( 180690 ) 2024/06/14 17:04:55 0 00 ミセスの大森元貴がMrs. GREEN APPLEのホームページに出したコメント(写真:Mrs. GREEN APPLEのHPより)
Mrs. GREEN APPLEの最新曲「コロンブス」のミュージックビデオを見て、私が最初に思ったことはこうだった。 「彼らがこのビデオについて議論しているとき、自分が制作室にいたら、彼らがいったい何を考えているのかわかったのに」だった。
【写真】Mrs. GREEN APPLEの3人
というのも、このビデオのイメージはいくつかの解釈が可能で、その中にはよくない解釈もあるからだ。このビデオがSNSで物議を醸したこと(その後、配信停止になったこと)は驚きではない。
■おバカでも、軽快でもない問題点
今回ミセスの曲は「Coke STUDIO」というコカ・コーラのキャンペーンに使われている。私自身はこの曲と彼らの歌声が好きだし、ビデオも表面的には、おかしみとカラフルなキャラクターがたくさん登場する軽快なお遊びのように見える。
だが、このビデオには、それほど軽快でもおバカでもないことを示唆する問題点もある。
3人の歴史上の人物に扮したバンドが南国のような島を訪れ、猿だらけの家でパーティーをしているところに遭遇する。ビデオの中で、バンドの3人のメンバーはコロンブス、ナポレオン、ベートーヴェンに扮している。
まず最初問題は「コロンブス」というキャラクターだ。
大森元貴演じるコロンブスは、アメリカ神話の中でこの国を発見したことで有名なイタリア人である。彼が発見した国には、すでに何百万ものさまざまな部族の先住民が住んでいた。彼らを発見すると、コロンブスとスペイン軍は不均衡な物々交換を行なったうえ、後に残虐行為を繰り返すようになる。
コロンブスはハイチ、ジャマイカ、キューバといったカリブ海の島々も「発見」したとされるが、こうした地域にすでにタイノ人が住んでいた。コロンブスらはこれらの国々も侵略し、人々を奴隷にし、さらにはヨーロッパ人の病気を蔓延させた。
類人猿はタイノ人やアメリカ大陸の先住民を表しているのだろうか? (大森はHPに寄せた謝罪で「類人猿が登場することに関しては、差別的な表現に見えてしまう恐れがあるという懸念を当初から感じておりましたが、類人猿を人に見立てたなどの意図は全く無く、ただただ年代の異なる生命がホームパーティーをするというイメージをしておりました」と書いている)。
■ナポレオンが出てくるのもマズい?
次に登場するナポレオン(演じているのは若井滉斗)は、フランス国王を打倒・処刑し、自らを支配者とした独裁者である。ナポレオンはアフリカ(スフィンクスの鼻を撃ち落としたと噂されるエジプト)にも侵攻し、フランスに対する反乱の際に彼の軍団から奪い取ったばかりの自由に対して、ハイチ人に特別な請求書を(外交的承認の見返りとして)手渡している。この借金の支払いには122年を要し、今日の歴史家でさえ、この借金が今日のハイチの貧困の原因であり、悪質であると非難している。
3人目は作曲家のルートヴィヒ・ベートーヴェン(藤澤涼架が扮している)。私の大好きな作曲家の1人だ。彼の交響曲第9番は史上最高の作品の1つだと私は思う。
ベートーヴェンは、歴史的に3人の中で最も議論の余地のない人物だが、ミュージックビデオの中では、類人猿の1匹にピアノを教えることで文明化を試み(ナポレオンから親指を立ててもらう)、もう1匹には人力車を引かせることで服従させる。
ナポレオンは彼らのピアノ演奏に勇気づけられたようで、類人猿に馬の乗り方を教えようとするが失敗。その後、類人猿たちは全員ナポレオンに敬礼し、明らかにナポレオンが自分たちを支配していることを認識している。
■日本で繰り返される問題
そういえば数年前、J-POPアイドルグループ「ももいろクローバーZ」が、フジテレビの「ミュージックフェア」に、ドゥーワップグループ「ラッツ&スター」と並んで出演することになったのを覚えているだろうか。顔を黒塗りにした「ブラックフェイス」で。
ラッツ&スターは何年も前からそうしていた。彼らは、それが黒人とブラック・ミュージックへのオマージュだと主張している。驚くべきことだが、それが彼らの言い分なのだ。
特に問題だったのは、ももクロのメンバーたちも黒塗りにしていたことだ。彼女たちはブラックミュージックにオマージュを捧げていたわけではない。大人のバカ騒ぎに巻き込まれた無邪気な10代の若者たちだった。
日本における黒塗りについて、SNSでは大きな反発があり、何千人もの日本人が署名した嘆願書まで出された。そこでフジテレビは知恵を絞り、その土曜日の夜に放送されたミュージックフェアでは、黒塗りは編集されていた。
ラッツ&スターやももいろクローバーZの関係者が少しでもググれば、あのような愚行は避けられたはずだ。日本語における黒塗りの不幸な歴史に関する情報さえあったのだから、黒塗りをする前に調べなかった言い訳にはならない。黒塗りは物議を醸すものであり、慎重に扱われるべきものである。
番組の制作スタッフや演者たちは、日本人だから責任を問われることはないと考えたのだろうか? 結局のところ、日本は太平洋に浮かぶ小さな均質な島であり、何世紀にもわたって世界から隔離されてきたのだから、日本人はあらかじめ無知であることを許されるべきなのだろうか?
■「白人化された歴史」を教えられている
私がこの話を持ち出したのは、ミセスとこのMVの制作者にも同じことが当てはまると思うからだ。コスプレが正しいかどうかを確認するだけでなく、それ以上のことをきちんと調べ、意見ができる専門家が必要だった。その人物はコロンブスがコカ・コーラを宣伝するMVの題材として理想的かどうか調査すべきだった。
ほんのわずかな調査をするだけで、少なくともコロンブスが先住民にひどい仕打ちをしたことは明らかになったはずだ。そして、コロンブスの非人間的な残虐行為に苦しんだ人々が、人間以下の存在(この場合は類人猿)であることをほのめかすことさえ、無神経にもほどがある。
日本はとんでもなく「白人バージョン」の歴史を教わっているからなのか、日本人には今回のMVはかわいい、無害なものに思えるのかもしれない。日本のメディアや学校はそろそろ、ヨーロッパの歴史を美化して伝えるのをやめたらどうだろうか。光り輝くものはすべて金ではないのだ。
バイエ・マクニール :作家
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