( 178208 )  2024/06/07 01:47:54  
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2024年4月1日より、日本の高速道路における中型・大型トラックの最高速度が80km/hから90km/hに引き上げられた。

これは労働時間制限が厳しくなり、労働者の減少や物流の問題が懸念される「物流の“2024年問題”」に対処するための一環。

ただし、速度引き上げだけでは根本的な解決にはならず、物流の効率化や自動運転技術の活用が必要。

規制緩和の影響も限定的であるため、今後はさらなる改善や意識改革が必要とされている。

(要約)

( 178210 )  2024/06/07 01:47:54  
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 2024年4月1日より、高速道路における中型・大型トラックの最高速度が80km/hから90km/hへと引き上げられました。 

  

 この背景にあるのは、いわゆる「物流の“2024年問題”」です。 

 

【画像】「えっ…!」大型トラックの「謎の部屋」の中はどうなってる!? 画像で見る(25枚) 

 

日本の物流を支える大型トラックは「2024年問題」でどうなっていくのか[画像はイメージです] 

 

 2024年4月1日から働き方改革関連法が施行されることに伴い、トラックドライバーの労働時間に対してさらに厳しい制約が課されることになります。 

 

 トラックドライバーは、ほかの業態に比べて労働時間が長くなりやすい傾向があり、過剰労働に起因する痛ましい事故も発生していることから、こうした規制自体は必要不可欠なものです。 

 

 一方、トラックドライバーの労働時間短縮による現実的な問題として、物流量の減少による物流業者の売上減少およびトラックドライバーの収入減少、それにともなうトラックドライバー自体の減少が考えられます。 

 

 また一般のユーザーにとっては、物流の遅延や配送料の値上げなどといった影響が発生する可能性があります。 

 

 実際、政府の試算によれば、こうした物流の“2024年問題”に対策を行わなかった場合、2030年度の輸送能力は2019年度比で34.1%減少する可能性があることが指摘されています。 

 

 高速道路における大型トラックの最高速度引き上げは、物流の“2024年問題”に対する打ち手のひとつという側面が強いとされています。 

 

 たとえば、現行法ではトラックドライバーの1日の連続運転時間は最大4時間とされていますが、80km/hと90km/hで4時間走行した場合、それぞれの移動距離には40kmの差が生じます。 

 

 これはあくまで単純計算ではありますが、最高速度の引き上げは輸送能力の改善に貢献するものであることは事実です。 

 

 なお、労働時間制限についてはすべてのトラックドライバーに適用されますが、高速道路の最高速度の引き上げは総重量8トン以上の中型・大型トラックのみに適用されるものとなっています。 

 

 

 全日本トラック協会では、物流の“2024年問題”が一般ユーザー与える具体的な影響として「当日、翌日配達の宅配サービスが受けられないかもしれない」「水産品、青果物など新鮮なものが手に入らなくなるかもしれない」といった例を挙げています。 

 

 そうした事態を防ぐために、全日本トラック協会では一般ユーザーに対して「再配達を減らす配慮」や「まとめ買い(まとめ注文)による運送回数の削減」などの協力を求めています。 

 

我々の生活を支えてくれている物流の大型トラック[イメージ画像:AdobeStock] 

 

 もちろん、高速道路における中型・大型トラックの最高速度規制が緩和されることによって、こうした事態は即座に解消されるわけではないのも事実です。 

 

 むしろ、トラックドライバーに対する身体的負担の増加や、それにともなう事故の増加の可能性を指摘する声も少なくありません。 

 

 さらに、トラック事業者の多くが独自の最高速度規制を設けていることから、実態としては大きな変化はないという見方もあります。 

 

 物流の“2024年問題”は非常に複雑かつ困難な問題であるため、最高速度規制の緩和が与える影響も限定的であると言わざるを得ません。 

 

 言い方を変えれば、高速道路における中型・大型トラックの最高速度規制の緩和は現在の生活を劇的に改善させるものではなく、あくまで対症療法的なものにすぎないということです。 

 

 少子高齢化が今後も進むことを考えると、物流の“2024年問題”の根本的な解決を図るためには、DX(デジタル・トランスフォーメーション)による物流システム全体の効率化や、自動運転技術の活用による省人力化などが必須です。 

 

 もちろん、トラック事業者や荷主、一般ユーザーの意識改革が必要なことは言うまでもありません。 

 

 ただ、そうした取組みが奏功すれば物流の“2024年問題”もじょじょに解消していくと見られます。 

 

 今回の規制緩和は、物流を取り巻く問題を劇的に改善するものではありませんが、将来に向けた時間稼ぎという意味合いでは、一定の効果が得られるものと言えそうです。 

 

※ ※ ※ 

 

 乗用車においても、動力性能の向上に加え、衝突被害軽減ブレーキをはじめとする先進安全運転支援技術の進歩などの影響から、高速道路における最高速度規制は緩和傾向にあります。 

 

 一方、衝突時の衝撃は速度に比例して大きくなるのも事実で、特に重量がかさむ大型トラックの場合は顕著といえます。 

 

 最高速度の制限に関するメリットとデメリットのバランスについては、すべてのユーザーが検討していくべき大きな課題となっています。 

 

Peacock Blue K.K. 

 

 

 
 

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