( 176178 )  2024/05/31 17:53:18  
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東北大学の明日香寿川教授は参議院経済産業委員会の参考人として、米国では原発の発電コストが高く、再生可能エネルギーよりも高いことを政府や投資銀行が毎年発表しているが、日本ではこれがほとんど知られていないと指摘した。

明日香教授は、日本では再エネが高く、原発への補助金が誤って安く役立つという認識が広がっていると述べている。

国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、原発の発電コストは再エネよりも2倍以上高く、温室効果ガスの削減コストも原発より再エネが安いと示されている。

(要約)

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参議院経済産業委員会の参考人として、意見を述べる東北大学の明日香寿川(あすか・じゅせん)教授=参院の公開動画から 

 

 「米国では原発の建設費が高く、運転コストも再生可能エネルギーより高いというデータを政府や投資銀行が毎年発表している。国際エネルギー機関(IEA)は原発を再稼働して長期運転した場合の温室効果ガス削減コストが再エネ新設の6倍も高いと報告している。それでも日本では原発が安く、温暖化防止に役立つという言説がまかり通っている」 

 

 こう語るのは、東北大学大学院環境科学研究科の明日香寿川(あすか・じゅせん)教授だ。岸田政権が「温室効果ガスの排出削減に役立つ」と主張する原発の発電コストが再エネより数倍も高いという海外データは、日本ではほとんど知られていない。一体どういうことなのか。【毎日新聞経済プレミア・川口雅浩】 

 

 環境科学やエネルギー政策が専門の明日香氏は2024年5月7日、参議院経済産業委員会の参考人として、意見を述べた。超党派の国会議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」でも同日、講師として登壇。24年3月に米国を訪れ、政府関係者らにヒアリングした最新の調査結果などを報告した。明日香氏は経済産業省や環境省など政府の審議会の委員も務めた。 

 

 ◇海外データで発電コストを比較 

 

 明日香氏が参考人として国会に提示した資料には、海外の詳細なデータが記されている。まず、米政府機関のエネルギー情報局が毎年発表している米国の電源別の発電コストだ。 

 

 同局によると、1メガワット時(1000キロワット時)当たりの22年の発電コストはバイオマスが90.17ドルで調整可能電源では最も高く、次いで高効率の石炭火力が82.61ドル、原発が81.71ドル、天然ガスが39.94ドル。これに対して太陽光は33.83ドル、陸上風力は40.23ドル、洋上風力は105.38ドルだった。 

 

 原発は再エネの太陽光や陸上風力より2倍以上、コスト高だった。同様のデータはIEAも発表している。 

 

 IEAが21年に温室効果ガスの排出削減コスト(1トンの二酸化炭素の排出を削減するためのコスト)を電源別に比較したところ、太陽光の2.9ドルに対して、原発は運転期間を延長した場合で17.0ドル、新設した場合は56.2ドルだった。運転中の原発で太陽光の約6倍、新設だと約19倍も差が開いた。また、原発は再エネに比べ雇用も生まないという。 

 

 ◇原発は安くて温暖化防止に役立つ? 

 

 これらのデータから、明日香氏は「米国では原発新設の発電コストが高いのは言うまでもなく、既存の原発の運転コストも再エネの新設より高くなっている。温室効果ガスの排出削減コストも、原発新設は言うまでもなく、原発の運転延長より再エネを新設する方が安い。同額のお金を原発と再エネに投資した場合、再エネの方がはるかに大きな排出削減が実現することを意味する」と話す。 

 

 明日香氏によると、米国では採算性が悪いことから、稼働可能な原発を廃炉にするケースが出ている。バイデン政権は原発の廃炉をしばらく先延ばししてもらうため、電力会社に補助金を出しているという。 

 

 ところが、「日本では再エネが米国など世界の主要国よりも高い。原発には多くの税金や電気料金の一部が実質的な補助金として注ぎ込まれている。これらの要因で、日本では『原発は安くて温暖化防止に役立つ』という誤った認識が広がっている」と明日香氏は語る。 

 

 ◇「日本は悪循環に陥っている」 

 

 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、世界36カ国の21年の太陽光の1キロワット当たりの発電コストは日本が1693ドルで、最も高額のロシア(1695ドル)に次ぎ、2番目に高い。ドイツ(694ドル)、イタリア(785ドル)、フランス(808ドル)の2倍以上の差がある。IRENAは「世界平均で太陽光の発電コストは10年から21年の間に88%下がった。市場が成熟すれば、さらなる下落が期待できる」としている。 

 

 日本はどうか。明日香氏は「日本では再エネ導入を積極的に進めるような制度設計になっておらず、政府の導入目標も小さい。それゆえに、なかなかコストが下がらず、そのために導入量が小さく、競争原理が働かずにコストが高止まりしてしまう悪循環に陥っている」と指摘する。 

 

 

 
 

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