( 173218 )  2024/05/23 00:54:54  
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日本の国内総生産(GDP)が予想を下回るマイナス成長になったことが報告され、景気の悪化が深刻だと指摘されている。

自動車問題以外でも民間消費が低迷し、賃上げが限定的な上に中高年の賃上げが抑えられていることが問題視されている。

景気刺激よりも財政再建を打ち出す姿勢や、日銀による利上げの見通しなどが懸念されている。

減税や賃上げだけでは経済安定化には不十分であり、国民の消費を増やすにはさらなる対策が必要だと指摘されている。

(要約)

( 173220 )  2024/05/23 00:54:54  
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日銀の植田和男総裁 

 

【ニュース裏表 田中秀臣】 

 

今年の1月から3月にかけての国内総生産(GDP)の速報値が発表された。簡単にいうと、国内景気は予想以上にひどい結果だった。2四半期ぶりのマイナス成長で、実質GDPは前期比0・5%減、年率換算で2・0%減だった。実質最終需要は、年率換算で2・9%減、景気実感をより示す名目値でも0・5%減だった。悪化の主因は、能登半島地震やダイハツ工業の認証不正による自動車の生産・出荷停止が大きく響いたといわれている。だが本当にそれだけだろうか。 

 

【グラフでみる】賃金の賃上げ率の推移 

 

自動車問題などがなくても民間消費の弱さは顕著である。単に自動車が買えなかったというだけで説明できる範囲を超えている。消費低迷の深刻さは、4四半期連続の前期比マイナスでみても分かる。背景には所得の不足とこれからの負担増がある。消費者マインドを示す「消費者態度指数」をみても、景気が下降局面にあり、さらに消費増税の影響も受けた2019年後半並みのレベルだ。まったく力強さに欠ける。 

 

春闘での賃上げの効果がだんだん出てくることや、6月の所得減税などを期待する向きがあるが、それらの効果は限定的だろう。中小企業の賃上げはこれからであり、たとえインフレ率が日銀の目標である2%を下回ったとしても、実質賃金がプラス転換するかは不透明だ。つまりその程度の賃上げである。また再エネ賦課金の増額、子育て支援金の負担増、防衛増税、社会保障費の負担増などが予想される。一回きりの減税でどうして消費が増えるだろうか。 

 

まもなく経済財政諮問会議は「骨太の方針」を発表するが、現状の委員の顔ぶれをみると財政緊縮派が並ぶ。景気刺激よりも財政再建を強く打ち出す可能性が大きい。また植田和男総裁体制の日銀はつねに利上げを狙っている。これで国民が将来に安堵(あんど)して消費を増やすと想定する方が難しいだろう。 

 

もちろん減税や賃上げが何ももたらさないわけでもない。次期(4~6月期)のGDPは少しは増加するかもしれない。それを岸田文雄政権や日銀は、支持率回復や利上げ目的のために喧伝(けんでん)するだろう。だがその効果は一時的であり、経済を安定化するにはほど遠い。 

 

国民の消費が低迷している理由のひとつには、賃上げをみても初任給など若手は増えるが、中高年の賃上げが抑えられていることにもある。他方で中高年の働き手の負担は強まるばかりだ。また生産性のアップだなんだと、さまざまな社会的な圧力に直面しているのもこの世代だろう。給料が十分に上がってないのに、もっと頑張って働けとけしかける経営者や、政治家たちこそ、マイナス成長を生み出す元凶だ。 (上武大学教授・田中秀臣) 

 

 

 
 

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