( 178543 )  2024/06/08 01:32:59  
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日本のテーマパークや施設では大規模な投資が相次ぎ、新しいエリアがオープンしているが、それに伴いチケット代も値上げしている。

投資によって魅力を高め、顧客満足度を上げる戦略だが、値上げにより来場者からの支持を得られなければ、淘汰の可能性もあると指摘されている。

また、国内のテーマパークや水族館の値上げについてまとめられており、海外でも高額な料金が一般的であることが触れられている。

(要約)

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TDSでオープンした新エリア=千葉県浦安市(松井英幸撮影) 

 

テーマパークや水族館などのレジャー施設で大型投資が相次いでいる。東京ディズニーシー(TDS、千葉県)では6日に新エリアが開業。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)でも今年中に新エリアが完成する。ただ、これに合わせるようにチケット代の値上がりも増えている。投資によって魅力を高め顧客満足度を上げる戦略だが、来場者の支持を得られなければ客足が遠のく恐れもあり、専門家は「淘汰(とうた)が進む可能性もある」と指摘する。 

 

【グラフィックで見る】近年値上げした主なテーマパークや遊園地、水族館 

 

■足並みそろえるディズニーとUSJ 

 

6日に開業したTDSの新エリア「ファンタジースプリングス」は映画「アナと雪の女王」や「ピーター・パン」をテーマとし、総投資額は約3200億円。TDSとしては開園後で最大の拡張となり、総開発面積は東京ドーム約3個分の約14万平方メートルで、4つのアトラクションとホテルなどで構成される。 

 

新エリアは施設の魅力を高める投資といえるが、来場者からは「久しぶりに行くと値上がりに驚く」との声も聞かれる。昨年10月に1日入場券の最高価格が9400円から1万900円となり、初めて1万円を超えた。家族連れで行けば入園だけで数万円となり、食事や土産、遠方なら新幹線代なども上乗せされ「懐が痛い」と感じる消費者が多いだろう。 

 

ディスニーとしのぎを削るUSJも令和3年3月に過去最大の600億円超を投じて新エリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」を開業。今年中には約1・7倍に拡張して「ドンキーコング」がテーマの新エリアをオープンする。入場料も4月に最高価格が500円アップの1万900円となり、ディズニーと足並みをそろえている。 

 

■値上げに踏み切れない中小も 

 

東京商工リサーチによると、投資に加え水道光熱費や人件費などのコスト高もあり、国内107の主なレジャー施設の約6割の62施設が4年7月以降の1年間で値上げや価格改定を公表した。繁忙期と閑散期で価格を変えるダイナミックプライシング(変動価格制)も15施設が導入している。 

 

ハウステンボス(長崎県)は今年1月から1日券を400円値上げし7400円となった。「アトラクションや催しを増やしたため」とする。富士急ハイランド(山梨県)は入園無料だが、アトラクションが乗り放題の「フリーパス」の最高価格を千円値上げした。 

 

 

水族館では「海遊館」(大阪市)が大人2400円を最高3500円に。今年9月に豪州のサンゴ礁をリアルに再現した水槽を導入予定で、担当者は「値上げ分の一部は水槽リニューアルの投資に回る」と説明する。今月1日にオープンした「神戸須磨シーワールド」(神戸市)は西日本で唯一のシャチの展示が人気だが、入園料の最高価格は3700円で旧施設の3倍程度となった。 

 

新型コロナウイルス禍の収束や訪日客の急増で業界全体の集客は好転している。ただ、値上げが来場者の支持を得られなければ長期的には減少に転じる恐れもある。また人口の少ない地方などでは客数減を懸念し、値上げに踏み切れない中小の遊園地やテーマパークも少なくない。 

 

東京商工リサーチ関西支社情報部の新田善彦課長は「施設リニューアルなどの資金を捻出できず、集客力を上げられないまま淘汰(とうた)されることもあり得る」としている。 

 

■海外では1日3万円超え 

 

USJなどのようにテーマパークのチケット最高価格が1万円を超えたことで「高すぎる」との声も出るが、海外ではさらに高額となっている。現地の物価高に加え、円安の影響も大きい。 

 

米カリフォルニア州にあるディズニーランドの年間パスポート「マジック・キー・パス」は最高が1649ドル(約26万円)。1日券は繁忙期で194ドルで、日本円に換算すると約3万円と日本の3倍になる。日本以上に手の届かない〝夢の国〟だ。 

 

米国の現地メディアによると、米ウォルト・ディズニーは昨年10月に値上げを発表したが、消費者からは不満の声も出ているという。同社は世界のテーマパーク事業に今後10年間で600億ドル(約9兆3千億円)を投じる方針を示している。 

 

ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド(同州)の1日券は最高が154ドルで、USJの2倍超に相当する。除外日のない年間パスポートはオンライン購入で629ドル(約9万8千円)と、こちらもUSJ(4万8800円)の約2倍だ。 

 

 

水族館でも米国最大のジョージア水族館は1日券が70・77ドル(約1万1千円)で、日本のテーマパーク並みの価格となっている。 

 

米国のみならず、アジア諸国でも日本と同等、もしくは高額な施設が多い。中国の上海ディズニーリゾートも昨年に値上げしており、1日の最高価格は799元(約1万7千円)と日本を上回っている。 

 

■成否は納得感次第 立命館大の遠藤英樹教授 

 

東京ディズニーリゾート(TDR)やUSJの料金は上がっているが、海外でも値上げの波は同様だ。円安の影響もあり、米国のディズニーランドはTDRの約3倍となっている。 

 

TDRやUSJの大きな強みは、客が主体となって楽しめる自由度の高さだ。それぞれ海外の系列施設にはない独自のキャラクターもいる。海外では既存アトラクション以外の遊びの要素はほぼない。「ここにしかない体験価値」があるという意味でも、海外と比べて割安感がある。 

 

地方のテーマパークや遊園地、水族館でも値上げが相次いでいる。光熱費などのコスト高だけを理由とすれば客足は遠のく。施設の拡充やリニューアルと合わせて行い、利用客に納得感を覚えてもらえるかが値上げの成否を決める。 

 

水族館には海洋生物に熱中する〝マニア〟の客も多いが、ただ見て楽しむだけで集客し続けるのは難しい。国内の2大テーマパークのように、リピーターをつかむさまざまな遊び方を用意し、体験の価値を高め続けることが必要だ。 

 

 

 
 

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