( 172713 )  2024/05/21 16:38:19  
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日本は現在、異常円安やデジタル赤字といった経済課題に直面しており、外資系企業への支払額が大きな問題となっている。

円安を食い止めるために日銀が利上げをすることについては疑問視されており、日本企業の成長が必要との指摘がある。

現在の政策では円の価値を毀損させる可能性も指摘され、将来的に為替がどうなるかは予測が難しい状況だが、日本経済にとっての警告として捉えるべきだという意見もある。

(要約)

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写真提供: 現代ビジネス 

 

 前編記事『日本は崩壊の危機に直面している…財務省幹部が嘆く「『異常円安』は国力低下の証左』はこちらから。 

 

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 さらに近年は、『デジタル赤字』も問題になっている。スマートフォンやパソコンで使用するITサービスはほとんどを外資系企業に占有され、彼らの存在なしには日常生活が成り立たないまでになっている。 

 

 「グーグルやアマゾン、アップル、マイクロソフトなどが提供するITサービスが、企業だけでなく、一般の人にも広がって、日本から定期的に米国の巨大IT企業に支払うおカネが増え続けています。また、金融の分野では外資系保険会社の存在も大きい。これらの外資系企業に支払う金額を総合すると、月々に6000億円近くになり、インバウンドによる月間の黒字額約4000億円よりも多いのです。大勢の日本国民が毎月せっせと一定額をドルに換えて支払っているわけですから、これが円安に影響しているわけです。こうした円安圧力は今後も続いていくし、その金額は大きくなっていくでしょう。つまり、恒常的に日本円は力を失っているのです」(第一生命経済研究所エコノミストの嶌峰義清氏) 

 

 円安を食い止めるために、日銀が利上げをすればよいという指摘もあるが、残念ながら話はそう単純ではない。金融・経済ウォッチャーで、青山学院大学大学院非常勤講師の鈴木明彦氏が言う。 

 

 「日銀が利上げをして、長期国債の利回りが暴騰すれば、景気の腰折れ懸念が高まるのはもちろん、利払い費が急拡大してしまいます。その結果、日本国債の信用力も下がることになりかねないからです。その際には円も株価も暴落することは目に見えています。そんなことを政治が望むはずがありません。つまり、円安抑制のために日銀が積極的に利上げをすることはないわけです」 

 

 では、いったい日本はどうしたらいいのか。鈴木氏が続ける。 

 

 「アベノミクス以降の円安で、海外売上高比率の高い大企業を中心に、見かけの利益が大幅に水増しされるというぬるま湯のような状態が続いて、外国企業と競争力の面で一段と水をあけられたことが隠されてきました。こうした状況を打開するためには、企業の努力で真の競争力を取り戻さなければなりません。 

 

 すべての問題は、日本企業の成長力が高まらないことです。本来、デフレ脱却とは、成長力が高まり、結果として所得が増えることでした。しかし、いつの頃からか、物価が上がることがデフレ脱却であるかのように捉えられるようになった。円安誘導も、物価を上げることが大きな狙いでした。しかし、成長力がない中で、どんなに物価が上がっても、国は豊かにはなりません。目指すのは、国民の所得が上がること。そのために経済が成長する必要があります」 

 

 

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 表向きは岸田文雄総理もその必要性を理解しているのか、物価高を上回る賃上げを実現させると繰り返し語っている。しかし、その政策は心もとない。経済ジャーナリストの磯山友幸氏はこう指摘する。 

 

 「物価が上がっても経済成長ができなければ、賃金は上がりません。しかし、岸田政権は経済成長のための政策が脆弱です。たとえば、本来は倒産してもおかしくないのに、超低金利の融資によって生きながらえている『ゾンビ企業』を温存させたりして企業の構造改革から目を背けています。 

 

 一方で、ガソリン代の高騰を抑えるなどのインフレ対策として、補助金を大量に注ぎ込んでいる。円安によるエネルギー価格の高騰を抑える政策ですが、長期的に見れば、財政を圧迫して円安誘導の要因になる。岸田政権の政策はすべて円の価値を毀損してしまうものなのです。こうした政策を続けていれば、1ドル=200円になるのも時間の問題です」 

 

 為替が今後どうなるのか。米国のインフレ次第というところもあり、正確に見通すのは難しい。ただ、これを日本経済の現状に対する警告と捉える意味はあるのではないかと帝京大学経済学部教授の軽部謙介氏は語る。 

 

 「『日本という国が売られている』という指摘に関して、現在進行形であるはずの一方で、大きく景色が変わるまでは、なかなか認識できないという側面もあります。 

 

 グリーンスパン元FRB議長が『バブルは崩壊して初めてバブルだとわかる』という趣旨の発言をしましたが、これは名言だと思います。経済現象は茹でガエルになぞらえられることもありますが、徐々に変化していくことが多いので、渦中にいる人間はなかなか気づくことができない。大きな破局のようなものが訪れた時に、ようやく気づく。そして、気づいた頃には時すでに遅しということはよくあります」 

 

 現在の異常円安が未来から振り返ってどのように位置づけられるのか。日本経済に残された時間は長くはなさそうだ。 

 

 「週刊現代」2024年5月18・25日合併号より 

 

週刊現代(講談社) 

 

 

 
 

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