( 172368 )  2024/05/20 16:41:58  
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30年以上前に熊本県が買収した「阿蘇ソフトの村」の用地が一括で売却されることとなり、投資額の約38分の1の価格で譲渡する公募が始まった。

この土地はバブル期に購入され、ソフトウェア企業を誘致するために計画されていたが、計画が立ち消えになり長年塩漬け状態だった。

土地は未造成であり、台湾積体電路製造(TSMC)の進出を見込んで一括で売却する方針に変更された。

土地の転機に注目が集まっている。

(要約)

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「阿蘇ソフトの村」の用地となっている山林付近 

 

 30年以上前のバブル期に、IT関連企業を誘致するために熊本県が買収した高森町の「阿蘇ソフトの村」用地について、県は投資額の約38分の1の価格で譲渡する公募を始めた。分譲を目指していたが、台湾積体電路製造(TSMC)の進出に伴う需要を期待し、一括で売却する方針に転換した。長年塩漬けだった土地の行方が注目される。(内村大作) 

 

【写真】阿蘇の景観を覆うメガソーラー 

 

 高森町役場から北東に車で約10分。国道265号から町道を進み、阿蘇五岳の根子岳の麓にある上色見地区に広がる山林が、公募している用地だ。広さ18・8ヘクタール。ほぼ未造成で、斜面に木々が生い茂る。県が投じた約4億7900万円に対し、譲渡予定価格は約1249万円としている。 

 

 当初の計画は細川護煕元首相の知事時代まで遡る。1987年度、民間の開発計画とも連動した「高森インテリジェントバレー構想」に基づいて策定された。90、91年に19・2ヘクタールを約2億3800万円で買収したが、間もなくバブル経済が崩壊。見込んだソフトウェア企業の進出は立ち消えになった。 

 

 計画した26・4ヘクタールの買収は完了せず、残った民有地で用地は虫食い状態になった。起債償還に伴う利子負担は約1億3200万円に上り、事務費なども含めると投資額は約4億7900万円に膨らんだ。 

 

 オフィス用地のほか、保養所も対象に加えて企業とも交渉したが、成約には至らなかった。2001年度の包括外部監査では「事業計画が安易」「ソフト開発企業に適しているとは思えない立地」と指摘された。12年度も「土地の有効活用や処分を進める必要がある」とされた。 

 

 一帯は、土砂災害警戒区域に指定されている。12年には九州北部豪雨で土石流災害が起きた。国の砂防工事のために一部を売却し、18・8ヘクタールが残っていた。 

 

 変化の兆しが見えたのは21年のTSMCの県内進出表明。菊陽町や近隣市町村を中心に企業用地の需要が高まった。「一括譲渡でもいいのではないか」との意見も寄せられた。県は「追い風」と捉え、分譲では条件の悪い土地が売れ残ることも考え、一括譲渡を打ち出した。 

 

 

 価格は不動産鑑定の結果を踏まえ、購入当時の宅地ではなく、林地として低く設定した。県の損失が確定する形だが、山林を整地するだけでも億単位の費用が必要なためだ。インバウンド(外国人観光客)も見据え、従来の企業や余暇活動の用途に、「地域活性化に資する場」を加えた。 

 

 TSMCの工場から約40分の立地もアピール。上下水道の整備が必要だが、光回線による高速通信網は利用できる。 

 

 募集は6月28日まで。応募があれば、審査を経て9月までに決定する。県産業支援課は「豊かな自然で、地域振興の核になるような計画を打ち出してほしい」と期待を寄せる。 

 

 

 
 

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