( 180068 )  2024/06/12 17:02:48  
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日本銀行の金融政策決定会合が6月13日、14日に行われるが、多くの予想では利上げは見送られるとされている。

一部マーケットでは日銀が国債買い入れを終了するのではないかという予想もあり、これが景気に悪影響を及ぼす可能性も指摘されている。

日銀は円安対策として利上げや国債買い入れ終了が難しい状況にあり、アメリカの金融政策変更が円安に影響を与える可能性もあるとされている。

(要約)

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photo by gettyimages 

 

 日本銀行の金融政策決定会合は、6月13日、14日に行われる。ここで利上げによって現在、156~157円台の行き過ぎた円安を是正してほしいというのが国民の期待と言えるだろう。 

 

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 しかし、前編「岸田×植田では円安は止まらない…! 「次の日銀会合」でついに明らかになる「政府も日銀も打つ手なし」のヤバすぎる実態」でも説明してきたように、マーケットの大方の予想は、今回の決定会合は、利上げは見送られるというものだ。筆者も同感である。 

 

 ところが、もうひとつマーケットの一部では、日銀が「国債買い入れの終了」を行うのではないかという予想が台頭している。 

 

 5月13日に、日銀が市場への資金調節を行う定例オペレーションで長期国債の買い入れ額を減額したからだ。これを受け、長期金利(長期国債利回り)が上昇し、5月22日には1%を超え、5月30日には2011年7月以来、13年ぶりに1.1%を超えた。 

 

 日銀としては、利上げをしない代替策として行ったことだが、これが国債買い入れの終了を連想させたのだ。 

 

 しかし、これを拙速に行えば、景気に悪影響を及ぼすことになるだろう。つまり、株価の下落や住宅ローン金利上昇につながり、個人消費を過度に冷え込ませる可能性が高まってしまうのだ。 

 

 どんなことが起こるのか、以下に考えていこう。 

 

 国債買い入れの終了や大幅減額を行えば、間違いなく長期金利は大幅に上昇することになる。定例オペレーションでの長期国債買い入れ額の減額を実施した5月30日ですら、日経平均株価は前日比1000円近い下げとなった。 

 

 また、前述したように株価の下落や住宅ローン金利、企業への貸出金利が上昇する。庶民は住宅ローンを借り入れるとこれまでよりも返済額が増えるので住宅を買い控えるようになる。また、企業も資金調達に大きなコストがかかるので新たな投資に踏み切れなくなる。 

 

 加えて、長期国債利回りの上昇(価格の下落)は、日銀や銀行が保有する国債の含み損も拡大させる。 

 

 このように景気に悪影響を及ぼすことになるだろう。ただでさえ弱い個人消費や企業の設備投資を一段と冷え込ませることになるのだ。 

 

 よって、筆者は日銀が「国債買い入れの終了」を行うことはないと考えている。 

 

 

ジレンマを抱える日本銀行の植田和男総裁 Photo/gettyimages 

 

 しかし、一方でこうした状況は日銀に、円安是正のための「打つ手がない」ことを示してもいる。つまり、日銀は円安を抑えるための「利上げ」することも「国債買い入れの終了」することもできないのだ。 

 

 そもそも、日銀法で政策目標を「物価」としている。金融政策は、為替レートを直接コントロールの対象としていないのだ。このため、通貨防衛(円高誘導)のための金融政策(利上げ)を行えば、日銀法を大きく逸脱することになる。 

 

 また、日銀は利上げを実施した3月の金融政策決定会合で、先行きの見通しについて、「現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」と述べ、「長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に、買入れ額の増額等で対応する」と発表している。 

 

 日銀が長期金利の上昇を抑えるオペレーションを行えば、むしろ円安は加速してしまうのだ。 

 

 このように、日銀は法的な根拠でも、実際のオペレーションでも、大きなジレンマに陥っているのだ。 

 

 従って、日銀は、現在の環境では「利上げ」はもちろんのこと、量的緩和策の「国債買い入れ額の終了」や「大幅な減額」ができるような状況ではない。 

 

米金融当局のFRBパウエル議長。アメリカの政策判断が円安に影響する…Photo/gettyimages 

 

 ただし、金融政策決定会合で、利上げに関連する動きが出る可能性は残る。それは、アメリカの金融当局の政策が変更した場合だ。 

 

 日銀の金融政策決定会合が実施される13・14日の前、11・12日には米国の金融政策決定会合であるFOMC(米連邦公開市場委員会)が開かれる。これまで、米国は年内に0.25%の利下げを最低3回は実施するとの見通しを発表している。 

 

 しかし、米国のインフレ状況、景気が思ったよりも強いことで、いまだに利下げは一度も行われていない。 

 

 今回のFOMCで予想する利下げの回数や下げ幅が減少する見通しが出されれば、米国の長期金利の上昇を加速し、日米金利差の拡大から円安の加速を招く可能性がある。 

 

 この場合、日銀は国債買い入れ金利の大幅な減額など、円安進行阻止のための思い切った政策変更を行う可能性があることを指摘しておきたい。 

 

 さらに連載記事「岸田vs.植田の「大バトル」で日銀が惨敗…! 1ドル160円の超円安と超物価高でも「脱デフレ宣言」しない岸田の「ヤバすぎる思惑」」でも、いまの日銀の苦しい立場を解説しているので是非、参考としてほしい。 

 

鷲尾 香一(ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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