( 175423 )  2024/05/29 17:16:20  
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立憲民主党の蓮舫参院議員が都知事選に出馬することを表明。

現職の小池百合子知事も3選を目指す中、蓮舫氏は直接対決を選択。

経済アナリストは、蓮舫氏の出馬によって「革新都政」が誕生する可能性があると見ている。

蓮舫氏は都知事選に出馬する決意を示し、かつての応援候補の敗北などを背景に、計算高い判断とされる。

共産党などと連携し、次世代選挙に向けた展望も考慮されている。

(要約)

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 6月20日告示(7月7日投開票)の次期都知事選に立憲民主党の蓮舫参院議員が出馬することを表明した。いまだ高い人気を誇る現職の小池百合子知事は3選を目指して立候補する方針だが、蓮舫氏は「勝機は今でしょ!」とばかりに直接対決の道を選んだ。その決断の裏には何があるのか。政界事情に通じる経済アナリストの佐藤健太氏は「計算高い蓮舫氏の出馬によって立憲と共産党がフル回転すれば、半世紀ぶりに『革新都政』が誕生する可能性はある」と見る。 

 

「自民党政治の延命に手を貸す小池都政をリセットして欲しい。その先頭に立つのが私の使命だ」。蓮舫氏は5月27日に立憲民主党本部で記者会見を開き、都知事選に出馬する理由を説明した。これまでの知事選でも名前が取り沙汰されてきた蓮舫氏だが、「石橋を叩いて渡るタイプ」(野党議員)ことで知られる本人は固辞を続けてきた。 

 

 だが、今度の都知事選は絶好の好機と見ているようだ。今回のタイミングは「静岡県知事選の結果、目黒の都議補選の結果も大きい」などと野望を隠さない。立憲民主党内には4月の衆院東京15区補選で小池氏が応援した候補が敗れたことを受けて、選挙に強い「小池神話」は崩壊したとの見方が広がる。自民党が政治資金パーティーをめぐる裏金問題で大逆風に遭い、これまで行方を遮ってきた政権与党が動きにくいことも追い風と言える。 

 

 蓮舫氏は自らに近い立憲都連の手塚仁雄幹事長と「計算」を繰り返していたとされ、一部には小池都知事と蓮舫氏の出馬を想定した都知事選に関する極秘調査を行い、手応えがあったとの情報もある。ごく限られた人物だけで念入りにシミュレーションを繰り返し、党幹部に意向を伝えたのは4月26日夜だったという。 

 

 蓮舫氏は2022年の参院選東京選挙区で約67万票を獲得し、4選を果たした。だが、初当選した2004年の約92万票、2010年の約171万票、2016年の約112万票と比べると得票数は大幅に落ち込んでいる。民主党政権時代の2009年に「事業仕分け」で注目を浴び、「世界一になる理由は何があるんでしょうか。2位じゃダメなんでしょうか?」と言い放った姿は記憶に新しいところだ。次世代スーパーコンピュータ「京」の開発計画は一時凍結され、科学や特許の重要性を知らないのかと研究者らは憤慨した。 

 

 蓮舫氏のオフィシャルサイトによると、1967年に東京都で台湾人の父と日本人の母との間に生まれ、幼稚園から大学まで青山学院に通学。大学在学中に芸能界デビューして報道キャスターなどとして活動、北京大学にも留学経験があるという。 

 

 

 台湾籍と日本籍の「二重国籍問題」や民進党代表時代のマネジメント能力には厳しい声が寄せられてきた。人気に陰りが見える中、都知事選への出馬を表明したことには野党議員からも驚きの声があがる。 

 

 では、なぜ蓮舫氏はそれでも出馬を決意したのか。1つ考えられるのは「もう1つの計算」だ。たしかに4月の衆院東京15区補選は小池氏が応援した乙武洋匡氏が惨敗し、立憲の元江東区議が当選を果たした。ただ、この選挙で乙武氏はかつての「不倫問題」を蒸し返され、無党派層から総スカンを食らった。小池氏の支持者には女性も多く、「小池票=乙武票」とならなかったのは言うまでもない。 

 

 加えて、蓮舫氏が決断するきっかけとなった静岡県知事選も違う角度から見れば都知事選とは状況が大きく異なることがわかる。川勝平太前知事の辞職に伴う知事選は立憲と国民民主党が推薦した元浜松市長の鈴木康友氏が勝利したが、もともと鈴木氏は最有力候補だった。 

 

 浜松市長として4期16年務めた知名度があり、鈴木氏は大票田の浜松市だけで全得票の3割超を獲得している。対する自民党推薦の元副知事、大村慎一氏は35のうち27市町で上回ったものの、8市町を制した鈴木氏に敗れた。主要マスコミの当日の出口調査を行ったが、その結果を見ても告示前より大村氏が猛追していたことがわかる。 

 

 これまでの状況を踏まえれば、3選を目指す小池氏には国民民主党や連合東京が支援に回る可能性が高く、蓮舫氏は共産党などと組むことが考えられる。共産党は5月27日に支援することを表明しており、同党は1967年4月~1979年4月まで3期12年都知事を務めた美濃部亮吉・革新都政の再来を期待するところだろう。 

 

 ただ、それらは計算高い蓮舫氏ならば理解しているはずだ。そうなると考えられるのは、蓮舫氏の決断の背景には「次」を見据えた計算があるということになる。蓮舫氏が都知事選に出馬すれば、来夏に欠員を補う選挙が通常の参院選と合わせて実施される見通しだ。都知事選に勝利できれば問題ないが、仮に勝てなければ議員バッジをつけられない状況が続くことになる。 

 

 

 立憲民主党は9月に代表選を控える。ここで蓮舫氏に近い野田佳彦元首相が出馬してトップに就くことがあれば、次期衆院選に蓮舫氏も立候補して「政権交代と同時に重要ポストにつくことができるとの読みがあるのではないか」(野党議員)との声があがる。もちろん、政権交代を賭けた選挙で都知事選と同じように野田氏と共産党が手を組めるのかといった問題はあるだろうが、他の立憲候補が共産党と共闘することがベストであると考えれば可能性は低くないだろう。 

 

 もちろん、蓮舫氏は都知事選以降の「計算」は否定するだろう。もしかしたら、そこまで計算せずに単に突っ込んでいる可能性もある。蓮舫氏は、都知事選出馬の際は立憲を離党することも視野に入っているとされ、「背水の陣」をアピールするはずだ。ただ、小池知事が自民党と仲を戻しつつあることを批判するならば、蓮舫氏が都知事選で「無所属」と言いながら立憲や共産党の支援を受けるのは矛盾するのではないか。小池氏は自民党都連と戦った2016年の都知事選はどの政党からも支援は受けていない。「完全無所属」とはそういうことを意味する。 

 

 蓮舫氏が用いた「リセット」という言葉は強烈なインパクトを与える。ただ、それでは小池都知事が初当選時から実行している知事給料半減も踏襲せず、自らはリセットして満額をもらうつもりなのか。18歳以下の子供に月5000円を支給する「018サポート」も中止するのか、子育て家庭には気になるところだ。 

 

 政界において、蓮舫氏は「攻撃は強いが、それ以外はできない」との評が漏れる。思い出すのは、税金の無駄遣いをなくし、浮かせたお金で何とかなると言っていた民主党政権だ。米軍普天間飛行場の移設問題はちゃぶ台をひっくり返すように大迷走し、「子ども手当」は不十分のまま終わった。野田政権で公約になかった消費税率の引き上げまで決めた結果、民主党政権はわずか3年3カ月で崩壊している。 

 

 蓮舫氏の出馬表明会見を見たが、残念なのは自民党や小池都政の批判がほとんどで、これからの東京都をどのようにしたいのかビジョンが見えなかったことだ。これから政策集の発表があるのだろうが、国政政党の構図を都知事選に持ち出す感覚が理解できない。静岡県知事選のように与野党対決の構図であればわかるが、小池知事は何も自民党と一緒になって戦うわけではないだろう。 

 

 次期都知事選には、広島県安芸高田市の石丸伸二氏や元航空幕僚長の田母神俊雄氏ら20人以上が出馬する方向だ。田母神氏は2014年の都知事選で約61万票を獲得(落選)しており、保守層や無党派層の動向も注目される。はたして、「勝利の女神」は誰に舞い降りるのだろうか。 

 

佐藤健太 

 

 

 
 

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