのポストによると、大丈夫だ、ということですが、それが大丈夫かどうかは、直近六月間において平常行っていた者(15区支部関係者)にしか分かりませんので、正に、当事者の責任となります」 

 

 この投稿に対して、柳ヶ瀬氏は「金澤ゆい候補の当落に著しく不利な影響を与えた」と激怒し、党に対して足立氏の処分を求める上申書を出した。これを受けて馬場代表は足立氏に対して口頭注意を行った。だが、柳ヶ瀬氏はこれでは納得せず、5月7日付で再び足立議員の処分を求める上申書を党本部に提出している。 

 

 

東京15区補選には吉村知事も応援に駆けつけた(筆者撮影) 

 

 足立氏に見解を尋ねるとこう答えた。 

 

 「過去6ヶ月間、同じスタッフで同じ場所で同じように配布していたというのなら合法だが、そうでなければ違法となってしまう。もし、違法の状態だと、応援に入った秘書さんたちが配布させられると大変なことになる。違法だと思ったらしっかり声を上げるというのは清和会の裏金問題の教訓でもあると思い、ああいう投稿をしました」 

 

 実は、これは足立氏が特段異論を唱えているというわけではない。維新の陣営内でも音喜多氏らの主張に疑念を抱く人は多かった。日本維新の会では所属議員の秘書で作る秘書会から連日20名程度が江東区に派遣されて活動をしていた。だが、秘書陣はこの配布は危険だと認識していたという。そのうちの一人が語る。 

 

 「陣営で政党機関誌を配るという話を聞いて、すぐにこれはまずいと思いました。過去に江東区ではどういう形で配布していたかわからないし、違法かどうかを判断するのはあくまで捜査機関です。あまりにもリスクがある。そのため、秘書会として『もし配るように渡されても絶対に配るな』と通達しました。下手すると我々が違反者として書類送検くらいされかねませんから」 

 

 だが、柳ヶ瀬氏が出した上申書ではこうも書かれている。 

 

 「今回の頒布方法は党本部の決定であり、組織として行なってきたものである」 

 

 この主張には、前出の維新秘書も呆れた表情でこう指摘する。 

 

 「これが『党本部からの指示』となると、責任は党本部にいく。党の代表は馬場さんだけでなく吉村知事も共同代表です。極端な話、吉村代表がこの件で警察から聴取を受ける、ということだって可能性としてはあり得るわけです。それなのに、そういう危険なことをやっているという認識が彼らにはない。救いようがないです」 

 

 実際、音喜多氏はまずいと思ったのか、指摘を受けてから配布をやめている。さらに、関係者との連絡で使っていたLINEグループにしていた『機関誌を配っても大丈夫』という趣旨の投稿をこっそり削除していたという。 

 

 だが、音喜多議員を直撃すると強気にこう答えた。 

 

 「(上申書は)東京維新の会の役員会の総意です。あれは違法ではないです。違法というなら告発してくれればいい。江東区でも選挙の前から(機関誌は)配っていた。その辺はちゃんと考えてやってますから」 

 

 また、柳ヶ瀬議員は、「(上申書の提出は)僕単独の判断ではない。やっぱり(足立議員への処分を)ちゃんとやらないと、ということ。ああいうことをやられたら選対はもたないですよ」と足立氏への不満を露わにした。 

 

 だが、東京維新内には音喜多・柳ヶ瀬両氏への不満も広がっている。維新所属の区議会議員の一人が語る。 

 

 「上申書を出すことはそもそも役員以外は誰も知らないし、一任の取り付けもないです。上申書を出していることを問題視する人もいるくらいで、東京維新の総意なんてことは全くないです」 

 

 今回、補選となったのは言うまでもなく柿沢未途前議員による公職選挙法違反である。公選法に敏感でなければいけない中、「違法」の指摘も出るようなグレーな行為を「党本部の指示で」行なったとなれば、少なくとも道義的な問題はあるといえるだろう。 

 

 最後に、維新の別の関係者はこう嘆いた。 

 

 「そもそも、もしもこれが違法にならなかったとしても、じゃあこれを配って何票増えるんだっていう話です。違法にならなくてもこうしてネットでは叩かれたり、悪いことをしているかのようなイメージができてしまう。そうしたマイナス面や選挙違反となるリスクに対して得るものが少なすぎる。 

 

 それを考えられない東京維新の幹部はあり得ないと思う。そもそも法定ビラ以外は違法というのが原則なのに、『こうすれば合法的に配れる』という発想をすること自体おかしい。そんな調子だから、今回の惨敗も当然の末路と言えます」 

 

 大阪では最強となっている維新だが、全国政党として飛躍しなければ野党第一党など望むべくもない。そのためには東京で支持を広げないといけないが、東京維新がこのようなありさまでは道のりは厳しいだろう。 

 

小川 匡則(週刊現代記者) 

 

 

 
 

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