( 181643 )  2024/06/17 16:52:24  
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タクシードライバーが子育てをサポートする取り組みや子育て関連のサービスがある中、小さな子どもを持つ親がタクシーを利用する際のストレスや不安、ドライバー側の問題点、そして政府や自治体の支援に期待が寄せられていることが述べられている。

子育て支援の取り組みや福祉割引サービスが存在する一方で、より安心してタクシーを利用できる環境にするために、様々な側面からの支援が必要であるとの意見が示されている。

(要約)

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タクシー(画像:写真AC) 

 

 小さな子どもを持つ親にとって、雨のなか、子どもを保育園や幼稚園に送迎する日々の苦労は、まさに“地獄”のようである。意味をなさないレインコートを着て、前後に子どもを乗せて自転車をこぐその苦労は、見ているだけで胸が痛む。そんな嘆きが3月、話題になった。 

 

【画像】『月曜から夜ふかし』でおなじみ! これが40年前の足立区「竹ノ塚」です(計24枚) 

 

 女性アイドルグループ・SDN48の元メンバーで、実業家の光上せあらさんがブログで 

 

「国のお偉い方の皆さんタクシー券くだせぇ」 

「子育て世帯は子連れの時のみタクシー乗り放題にしてくれないかな」 

「もちろんいくらまでとか決めていいからさ」 

 

などと訴え、賛否両論を呼んだのである。 

 

 小さな子どもを連れた親が運転する自転車は、普通に走っているだけでも危険なのに、雨の日は目を疑うような恐ろしい暴走車になる。保育園や幼稚園に少しでも早く着くために、一時停止のところでもスピードを出して走り、信号も無視する人もいる。 

 

 筆者(二階堂運人、物流ライター)は現役のタクシードライバーだが、小さな子どもを乗せて運転しているときは特に注意している。車内では落ち着きなく動き回るため、転んだり物にぶつかったりすることもあるからだ。また、最近の親は 

 

・シートベルトを着用していない子ども 

・着用してもすぐに外してしまう子ども 

 

に叱ることも少ない。正直なところ、その危機意識の低さに、ほとほと困ってしまうこともある。 

 

子どもを載せた自転車(画像:写真AC) 

 

 保育園や幼稚園への送迎にタクシーを利用する人は、乗り場から近い場所に住んでいることが多く、基本的にもうからない“短距離”の利用客である。 

 

 その上、ベビーカーをトランクに積むと、ドライバーは全身ずぶぬれになることも珍しくない。こうしたことが積み重なり、タクシードライバーの機嫌を損ねてしまうこともある。 

 

 これらはドライバーの仕事として対応すべきことなので、それを不満に思うドライバーは筋違いなのだが、不機嫌なドライバーに遭遇した経験のある母親のなかには、トラウマになってしまい、子どもを送り迎えするのにタクシーを使うのをためらう人もいる。ちなみに、筆者が以前乗せた母親は、何度もお礼をいってチップを置いてからタクシーを降りていった。 

 

 雨の日だけでなく、タクシーを利用する多くの親にとって、このようなことはストレスの原因となる。 

 

「近距離だからといって断られたくない。 

「乗ってみないとドライバーの対応がわからない」 

 

こうした不安を解消しなければ、彼らがたとえタクシーを利用したくても障壁になってしまう。 

 

 

子ども商品券はタクシーでも使える。商品券によってはタクシーでも使えるものがある。世田谷区など一部の自治体では子育て支援の券を配布している(画像:トイカード、世田谷区) 

 

 タクシー業界でも子育て支援の制度がある。国土交通省のタクシー子育て支援の一環として、幼児や保護者、妊娠中の人でも安心して利用できるタクシーがある。 

 

 全国子育てタクシー協会では、子育てドライバーの育成を行っている。養成講座と保育実習、チャイルドシート設置研修を終了したドライバーがすでに活躍している。 

 

・幼児を連れた外出のサポート 

・保育園、学童保育、塾などへのドアtoドア送迎 

・保護者に代わる送迎 

・陣痛時のスムーズな送迎 

 

など、子どもの年齢に合わせたサービスを提供している。 

 

このように子育てに特化したドライバーがいることで、小さな子どもを持つ親も安心してタクシーを利用できる。 

 

もちろん、サービスは無料ではない。通常のタクシー料金にサービス料金が上乗せされる。このサービスを利用したいが、料金面でちゅうちょしている親もいる。 

 

 タクシーには、さまざまな福祉関連の割引サービスがある。障がい者手帳を提示すると10%割引になるほか、タクシー福祉券というものもある。また、各行政機関が発行している子育て利用券や商品券などもある。ただし、使えないものもあるので、利用する際はタクシー会社に確認する必要がある。 

 

タクシードライバーのイメージ(画像:写真AC) 

 

 たとえ前述のような「子育てタクシー」の制度ができたとしても、それが機能しなければ意味がない。そのようなドライバーはまだあまりにも少ない。親はいつでもどこでも乗せてもらえるわけではない。 

 

 いうまでもなく、タクシー会社は営利企業である。ドライバーにも何らかのメリットがなければ、ドライバーは乗せたくないだろう。基本的に、ドライバーは対価を得られない限り、特別なことはしたくないと考えている。 

 

 以前、車いすに乗った人を乗せないドライバーが問題になったことがあった。車いす手当のようなドライバーへの何らかのメリットがあれば、乗せないという行為は避けられたかもしれない。 

 

 ボランティア活動ではなく、仕事として取り組むべきだ。ただし、当事者が常に費用を負担しなければならないのでは意味がない。筆者は、政府や自治体が費用を負担し、ドライバーの積極的な参加を促すことを期待している。 

 

 ドライバーだけでなく、今後活躍が期待されるライドシェアサービスのドライバーも、福祉関連事業に積極的に参加してほしい。行政や自治体は、誰もが福祉に参加できるよう、もっと努力すべきだ。 

 

 光上さんのような小さな子どもを持つ親が「政府のお偉いさんたち、タクシーチケットをください」と考えるだけでなく、ドライバーたちも 

 

「手当くだせぇ」 

 

と思っているのだ。 

 

二階堂運人(物流ライター) 

 

 

 
 

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