( 178718 )  2024/06/08 16:38:10  
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東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」が6月6日に開業。

3つのエリアからなり、「アナと雪の女王」「塔の上のラプンツェル」「ピーター・パン」がテーマとなっている。

特に人気の「フローズンキングダム」ではアナとエルサに会えるアトラクションがあり、売上拡大が期待されている。

総投資額は3200億円で、ディズニーシー開業時に匹敵する規模。

来園者の高齢化への対策として、年パスの休止やチケット値上げが行われており、来園者層の変化に対応している。

(要約)

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ファンタジースプリングスでは「アナと雪の女王」のアナとエルサに会うこともできる(撮影:尾形文繁) 

 

 東京ディズニーシー(千葉県浦安市)でファン待望の新エリアが6月6日に開業した。それが「ファンタジースプリングス」だ。ディズニーのアニメ映画でお馴染みの「アナと雪の女王」「塔の上のラプンツェル」「ピーター・パン」をテーマとする3つのエリアからなる。 

 

【写真50枚】「ファンタジースプリングス」にはいたるところにキャラクターのロックワークが。「ラプンツェルのランタンフェスティバル」の様子など 

 

 ディズニーランドやディズニーシーの人気アトラクションは連日、待ち時間が1~2時間以上と満員の状態。そのため、既存エリアのみでは入園者の飛躍的な増加が望みにくい。運営会社のオリエンタルランドとしては、新しいエリアが開業することで、売り上げ拡大を狙うことができる。 

 

■目玉エリアはアナ雪「フローズンキングダム」 

 

 既存エリアを抜けたところにあるファンタジースプリングスの入り口。目に飛び込んでくるのは、ピーター・パン、アナとエルサ、ラプンツェルのロックワークと泉(英語でスプリング)だ。ピーター・パンのロックワークには妖精のティンカーベルが隠れている。 

 

【写真】「ファンタジースプリングス」にはキャラクターのロックワークがいたるところに。ほかにも、「ラプンツェルのランタンフェスティバル」「ピーターパンのネバーランドアドベンチャー」など(50枚) 

 

 入り口に近いエリアが「ラプンツェルの森」だ。アトラクションの「ラプンツェルのランタンフェスティバル」では、作中の印象的なシーンを楽しむことができる。ラプンツェルたちの頭上に無数のランタンが飛び交っており、その景色は圧巻だ。 

 

 ピーター・パンの世界が広がるエリア「ピーターパンのネバーランド」のアトラクションも迫力満点だ。 

 

 「ピーターパンのネバーランドアドベンチャー」では、ボートに乗り込みピーターパンやティンカーベルとともに、フック船長たちから仲間を救出するストーリーが体験できる。ジャングルのような待機列では、たまにティンカーベルが現れる。見ることができたらラッキーだ。 

 

 そしてファンタジースプリングスの中で目玉となるエリアは「フローズンキングダム」と言っていいだろう。 

 

 アナと雪の女王の映画のストーリーが幕を閉じた後の世界が表現され、映画に出てくるアレンデールの街並みを再現した一角やレストランが立ち並ぶ。ひときわ存在感を放つのが、レストランのアレンデール・ロイヤルバンケットだ。アナとエルサが住んでいるアレンデール城をイメージしている。 

 

 食事スペースには、エルサの戴冠式パーティーが行われた大広間がある。パープルを基調とした高い天井からは厳かな雰囲気を感じる。奥には玉座もあり、フォトスポットとなることは間違いなしだろう。 

 

 

 アトラクションの「アナとエルサのフローズンジャーニー」では、ボートに乗って「レット・イット・ゴー~ありのままで~」や「生まれてはじめて」などの楽曲とともに映画のストーリーを体感できる。 

 

 アトラクションを待っている人々が退屈しないで済むような工夫も凝らされている。アナとエルサの子ども部屋をイメージしたようなプレイルームや図書室が設けられており、アレンデール城の中にいるかのような雰囲気を楽しむことができる。 

 

■総投資額はディズニーシー開業時に匹敵 

 

 オリエンタルランドにとって、ファンタジースプリングスは待ちに待った開業だ。 

 

 アメリカのウォルト・ディズニー・カンパニーとファンタジースプリングスの開発に合意したのは2018年。当初、2022年度の開業を目指していたが、コロナ禍などの影響で延期を余儀なくされた。 

 

 総投資額は3200億円。拡張のための投資額としては過去最高となる。ディズニーシー開業時の総工費約3350億円に匹敵する規模となっている。 

 

 ファンタジースプリングス開業で見込んでいる効果は絶大だ。オリエンタルランドは年間売上高を750億円押し上げるとみている。 

 

 今年4月に発表した2024年度の業績予想は売上高6847億円(前年度比10.7%増)、営業利益1700億円(同2.8%増)。売り上げ、営業利益ともに過去最高を見込んでいる。 

 

 しかし、業績絶好調の裏で直面しているのが、来園者の高齢化だ。 

 

 同社が毎年発行しているファクトブックによれば、2018年度は来園者の50%が18~39歳だった。それが2023年度には41%へ減少。一方で40歳以上の来園者は21%から33%に上昇している。 

 

■高齢化を招いた年パス休止と値上げ 

 

 この原因は、年間パスポート(年パス)の休止とチケットの値上げにある。オリエンタルランドによれば、年パス利用客の多くが学生や若年層の会社員だった。 

 

 「ディズニーの混雑状況を考えれば値上げは妥当な戦略。値上げをすれば、可処分所得の多い高めの年齢層の来園者が増える。オリエンタルランドも想定していた変化ではないか」。そう競合の幹部らはみる。 

 

 コロナ禍を機に、オリエンタルランドは入園者数を絞る反面、体験価値を上げることで1人当たり単価を引き上げる「量より質」の戦略に舵を切っている。年パスの休止や値上げはそれに沿ったものといえるだろう。 

 

 ファンタジースプリングスの開業後もその方針は堅持する。 

 

 アプリで対象アトラクションのスタンバイパスや有料のディズニー・プレミアアクセスの取得などが同エリアの入場には必要となる。エリアへの入場人数を制限することで快適性を保つと同時に、有料チケットの販売によって1人当たり単価をさらに高めることができる。 

 

 ただ、若年層の来園者は将来のファミリー層。次の世代の顧客を生み出す可能性の高い顧客セグメントだ。意図的に作り出しているともいえる来園者の高齢化。価格戦略とうまく折り合いをつけていくことが重要だろう。 

 

星出 遼平 :東洋経済 記者 

 

 

 
 

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