( 178630 ) 2024/06/08 14:51:06 0 00 5月29日、共産党の大山とも子都議団長から花束を受け取る蓮舫参議院議員 Photo:SANKEI
東京都知事選に立候補する意向を表明した立憲民主党の蓮舫参院議員。「反自民政治、非小池都政」を掲げて小池氏への対決姿勢を強めている。一方で、蓮舫氏に対して批判的な意見を持つ人も多い。蓮舫氏の言い分は正しいのか。(イトモス研究所所長 小倉健一)
● 「攻撃してばっか」「もうウンザリ」 SNSでも蓮舫氏への批判は多い
「蓮舫さんがすごい攻撃的でシンプルに怖い。ニュースを見てても、公約みたいなのが具体的にわからない。攻撃してばっか」――こう語るのは、お笑いコンビ「三四郎」の小宮浩信氏だ。
『ワイドナショー』(6月2日、フジテレビ系)に出演した際、タレントの眞鍋かをり氏の「蓮舫さんが出てきたことによって、国政の構図がそのまま都知事選にも流れてきちゃっているような感覚になって。都民としては選挙に対してのテンションがあんまり上がらないというか。/自民党の裏金問題があって、野党が『ワ~』って言うけど、別に文句しか言ってないみたいなのが、もうウンザリって思っているところに、都知事選でもそうなるのか、みたいな。蓮舫さんがいることによって、その構図でやらなきゃいけないのかな」という発言を受けて、こう語っている。
検索すると、XなどのSNSでも同じように蓮舫氏の態度に対して批判的な意見を持つ人は多い。彼らのプロフィルを確認しても、特に右派だから蓮舫氏を批判しているようでもなさそうだ。
● 共産党とがっつり組んだ 蓮舫氏の狙い
都知事選で立候補を表明すると、真っ先に蓮舫氏が駆けつけたのが都議会の日本共産党の控室だ。共産党議員から万雷の拍手で迎えられた蓮舫氏、その模様を共産党機関紙「しんぶん赤旗」(5月30日)では、以下のように伝えている。
<『住みやすい東京 一緒につくろう 蓮舫氏、共産党都議団を訪問』 (写真)花束を受け取り、大山とも子・日本共産党都議団長と握手を交わす蓮舫参院議員=29日、都庁 東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)への立候補を表明した立憲民主党の蓮舫参院議員が29日、都議会の野党系各会派の控室を訪問しました。日本共産党の控室では大山とも子都議団長らが出迎えました。 蓮舫氏は「立候補を決めた。ぜひ一緒に、住みやすい、暮らしやすい、明るいあたたかな東京をつくらせていただきたい」とあいさつ。大山氏から花束を受け取ると、都議らから拍手と歓声が上がりました。>
こんな蓮舫氏の行動を、自民党中堅議員はこう分析してくれた。
「立憲民主党の手塚仁雄衆院議員によるものとされる情勢調査で、小池百合子氏に10ポイント差であったことから、出馬を決めたようです。4年前は、トリプルスコア(3倍差)でしたから、追い上げムードがあったのだと思います。次の衆院選狙いの『記念受験』とみる向きもありますが、だったら真剣に共産党と組もうとせず、自分だけを売り出しに行けば良かったはず。共産党とがっつり組むということは本気で都知事選に勝とうとしたのだと思います、最初の段階では……」
しかし、今、起きていることは、無党派層の離反だろう。東京都知事選挙は、当選者が一人の、小選挙区と同じ仕組みだ。右や左などの強い支持よりも、無党派層の取り込みに勝利した候補者が勝つ。
● 共産党の考える 「明るい東京」とは
東京15区の衆院選補欠選挙において大惨敗した、小池陣営の乙武洋匡氏が、街頭演説でほとんど毎回訴えていたLGBT関連の訴えなどは、その一例であろう。
人類学者エマニュエル・トッドが「男女に違いはないという考え方に疑問を抱く」(AERA、2023年6月22日)と述べたように、筆者も人類が性別を超えるのは不可能だと考えるが、それは別にして、乙武氏が小選挙区制度において、国民から批判の大きいLGBT関連の主張をメインに据えるのは選挙戦略として間違っていたということだ。
乙武氏は自分の主張をしたいだけで、そもそも勝つ気がなかったのかもしれないが、選挙で訴えるべきは世間の関心事項でなければならなかったはずだ。乙武氏を支援した都民ファーストの議員は筆者に「選対会議でも演説内容については変えた方がいいと提案があったようだが、乙武氏が受け入れなかった」と打ち明けてくれた。
何を主張しようと自由だが、選挙に勝つのはそれだけでは難しいということになろう。いずれにしろ共産党が考える経済政策という名の社会主義政策で、国が経済発展することは歴史上ない。共産党のいう「明るい東京」とは、教育費、給食費、バス乗車賃など、なんでも税金で補いつつ、病院は独立行政法人化を中止、羽田空港の新飛行ルートを撤回させる未来、まさしく世界中の社会主義政権が失敗してきたことを東京で実現しようとしているわけだ。
● 蓮舫氏の言い分にも一理ある 東京都のムダな支出
街頭演説(6月2日)では「批判ばかりしていると言われるが、批判ではなくファクトだ」と主張して、小池批判を続ける蓮舫氏だが、この批判の中には、確かにその通りだという部分もある。
蓮舫氏は「この20年間行政改革に力を入れてきた。全ては次世代のために。次の世代に負担のない未来を残したい。政官業の癒着、お金の使い方に間違いがあるのであれば、潤う人たちが違うのであれば、それを正す唯一の手段が行革だと確信している」(6月2日)と述べている。
この点については、まったくその通りだろう。東京都は財政的に潤沢で、次から次へと財源が湧いて出てくるために、真面目に行政改革などしなくても遊んでいられるわけだ。はっきり言って、ムダで訳のわからない支出が多すぎる。
最大のムダ遣いは、子育て支援だ。
これは、都知事選に立候補を表明している石丸伸二氏が給食費を無償化すると表明していることにもつながるのだが、子育て支援が少子化対策につながることはない。少子化は「晩婚化と未婚率の上昇」によって起きているものであり、いくら子育て支援をしても少子化は改善されることはない。
さらに、こうした事実への認識が広まり始めると「世代間格差の是正」などと、違う政策目的で話を必死ですり替えようとしてくるのだが、実態は高齢者が自分で受けているサービスの実費を払っていないだけなのだから、単純に高齢者が高齢という理由だけで受けている優遇を無くせばいいだけの話である。
それを実施すると票を失うから、無意味なことに補助金をバラマキ、結果、税金が増えてしまうデフレスパイラルが令和日本だ。
給食費でも、医療費でも、学費でもいいが、「無償化(=全額税金負担)」をすると、サービスの質が低下することは、明らかなファクトだ。給食費に関して言えば、税金で負担されることになると、給食業者は味や質のいい給食を作るモチベーションが減り、また利用者も「無料だから」と不満を言わなくなるということだ。
少なくとも「自分の子どもの昼メシ代ぐらい、自分たちで負担する(貧困層は別)」のは当然のことだと考えなくなってしまったら、日本の将来はおしまいだろう。
● 批判の多い都庁プロジェクトマッピング 経済効果絶大なら民営化すべき
また、税金のムダ遣いだと批判の多い「都庁プロジェクトマッピング」も、小池知事や都民ファ議員が主張するように、経済効果なるものが絶大にあるのだとすれば、税金で運用せずに、さっさと民営化するべきだろう。そんなにすごいものなら、民間業者がこぞって手を挙げるだろう。
こんなこと、誰にでも思いつくと思うが、そういった発想が小池氏や都民ファからまったく出てこなくなってしまっているのに、「東京大改革」などと、あたかも自分たちが改革派であるかのような偽装を行うのはまったくおかしい。
改革を忘れ「小池百合子」の知名度と蓮舫氏による敵失だけで、都知事選、都議選も平穏無事に乗り越えようというのなら、全員落ちてしまえばいいと思う。
小倉健一
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