( 177058 )  2024/06/03 15:51:24  
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オーストラリアにやって来て理想と現実に大きなギャップを感じるケースが増えている。

物価高や賃金の上昇ペースの遅さ、そして円安などの要因から、ワーキングホリデーで渡航する日本人が急増している。

しかし、現地に行ってみると働き口が見つからず、物価が高すぎるなどで出稼ぎを断念して帰国するケースが増えている。

ワーホリは若者に人気で、成功事例をSNSで見ることで海外での稼ぎが良いというイメージが広がっているが、実際にはスキルや資格が重要で、働き口も限られている現状がある。

そのため、海外で成功するには十分な準備とリサーチが必要となる。

(要約)

( 177060 )  2024/06/03 15:51:24  
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憧れを抱いてオーストラリアにやって来たが、理想と現実が大きく異なるケースも(現地の学生寮) 

 

 ここ数年、物価高が続くなか賃金上昇のペースはなかなか上がらず、くわえて円安が進行したことで、国外へ出稼ぎに行く日本人が急増している。“出稼ぎワーホリ(ワーキングホリデー)”と呼ばれるワーキングホリデーで渡航するケースも多い。ただ、高い時給で働ける海外に魅力を感じたものの、いざ現地に行ってみると、働き口がなかったり、現地の物価が高すぎたりという理由で、出稼ぎを断念して帰国するというケースも多いという。現実はそう甘くはなかった――。 

 

【写真】「卵1パック」で5豪ドル(約500円)、サンドイッチも1包装6.5豪ドル。現地の物価は高く、食料品もおいそれと手が出ない水準に… 

 

 1980年に始まったワーホリの対象国は29か国・地域に広がった。なかでも最初に制度ができたオーストラリアは今、「出稼ぎ向き」と頻繁にメディアでも紹介されている。ワーホリや留学のサポートをしているメルボルン留学Time Studyの近藤啓輔氏が、現地の状況を説明する。 

 

「オーストラリアはコロナで2年間国境を閉鎖していましたが、一昨年頃から希望者が一気に増えました。特にワーキングホリデーに関しては、本来の“ホリデー”としての休暇目的でなく、出稼ぎ目的の人が急増している印象です。オーストラリアのワーホリは、18歳から30歳という年齢制限があります。弊社へ相談に来るなかで最も多い年齢層は、20代半ば。大学卒業後、一度日本で働いた経験のある人が多いですね」 

 

 出稼ぎ目的が急増した背景には、SNSで“海外のほうが稼げるエピソード”がたびたび発信されるようになったことが影響しているようだ。 

 

「2022年、オーストラリアで働き始めた日本人が『今月の手取り80万超えた』とSNSに投稿し、話題になりました。日本で金属加工業に8年間従事していた時はほとんど貯金がなかったのに、オーストラリアに移住して3年で年収1000万円を超えた──というエピソードには大きな反響が集まりました。 

 

 ほかにも日本の看護師が、オーストラリアでアシスタントナース(正看護師や准看護師の補佐する職種)の資格を取得して働き、大幅な給与増に成功した人もいる。そうした“オーストラリア・ドリーム”に影響を受けている人が多いようです。ただ、成功された方々は、金属加工や看護師といったスキルや資格が現地でも重宝されているのです。都市部の飲食店のアルバイトの求人はすでに飽和状態になっています」(同前) 

 

 

 現実はそう甘くなく、“年収1000万円”を夢見て渡航したものの、日本へ帰国するパターンも少なくないという。大学を卒業後、すぐにオーストラリアへワーホリに行った女性・Aさん(23)は、たった3か月で日本へ帰国することになった。 

 

「海外のほうがゆとりのある働き方で稼げると思って、国内では就職活動をせずオーストラリアに来ました。英語はそれほど得意ではないですが、『とりあえず行けばなんとかなるだろう』と思っていました。ですが、家はなんとかシェアハウスで確保できたものの、アルバイトはどこも採用してくれません。日本より物価が高いので準備していた貯金もすぐに底をついて……。なんとも言えない不安に毎日駆られるようになって、精神的に追い込まれました。早く日本に帰ろうと思っても、航空券代さえありません。親の反対を押し切って海外に行ったので、今さら泣きつくこともできません。結局、同じワーホリの仲間にお金を借りて、なんとか日本に帰国することができました」(Aさん) 

 

 運良く勤め先が見つかっても、思うように働けないケースもある。社会人を数年経験したのち会社を辞めてオーストラリアに来た男性・Bさん(27)は、日本食レストランのアルバイトの職についたが、日に日にシフトが減らされてしまったという。コロナが明け、日本以外の英語圏や他国のワーホリ希望者の増加により、英語が堪能な人が優先的に採用されるようになったという背景もある。 

 

「英語はそれほど得意ではありませんが、社会人経験もありますし、アルバイトの仕事くらい乗り切れるんじゃないかという自信はありましたね。アルバイトの面接もすんなり通って、部屋も借りることができました。何の問題もなくオーストラリア生活を送れていたのですが、だんだんシフトが減らされていることに気づいたんです。オーナーに交渉したのですが、英語ができないのでうまく自分の言いたことが伝わっている気がしません。オーストラリアは働き口も減っていると聞きますし、辞めるわけにはいかないので、ずるずると今も同じ店舗で働いています」(Bさん) 

 

 

 ワーホリの渡航者が比較的採用されやすい飲食店のアルバイトだが、日本で想像していた「ラクして稼げる」状況ではないと言う。Bさんが続ける。 

 

「ワーホリ仲間の1人は働ける飲食店がなかなか見つからず、ようやく採用してもらえた飲食店で提示された条件は『最低賃金より少ない給料で、手渡し払い』だったそうです。オーストラリアのアルバイトの最低賃金は時給23.23ドル。日本円で大体2300円です。たしかに日本のアルバイトよりは高額ですが“超高給”ではありません。とはいえ、ここ以外働ける場所がないと思って今も最低賃金を下回る給料で働いているそうです」(Bさん) 

 

 円安だからといって安易に海外で成功できるほど甘くはないようだ。 

 

 

 
 

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