( 180513 )  2024/06/14 01:43:16  
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黒門市場は外国人観光客でにぎわっており、組合が作成する「黒門市場マップ」には組合員の店しか掲載されておらず、非組合員の店が数多く存在している。

外国人観光客向けに新規参入した店の増加や外国資本の飲食店による出店が目立ち、外国人客の増加に伴い、市場の様子も一変している。

しかし、これにより日本人客は足が遠のいており、コロナ禍で外国人観光客が消えた後も再び外国人客が戻ってきている。

店舗数の減少や外国資本の増加により新たな問題が生じており、黒門市場の今後には不透明な要素が多い。

(要約)

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外国人観光客でにぎわう黒門市場で何が起きているのか 

 

 インバウンド景気に沸く「なにわの台所」黒門市場。大阪・ミナミの繁華街(心斎橋・道頓堀・難波)に近い東西100メートル、南北400メートルにわたる商店街の中に7つの町会(北門会、末広会、長楽会、親栄会、日二会、黒門会、南黒門会)があり、鮮魚や野菜、精肉などの食料品を幅広く品揃えする店舗が170軒ほど集まっている。 

 

【写真】約170軒あるはずが、120軒しか掲載されていない「黒門市場マップ」 

 

 しかし、7つの町会でつくる黒門市場商店街振興組合が作成する「黒門市場マップ」には120軒しか掲載されていない。なぜこのような現象が起きるのか。黒門町で飲食店を40年間続ける組合員のひとり(飲食店店主)に聞いてみた。 

 

「外国人観光客を狙って新しく参入した店で、非組合員なんですわ。組合が作った『店舗マップ』には組合員の店しか載っていない。他の40~50軒は非組合員の店なんです。そういった店は組合費も払わないし、商店街のイベントにも参加しない。何かあれば一番に店を畳んで消えるパターンやろね」 

 

 高級料亭や割烹店の料理人が仕入れのために足を運び、地域住民が買い物に立ち寄っていた黒門市場だが、バブル崩壊やリーマンショックなどを経て、売り上げが激減。何度も危機を迎えている。そのたびに廃業する店が相次いでシャッター通りとなった。 

 

 そうしたなか、振興組合が中心となって外国人観光客を取り込むことで来場者の回復を図った。その戦略が見事に的中し、今では1日2万4000人ほどの外国人観光客が訪れるようになった。それに伴い、黒門市場の様子は一変した。店先で通路にはみ出すように椅子とテーブルを置いた店や、店内の狭いスペースにテーブルと椅子を置いてイートインスペースを作る店が登場し、外国人観光客が店頭で売っている商品を食べ歩くようになった。鮮魚店店主はこう言う。 

 

「インバウンドの恩恵を一番受けているのが、廃業した店のあとに入ってきた屋台風の飲食店。多くが外国資本の店で、見栄えがするようにデカいタラバガニや神戸ビーフの肉巻きを数千円で提供している。ホンマに神戸ビーフなのか、という話もあるけど、組合に入っていないと付き合いもないからね」 

 

 

 結果、「安くて新鮮なものがある」と言われた黒門市場のイメージとかけ離れ、日本人の客の足が遠のいていった。その後、コロナ禍で外国人観光客は消えたものの、アフターコロナの今は再び外国人観光客が戻ってきている。 

 

「コロナ禍の3年間で30~40軒の店が辞めたが、そこに中国資本が入ってきたんや。もちろん非組合員。賃貸で店を出しているケースがほとんどで、もとの店の持ち主が1棟貸しするから家賃は最低でも月50万円、高いと200万円と言われとるわな。それで商品の値段を高くせなあかんという理由もあるみたい。外国語が話せる店員も雇わなあかんしな」(前出・鮮魚店店主) 

 

 そうして「黒門市場マップ」に掲載されない店舗が増えているわけだが、新たな問題も出てきているという。 

 

「組合としても、『清潔な商店街にしたい』とゴミステーションを作り、清掃員を雇う。ゴミの処理だけでも年間300万円かかる。トイレも2000万円かけて2か所設置して、トイレットペーパーが月5万円、水道代も月5万円かかる。それを組合員だけが負担している。問題山積ですわ」(前出・飲食店店主) 

 

 とはいえ、黒門市場への新規参入を狙う業者は今も多いようだ。今年3月末に老舗の割烹店がビルを建て替えたいと休業の張り紙を出した途端、「売ってほしい」「貸してほしい」と数10社の不動産業者が殺到したという。 

 

「外国資本だけやなく、大手ドラッグストアも空き店舗がないか出店担当者が直接探しにきているぐらいや。あまり繁盛していない老舗の店舗に好条件で貸してほしいと持ち掛けとるそうや」(前出・飲食店店主) 

 

 黒門市場商店街振興組合に取材すると「インバウンドに関する記事の取材はすべてお断りしている」(事務局)と回答した。大阪万博に向けて「なにわの台所」はまだまだ姿を変えそうだ。 

 

撮影/杉原照夫 

 

 

 
 

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