( 176468 )  2024/06/01 16:10:15  
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日本銀行がマイナス金利政策を解除したことにより、長期金利が上昇し、千葉県内の地銀3行も金利の上昇に対応し始めている。

金利上昇は銀行の収益にプラスとなるため、銀行は政策変更を歓迎しているが、貸出を増やすための預金競争が激化している。

しかしながら、行員の多くは長年の低金利下で金利上昇を経験しておらず、貸出金利の引き上げが融資先の経営に影響を与えることも懸念されている。

(要約)

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 日本銀行によるマイナス金利政策の解除に伴って長期金利が上昇し、千葉県内の地銀3行も「金利のある世界」への対応に動き始めた。金利上昇は銀行の収益にプラスに働くため、政策変更を歓迎し、貸し出しを増やすための預金の獲得競争が激化している。ただ、長年の低金利下で多くの行員は金利上昇を経験していないうえ、貸出金利を引き上げれば融資先の経営を圧迫することは避けられず、各行は悩みも抱える。(平田健人) 

 

 「収益的に見れば、利ざやの拡大でプラスだ」 

 

 千葉興業銀行の梅田仁司頭取は5月の決算記者会見で、日銀の政策変更を評価した。銀行は集めた預金に金利を上乗せして貸し出すことで得られる「利ざや」で稼いでおり、金利上昇は業績拡大の好機になるからだ。 

 

 日銀が3月にマイナス金利政策の解除を決め、各行による預金獲得は熱を帯びている。決定から2日後の3月21日、3行はそれぞれ貸し出しの原資となる普通預金の金利を、4月から従来の20倍の0・02%に引き上げると発表した。 

 

 千葉興銀は5月27日から9月末まで、新たな定期預金(預入額50万円以上、預入期間1年)に0・025%を店頭表示金利に上乗せする。50万円の預入金を1口とした抽選権も付与し、最大5万円が当たるキャンペーンも展開する。 

 

県内の地銀3行も「金利のある世界」への対応を進めている。千葉銀の米本頭取は記者会見で「きめ細かい顧客のフォローが重要だ」と述べた(5月10日、千葉市中央区の千葉銀本店で) 

 

 今後は貸出金利の引き上げが焦点となる。 

 

 千葉銀行の米本努頭取は「借り入れ依存が高い顧客は注意が必要。中長期的に金利上昇が続く中では、きめ細かい顧客のフォローが重要だ」と強調する。貸出金利の見直しに向け、顧客に説明する際の会話例や金利の仕組みに関する動画を作り、行員向けの研修を進めていると明かした。京葉銀行と千葉興銀も行内で金利に関する勉強会を重ねる。 

 

 背景にはバブル経済の崩壊後、低金利が続いてきたことがある。各行にも金利が上がる局面を経験した行員はほとんどいないとされ、行員教育は貸出金利の引き上げを巡る融資先との交渉に備える意味合いが強い。 

 

 

 貸出金利の引き上げには、他行との競争状況も影響しそうだ。3行は一つの融資先を巡って競合している場合が多く、県内地銀のある行員は「うちが貸出金利を上げて、他が上げないとなれば(顧客は)他行に流れる」と危機感を募らせる。 

 

 ◆マイナス金利政策=日本銀行が、民間の金融機関からお金を預かる際の金利をマイナスにし、事実上の「手数料」を徴収した政策。2016年に導入した。金融機関が低い金利で企業や個人にお金を貸し出すことで、経済を活性化する効果を狙っていた。 

 

 日銀のマイナス金利政策の解除を受け、金融機関からお金を借りている県内企業には、一定の金利上昇は不可避との見方が広がる。 

 

 東京商工リサーチ千葉支店が4月、県内企業113社を対象に行った調査では、メインバンクから借入金利の上昇を打診された場合、72・1%が「既存金利より0・1%上昇なら受け入れる」と回答し、「他行へ調達を打診する」は19・8%にとどまった。ただ、同0・3%の上昇では「受け入れる」が38・4%にまで低下して「他行への打診」が48・8%と逆転し、引き上げへの抵抗感も垣間見えた。 

 

 昨年4月と比較して借入金利がどう変化するか尋ねた質問では「既に上昇」は20・8%、「今年中に上昇する」は56・2%に上った。 

 

 同支店の担当者は「金利はかなり(低く)抑えられており、多少の上昇は『仕方がない』と受け入れているのではないか」との見方を示す。ただ、今後は銀行がリスクの低い企業には金利の引き上げを小幅にとどめ、高い企業には大幅に引き上げる可能性があるとし、「中長期的に上げ幅が大きかった企業は淘汰(とうた)されるかもしれない」と指摘した。 

 

 

 
 

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