( 177235 ) 2024/06/04 01:37:20 0 00 郵便離れにさらに拍車がかかるか
政府は5月21日、物価に関する閣僚会議を開き、手紙の郵便料金の値上げを了承した。25g以下の定型封書(手紙)は84円から110円に、50g以下の定型封書は94円から110円に、はがきは63円から85円に、それぞれ値上げされる方針。また、レターパックや速達の料金についても、値上げが検討されるという。今年10月に値上げが実施される見通しで、郵便料金の値上げは、消費税率の引き上げに伴う改定を除くと30年ぶりとなる。
【郵便事業が赤字になる本質的な問題】投函が「月に0~1通」のポストが全国で6800本 人口減少社会におけるユニバーサルサービスの破綻懸念
インターネットの普及、メールやSNSの利用者増加により、郵便を利用する機会が減少し続けている昨今。日本郵便の郵便事業の営業損益は2022年度に211億円の赤字となった。この赤字は、民営化された2007年度以降初めてのことで、値上げをしないとこの赤字がどんどん増えていくという。
日本郵便は、2021年10月から普通郵便の土曜日の配達を取りやめるなど、業務の効率化を進めてきた。しかし、それでも郵便物が減少するなかで、事業を維持するには値上げを避けることができなかったと言えそうだ。
このご時世、致し方ない値上げではあるものの、世の人々からは、“ただでさえ配達が遅くなっているうえに値上げ”という状況を嘆く声も少なくない。今回の値上げで、すでに進行中の“郵便離れ”に拍車がかかりそうだ。
実際に、普通郵便の配達までの時間がかかるようになっていることを実感したのは、都内に住む会社員Aさん(40代男性)だ。
「私はあるアーティストのファンクラブに入っていて、いつもコンサートのチケットをそこで購入するんです。ある時、チケットを買ったはいいけど、用事ができて当日行けなくなったので、関東圏内に住んでいるファン仲間にチケットを譲ることになりました。
そこでチケットをコンサート当日の4日前に普通郵便で送ったんです。以前も同じようなことがあって、そのときは2日後には到着していたので大丈夫だろうと思っていたら、当日まで届かなかったんですよね。そんなに離れた場所に送ったわけでもないし、4日もあれば余裕で届くだろうと思っていたんですけど。どうにか当日の午前中に届いて友人はコンサートに行けましたが、焦りました」
配達にかかる時間に不満を持つAさんは、今後普通郵便を使うことについては消極的だという。
「料金の値上げは26円でそこまで大きいとは思いませんし、慣れの問題だと思いますが、普通郵便がどれぐらいで届くのか、その目安がわかりづらくなった印象はあります。今後チケットを送るようなケースがあれば、速達を利用しないといけないなと思った出来事でした」(Aさん)
都内に住む会社員Bさん(30代女性)は、「どうしてもその日に届けたかったら、宅配便を利用する」と自身の郵送事情を明かす。
「まず個人でも会社でも、もう自分で郵便を出すことはありませんね。以前は請求書や契約書は紙でというパターンがありましたが、コロナ禍を経て私の周りではすべてデジタル化。契約書もクラウド上で済ませるようになりました。
どうしても紙で何かを届けないといけない場合、最近の郵便は集荷も減っていて、相手にいつ着くかわからない。目安の日数もいまいち心配なので、どうしても日時指定をして届けたいものは宅配便を利用します。もちろん郵便に比べて料金はすごく高くなりますが、仕方ないのかなと思う部分もあります。今となっては、そもそも日本全国一律数十円で届けてくれていたのがすごいような気もしますし……」
今回の値上げを機に、年賀状を出すのをやめようと考えている人もいる。神奈川県に住む自営業Cさん(50代男性)はこう話す。
「世の中的には年賀状を出す人がかなり減っているようですが、私は自営業ということもあり、いまでも毎年100枚近くを出しています。仕事の取引先を中心に、親戚や学生時代の友人にも出しています。ただ、ここ5年くらいで私に届く年賀状は一気に減りました。年始の挨拶もメールで届くことがほとんどですし、そもそもお正月の挨拶の習慣自体もなくなりつつあります。
そう考えると、もはや紙の年賀状自体、相手にあまり歓迎されていないのではないかという気にもなっていたのは事実です。そこへ郵便料金の値上げですから、年賀状を出すモチベーションは下がりますね。本気で来年の年賀状は出すのをやめようかと検討しています。企業も含めて、値上げが年賀状廃止のきっかけとなるケースは多いのでは」
デジタル化が進み郵便物がどんどん減少していく一方で、燃料費や人件費は増えるばかり。赤字を克服するには業務の効率化や値上げは避けられないが、さらに利用者が減少する可能性が高いのが、現在の郵便事業の実情だ。単純に料金の問題だけでなく、郵便事業というユニバーサルサービスをいかにして維持していくかについても議論していく必要がありそうだ。(了)
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