( 174105 ) 2024/05/26 00:38:15 0 00 「0歳児選挙権」の導入を党公約に盛り込む考えを表明した日本維新の会の吉村洋文共同代表(大阪府知事)=9日午後、府庁
日本維新の会の吉村洋文共同代表(大阪府知事)が「0歳児選挙権」の導入について、次期衆院選の党公約に盛り込む考えを表明し、波紋を広げている。少子高齢化で高齢者向けの政策に偏重しがちな政治を見直し、若年層の意思を反映させる狙いだが、実際は未成年の子供の分を親権者が代理投票する「ドメイン投票方式」を想定。一人一票の原則に抵触する恐れもあり、憲法との整合性をはじめとした法的ハードルが立ちはだかる。
【グラフでみる】令和3年衆院選の年齢別投票状況
「長く生きる子供たちが将来への影響力を持つべきだ。少子高齢化で世代間の政治的影響力が偏っている」。吉村氏は23日の記者会見で、0歳児選挙権実現を目指す理由を語った。
4月下旬以降、吉村氏はドメイン投票方式の導入に向け交流サイト(SNS)での発信を強めている。具体的には「親権者が2人いる場合は子ども1人につき0・5票ずつ分け合う」「現行18歳の選挙権年齢を引き下げる」といった考えを投稿し、党内外の議員も含め賛否が続出した。
日本では有権者に占める若年層の割合は低い。総務省が令和3年衆院選について、各都道府県の一部の投票区を抽出して有権者数を分析したところ、18~34歳は全体の19%で、65歳以上は34%だった。
吉村氏は「若い世代が選挙権を持てば、政治家はそちらを向く」と主張し、政治的影響力の世代間格差を縮める意義を説く。
維新は4年の政策集で400項目の一つに、ドメイン投票方式の導入検討を明記した。吉村氏は次期衆院選公約に盛り込む作業を党内で進めているとして「憲法改正が必要かどうか、学者の意見も踏まえて検討する。必要であれば党が目指す憲法改正の項目に入れてもいい」と踏み込んだ。
政権側は慎重だ。岸田文雄首相は5月17日の国会審議で、維新議員から0歳児選挙権の評価を問われ「親が子供のことを考えて投票するとは限らないなど、さまざまな課題がある」と答弁するにとどめている。
同様の議論は海外でもある。法政大の小黒一正教授(公共経済学)によると、ハンガリーでは少子化対策の一環としてドメイン投票方式の導入が検討されたが、民族間で世代構成に差があり、若年層が多い民族に有利になる可能性もあるため、実現しなかったという。
日本国憲法は15条3項で「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と定める。小黒氏は、ドメイン投票方式導入に際しては「成年者をどう解釈するかや、一人一票の原則に反するとの問題が発生する」と指摘。一方で「先んじて少子高齢化が進む日本で議論することに意義がある」と歓迎する。
これに対し、東京経済大の加藤一彦教授(憲法学)は、親権者が子供の数だけ代理投票できる方式を問題視する。憲法44条で、選挙人の資格について社会的身分などによる差別を禁じているためだ。
加藤氏は「有権者の構成よりも候補者の構成を変えることが先決だ」と提案し、国政選挙の候補者について世代別や男女比の割合を決めて各党に義務付け、さまざまな立場の意見を政策に反映させるべきだとしている。(山本考志)
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